テラーノベル
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例年より大分遅く梅雨に入り始めた6月の下旬頃。
土砂降りの外を眺める僕の心は空と比例する様に暗くなっていった。
雨に打たれる紫陽花。
びしょ濡れなのに、どこか華麗で人を引き寄せる力がある。
そんな風に僕もなれたなら、振り向いてもらえるのかな。
そんな淡い期待は早い内に消し去った方が自分の為。
そんな事は分かっているけど。
捨てられない。
少しだけでも希望を持っていれば叶う。そう信じてる。
「大森さ〜ん?」
そこで僕は我に返った。
窓を見つめながら考え事をしていたが、思いの外没頭していた様だ。
元貴「あぁ、ごめんなさい」
元貴「考え事してて…」
若井「大丈夫!」
若井「それより、次体育だから」
若井「そろそろ行かないと遅れちゃうよ?」
そうだった。すっかり忘れていた。
元貴「あ、ありがとうございます…」
若井「んじゃ、遅れないようにね〜」
若井さんは小走りで教室を出て行った。
若井さん、親切な人だ。
僕が高校2年の冬休み明けに転校して来た時も、1番に話し掛けてくれたのは若井さんだ。
それ以降も僕が1人で居ると話し掛けてくれる。
僕は若井さんのそんな所に惹かれていったんだ。
元貴「って…行かなきゃ…!!」
時計を見ると3限目開始のチャイムが鳴る2分前。
必死で体育館まで走る。
僕はチャイムと同時に体育館に滑り込んだ。
「だから言ったのに!」
そう言わんばかりに若井さんは口をパクパクさせながらはにかんでいる。
先生「今日はサッカーをするぞー」
元貴「えぇ…」
嘘だろ…。
サッカーだなんて。
みんなは喜んでいるけど、僕にとっては苦痛でしか無い。
元貴「…」
若井さんも、喜んでいる人達の1人か。
元貴「あ」
そういえばサッカー部なんだっけ。若井さんって。
だからなのかな。女子にも男子にも大人気。
元貴「はぁ…」
とてもじゃないけど、僕なんかには釣り合わない。
何もかもが完璧な人。
結局僕は、足が痛いと言って体育を休んだ。
走って体育館まで来たことを指摘された時は心臓の鼓動が速度を上げたが、来る途中で捻挫したと言えばすんなり信じてくれた。
意外と単純なんだな、大人も。
罪悪感は残るが、チームを組んだ人達に迷惑を掛けるよりはよっぽど善行だろう。
体育館の隅で体育座りをしながら目は若井さんを追っている。
元貴「流石サッカー部…」
僕の様な凡人には多分一生掛かってもあんなプレーは出来ないだろうな…。
それに、汗だくになりながら走る姿、髪をかき上げる姿、全てが魅力的だ。
若井「パス!パス!」
あれ。今目が合った…?
その真偽を考える間もなく頭に強い衝撃が走った。
視界が揺らぐ。
若井「大丈夫!?」
大丈夫…?何が。
若井「ごめんね、大丈夫??」
何で心配されてるの…俺。
若井「ごめん、一旦タイム!!」
若井さんに頭を擦られる。
若井「ごめん、よそ見しちゃってた…」
元貴「あぁ…」
そこで僕はようやく理解した。
若井さんが蹴ったボールが僕の頭に直撃した。
だからか、少し頭が痛いと思っていたんだ。
でも、なんでだろ。
威力の割に痛くない…。
ボールの空気が少なかったのかな。
元貴「すごい…威力だね…笑」
頭は痛いけど、若井さんにこんなに心配してもらえて少しだけ喜んでいる自分が居るせいでよく分かんなくなってくる。
若井「何笑ってんだよ!!」
若井「保健室…連れ添うから!」
元貴「大丈夫だよ…!そこまで心配しなくて…!」
若井「何言ってんの!」
若井「良いから、早く来て!」
元貴「え…あぁ…うん…」
走る若井さんに腕を引っ張られ、足がもつれそうになりながらも必死で若井さんに着いて行く。
若井「先生!大森さん保健室まで連れていきます…!」
先生「分かった。気を付けてな」
先生の言葉に返事もせず若井さんは保健室に向かって走っている。
元貴「ちょ、速いよっ…はぁ…はぁ…」
若井「ご、ごめん…」
なぜだか分からないけど、若井さんが涙声な気がする…。
元貴「何で泣いてるの…?」
若井「泣いてないっ…!」
元貴「あぁ…ごめん…」
僕が謝ると、若井さんは足を止めて下を向いてしまった。
若井さんの上靴には涙のシミが付いて行く。
若井「大森さんは…何も悪くないよ…」
若井「悪いの…グスッ全部俺だもん」
若井「謝るのは俺だよね…グスン」
若井「ごめん…ズビッ」
泣きながらそんな事言われちゃったらこっちまで悲しくなってきちゃうじゃん…。
元貴「気にしないで…そこまで痛くないから」
若井「でも、元貴に当てちゃったのは俺だから…グスッ」
元貴「そうだけどさ…僕気にしてないから…!」
元貴「大丈夫だよ…!」
若井「本当ごめん…」
元貴「大丈夫だよ…!?」
今度は僕が若井さんの腕を引っ張りながら歩いた。
若井さんは鼻をすすりながら僕の一歩後ろを着いて来た。
傍から見ると若井さんが怪我人みたいだ。
元貴「ほら、保健室…着いたよ…?」
初投稿…!!
これからよろしくお願いしますっ!(ノ゚0゚)ノ
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Luna🍏☃️🍼
RanJam