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◻︎銀子?!
「朝、散歩に出る時はいなかったんだよね、ね?マル」
フローリングの上でゴロンと横になってくつろいでるマルに話しかけるも、片耳をピクリとしただけでそのまま寝ている。
「じゃあ、散歩から帰ってくるところを見計らって来たってことかな」
「なんのためにだろ?てか、誰?」
「性別はきっと女、決めつけられないけど。車のシートとハンドルと顔の位置、肩幅の狭さ、これきっと女。年代はどうなんだろ?」
写真を拡大しても、顔はわからない。
帽子とマスクで隠している。
言われてみれば肩幅は男みたいに広くない。
「ねぇ!冬美さん、ストーカーとかじゃない?」
「女の?」
「あ、そうか」
うーんと二人で考えてみる。
「ちょっと待って、まだいるかどうか見てくる!」
聡美は、一気に階段を駆け上がって一気に駆け降りてきた。
「いた!まだいるよ」
「えー、どうしよう?気持ち悪いな…」
あ!と手をうつ聡美、何か思いついたらしい。
「その帽子とサングラスを貸して!それからマルも」
「これ?」
マルの散歩の時、日焼け防止の帽子とサングラスをつけている。
「マルも?どうするの?」
「私が冬美ちゃんのふりをして冬美ちゃんの家に帰るから。マルを連れて行けば、疑わないと思うし」
「さっき通り過ぎたけど?」
「そんなことは関係ないよ、もう一周散歩したんだなくらいにしか思わないって」
「でも、もしも聡美ちゃんに何かしてきたら?」
「へたに手を出してはこないよ、マルがいるし。それに私、昔、合気道やってたって言わなかった?」
立ち上がってポーズをとる。
「聞いたことある!」
「だからね、任せて。それで私が冬美ちゃんの家に入るまでと入ってから、あの車と銀子ちゃんの様子をベランダから観察してて」
「ちょっちょっ!銀子ちゃんて誰?」
「あの車の運転手。車がシルバーだから。名前があったほうが話しやすいからね」
ふふん、と得意げな顔を見せる聡美。
なんだか楽しそうだ。
「聡美ちゃん、サスペンスドラマ好きだもんね」
「そ。で、万が一、銀子ちゃんが何かしてきそうになったら、警察に電話ね」
「大丈夫かな?」
「見た感じ小柄だし、大丈夫でしょ。理由はわからないけど冬美ちゃんちを見張ってるとしたら、わざと入れ替わっとこ」
そう言うと、私の黒いツバ広の帽子を被りサングラスをしてマルのリードを持った。
「さぁ、マル、おうちに帰るわよ。しっかりボディガードしてね」
起き上がったマルは何度か私と聡美の顔を見比べた。
「マル、あとで行くから聡美ちゃんと先に帰っててね」
「んわんっ!」
わかってくれたようだ。
「じゃ、私行くから冬美ちゃん二階に行って。あ、おうちの鍵を貸して!」
鍵とエチケットバッグを預けて、私は二階に上がった。
そっとベランダに出てスマホを最大限にズームし、構える。
ぐるっとまわって、マルと私の家に向かう聡美が見えた。
録画ボタンをタップした。
スマホをできるだけズームして、車の運転席へ向け、録画ボタンをタップした。
マルと聡美は、ぐるっとまわって我が家の門を開けて入るところだ。
銀子が何かしてこないか、緊張する。
聡美とマルは、玄関から中へ入って行った。
銀子は…?
腕を上げて玄関を見ている、あ、スマホを玄関に向けているのがわかった。
その時、玄関から聡美が出てきて、郵便受けを覗いているのが見えた。
帽子もサングラスもなく、顔が全部見えている。
銀子は、ずっと聡美を撮影しているようだ。
聡美は、郵便受けに何もないことを確認したあとは、玄関脇に置いてある鉢植えを動かしたり、雑草をぬいたりしてまた、玄関へ入って行った。
銀子はというと…。
シートベルトをしめ、エンジンをかけたようだ。
そして、マスクを外したのが見えた。
でも顔はよくわからない、せめてもの、ということでナンバーはしっかり写した。
車は静かに走り出した。
何をしたかったんだろう?
ぴろろろん🎶
聡美からの着信だ。
『もういなくなったみたいだね』
「うん、今車が出て行ったよ」
『どんな感じだった?』
「聡美ちゃんの様子をずっとスマホで撮影してたように見えた」
『…ということは、冬美さんを探ってたってことだよね?』
「そういうことになるか。ね、わざと顔を出したの?」
『そうだよ、私の顔をしっかり見せておこうと思って。つまり、私が[坂下冬美です]って思い込ませておきたかったんだよね』
作戦成功かな?なんて言ってるけど。
「なんなのかな?」
『興信所にしては下手くそな調査だしね。女なのは間違いない…ね、もしかして、ご主人の??』
「うちの?まさか!」
『だって他に考えられないじゃん?何か思いあたることない?冬美さん』
思い当たることと言われたら、最近夫の様子がおかしいということか。
でもそれは気のせいかもしれないし、勘違いでことを荒立てたら後始末が大変なことになりそうな予感がする。
確実な証拠をつかむまでは、秘密にしておこう。
「いまのとこ、ないけど…気をつけとく」
『その方がいいね。まぁ、私を冬美さんだと勘違いしたなら、何かあるとしたら私に対してかもしれないし』
「危ないことないかな?」
『なんかあったら、返り討ちにしてくれるわっ!楽しみぃー♪』
聡美をトラブルに巻き込んでしまったかもしれないことを、少し後悔した。
聡美は楽しんでるけど。