テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
飛行機に揺られながら、窓の外を見た。
曇り空にみぞれ。雲が分厚く先が見えない。
そんなパッとしない天気が心地よかった。
オスロ→ロヴァニエミへの直行便。飛行機内の残り1時間、乗客は少なく変わらず快適になりそうだ。
静かな車内には誰かの小さな談笑と寝息だけが聞こえていた。
フィンランドではサンタクロース村と、オーロラを見に行く予定。
子供の頃私が____いいや、アメリカとカナダが憧れていた「サンタ」。
時刻表を見れば、6/30と表示されていた。丁度カナダの誕生日も近い。
GB「何か買っていきますか、」
会うのは億劫だが、それ以前に自分の子供に誕生プレゼント渡さないなんてことは私にはできない。
窓の外から目線を戻した。
ふと、考える。
カナダは何が好きなのだろうか。
そこでようやく、私がアメリカの___カナダの好きなものを何も知らないことに気付く。
小さい頃…、まだ一緒に居た頃私は二人に何か彼らの欲しいものを与えただろうか。
与えたとしても与えていないにしても覚えていない時点で最低だ。
私はなんて子供孝行ができない親なのだろう。そんなんだから親孝行もされないのだ。
考えれば考えるほど思考が沈んでいく。私はなんて酷いことをしたのだろう?
アメリカやカナダのことを考えて動いた日があっただろうか?彼らの好みを知ろうとしただろうか?
GB「……、早く何か見つけなきゃですね」
スマホを手に取り急いでカナダに連絡をする。
”今何か欲しいものとかありませんか?出張中なので買っていきますよ”
画面に吹き出しが表示される。
数秒経ってから既読がついた。
”んーなんだろ…?強いて言うなら新しいジャケットかな”
ジャケットですか。確かにカナダ寒いですもんね
”てかなんでそんなこと聞くの?てかほんとに出張行ってるの?”
……相変わらず勘が鋭い。
”なんでもありません。気まぐれですよ”
”へぇ”
そこで会話は途切れた。
ジャケット…フィンランドなら毛皮の上質なものが売っていそうだ。
色々なところを探してみよう。
そんなこんなで気付けば1時間が経過していた。
荷物を急いでまとめ、席をもとに戻して飛行機を降りる。
降りた瞬間____。
GB「うぅ……、さむっ…」
今日は曇り空だからか冷気が纏わりついてくる。
薄いスーツしか着ておらず、かつ寒がりな私には厳寒だ。
GB「はーっ、、、」
息を吐くと少しだけ白くなる。
大きな電子版の温度計は7℃を示している。
GB「6月末で7℃…、」
ヨーロッパ内では比較的寒いイギリスでも最低気温は14℃といったところ。
GB「…ッ」
予想していない寒さに体が驚いたのか、時間差で眩暈がした。
旅行鞄を隣に置いてベンチに座った。
触れたところの温度がスーツ越しに伝わる。
折角体調がよかったのに幸先が不安だ…。
GB「……でも、カナダの為に…」
私は愛されていなくとも愛する我が子のために無理するのが親の性というやつだ。
よろめきながらも鞄を持ってサンタクロース村へ歩き出す。
およそ8分で着くはずのその道に、20分もかかってしまった。
20分超えた先にある、温かい光景。
それは疲れも苦痛もすべてをも凌駕する温かい光景だった。
まさに北欧って感じのアンティークな家。サンタクロース郵便局なるものに美しい造形をした街灯。
ほのかな温かい光が村全体を包み込んでいた。
??「…あれ、イギリス」
落ち着いていて、透き通るような…なのに安定感のある声が聞こえた。
??「珍しいね、この国に来るなんて」
見上げると、白い睫毛に白い肌、透き通ってしまいそうな儚げな容姿の国と、対照的に明るそうで顔立ちが男優レベルで整っている朗らかな国がいた。
GB「フィンランドさんにスウェーデンさん…」
そう呟くと息が白くなった。
FI「そんな服装じゃ寒くない?」
SE「俺の着るか?そこまで寒くないし」
GB「い、いえ…申し訳ないですし……ほら、なんせサイズも合わないですよ」
170cmの私と、目の前の二人はどちらも180cm越え。
サイズが合うわけなかった。
SE「……ま、それもそうか」
FI「じゃあ後で買いに行こ。この辺良いお店あるんだ」
GB「…そうですね」
他人の物を借りるよりはまだ申し訳なくない。
SE「じゃ、またあとでな!」
優しい二人に手を振って、私は此方へ向き直る。
一枚村の写真を撮って、サンタクロース村に背を向けフィンランド、スウェーデンさんの元へ歩き出す。
今思い返せば、特にやりたいことも何もなくふらふら此処に来ているだけだった。
足取りは少しだけ軽くなっていた。
途中、ポストを見つけて手紙を二枚、投函した。
事前に飛行機でアメリカとカナダに向け書いておいたものだ。
アメリカには
”I’m truly sorry for everything that’s happened. I know there’s no way you could ever forgive me… and besides, you don’t have to. Also, I’ve been doing well lately, so please don’t worry about me. I’ll come see you again someday.”
とだけ書いた。
あまり好きではないが、ちゃんとアメリカ英語である。
カナダには
”Comment allez-vous ces derniers temps ? Pour ma part, je vais très bien.Il n’y a vraiment pas lieu de s’inquiéter.Continuez à entretenir de bonnes relations avec les États-Unis. Je vous soutiens.”
とだけ。
カナダの家は確かケベック州。住所に間違いもない。
遺書の一部を書くような気分だったのは書く必要もない。
無駄に心配をかける必要もないから、嘘を吐いてまで調子が良いように振舞っているのに。
大きめの封筒の中にはそれぞれに宛てた手紙と、アメリカにサファイアの、カナダにルビーのブレスレットを入れる。
蒼い目と赤い目の二人によく似合うだろうと思い買っておいたのだ。
丁度この旅行が終わる頃に届くだろう。
…これが私の、せめてもの子供孝行である。
何の贖罪にもなりはしないが、せめても、せめてもの。
その後、フィンランド、スウェーデンさんと合流しジャケットを買いに行った。
二人とも色々着せたり教えてくれたり、本当に親切だった。
カナダの誕生日まであと2時間をきった。
見つけた茶色の毛皮のジャケットをこっそりラッピングしてもらい、急いで空港へ向かう。
なんとか二人に私の分を買っていないことはバレなかったようだ。
空港で二人と別れ飛行機に乗り込んだころには、カナダの誕生日になっていた。
カナダまであと17時間。間に合うだろうか……。
(フランスsideはそのうちノベルで作ります)
にま

2,309
しゃけ
20
69
19
コメント
1件
くじらさん、第8話読みました…。イギリスの「愛していなくとも愛する我が子のために」っていう心情、すごく響きました。アメリカに英語で、カナダにフランス語で手紙を書き分ける細やかさと、遺書みたいだって気付いてる自己認識の切なさがたまらないです。フィンランドとスウェーデンの優しさが寒さの中で温かくて、ほっとしました。ブレスレットの色選びも、ちゃんと相手の瞳の色を想ってるのが伝わってきて…。続きが気になります!