教室にいるのが嫌いだ。
家に居るのが退屈だ。
毎日憂鬱な気分になる。
でも
必ず朝はやってくる。
その度に俺は消えたいと思ってしまうのだ。
扉を開けようとして辞める。
今日は頑張って教室に入ろうとしたが駄目だった。
また しれないから。
それが怖い。
俺は成る可く足音を立てないようにその場を去った。
少しずつ息が荒くなる。
怖くて怖くて仕方がない。
俺はどうして学校に居るんだろう。
俺はこれからどうすれば良いんだろう?
俺が一番安心出来る場所。そこの教室の前に立って扉を開ける。
「榛原先生」
「あら、爽斗くん?…! 」
椅子に座って本を読んでいた榛原先生が息が荒くなっている俺に気付くと慌てて近づいて来る。
「大丈夫?教室入るの怖くなっちゃった…?」
「すみませ…」口を抑えて座り込む。榛原先生は優しく俺の背中を摩ってくれた。
「大丈夫よ大丈夫、無理して教室に入ろうとしなくて良いのよ。貴方のペースに合わせなさい」
「っ…ぅ…う」
弱い自分が嫌いだ。
もっと強く居たいのに。
どうしても無理だった。
「ソファに座りましょ?立てる?」
「は、い…」
震える手足で立ち上がり、先生の肩を貸してもらった儘移動してソファに座る。
「榛原先生、ごめんなさい」
「どうして謝るの?良いのよ貴方は何も悪くないの」
そう言って榛原先生は優しく微笑んだ。
「呼吸が落ち着いたらゆっくり飲んでね」
そう言ってテーブルの上に置かれたお茶の入ったグラスを見る。
呼吸が落ち着いて榛原先生に感謝を伝えると、良かったと安心していた。
昼休み
学習室で授業を受けて相談室に戻る途中、使われていない音楽室からピアノの音が聞こえた。少し気になったので榛原先生に聞いてみる。
「あぁ、奏叶くんね」
「…?奏叶って確か空夜?不登校だって」
ピアノを弾いてるのが彼だとしたら相談室登校なのだろう。見た事もないし、どんな性格かも知らないので成る可く会うのは控えたい。
と思ったのだが…
「奏叶くんね、ずっと誰かにピアノを聞いて欲しいって言ってたのよ。でも、辞めちゃった」
榛原先生は、彼が2ヶ月程ピアノを弾かなくなった事を酷く悲しんでいたらしい。
「どうしても弾いて欲しい!また貴方のピアノを聞きたいって言ったの。そしたらねまた弾いてくれたのよ。嫌々だけどね」
音楽室がある方を見ながら悲しそうに微笑んだ。
けれど、すぐ普通の笑顔に戻り。
「ねぇねぇ!爽斗くん!」と元気よく言った。
「…ん?」突然話しかけられたので驚きつつも榛原先生と目を合わせる。
「奏叶くんのピアノ!是非聞いて欲しいの!」
「………ぇ?ぃや…急に何言って…」
「きっと喜ぶと思うのよ!」
そういうと榛原先生は目を輝かせて俺の方を見てくる。なんだか行かなきゃ行けない雰囲気で戸惑う。
「ちょっと…流石に…よく知らない人だし、しかも向こうも急に来られても困るんじゃ…」
顔の前で勢いよく両手を振ると
「大丈夫!!爽斗君の話は何回かした事あるから!」と榛原先生は俺の手を掴んで満面の笑みで言う。
「えぇ…」
結局行くことになった。