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樹利亜が目を覚ますと、かまどに火が付いていた。
かまどの前には銀色の毛をもつ妖狐がいる。
「蔵馬、帰っていたの?」
「まあな」
蔵馬は戸棚からカップを二つ取り出し、温めていたミルクを注いだ。
「飲むか?」
「うん、飲む」
こうして2匹が向き合ったのは1カ月ぶり。樹利亜はいつもこの家で一人で過ごし、蔵馬は大抵は遠い場所で仕事をしている。
樹利亜はミルクが入ったカップを受け取った。ミルクは魔界の香草が入っていて甘い香りがする。
「いいにおい・・・」
ミルクを飲みながら、生まれる前のことがふとよぎる。お母さんはどうしたんだろう?そのほかの兄妹たちはどうしたんだろう?
温かかったお母さんや、みんなで遊んだ楽しかった思い出。
何時からなのか分からないが、樹利亜と蔵馬だけが妖狐に変化した。そして今、2人は一緒に暮らしている。
「ねぇ、向こうの河の一部から温泉が湧いているの。一緒に入ってこない?いっぱい歩いてきたから汗かいているでしょう?」
「食事をしたらいこう」
「うん!」
樹利亜は小麦粉の袋を取り出した。
一方で蔵馬は疲れたのか、ベットにごろりと横になった。暫くするとパンの焼ける香ばしい臭いが漂ってきた。