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第40章 「南商会の影を追え」
密談
俺たちは神殿の話を一旦脇に置き、先に手を打つことにした。
狙われる側である以上、敵の牙を折らねば安心できない。
「南商会の幹部を捕らえられれば、誰が背後にいるか分かるはずだ」
そう告げると、ミリアが即座に頷く。
「なら、動きやすい夜がいい。商会の倉庫街に戻る」
ルーラは少し不安そうに俺の袖を掴んだ。
「……大丈夫? また危ない目にあったら……」
「今度は仕掛ける側だ。安心しろ」
夜の潜入
深夜の倉庫街。
昼間は荷馬車や商人で賑わうが、今は静寂に包まれていた。
ただ、所々に巡回する私兵の姿が見える。
俺たちは影に潜み、標的を探した。
狙うは幹部の一人――“紅蛇”のアドル。
商会の金庫管理を任されている男で、裏取引にも関わっていると噂される。
「……いた」
ミリアが囁く。
豪奢な外套を羽織った中年男が、護衛を連れて倉庫に入っていく。
罠と奇襲
倉庫の奥で、アドルは部下たちに指示を飛ばしていた。
「明日の競売には“銀眼”の情報を流せ。買い手が増えれば、値も吊り上がる」
その言葉に、ルーラが小さく息を呑む。
俺は頷き合図を送り、突入した。
「動くな!」
剣を抜き放ち、俺とミリアが飛び込む。
護衛が慌てて武器を構えるが、こちらは奇襲。
ミリアが華麗に二人を斬り伏せ、俺はアドルの腕を捻り上げた。
呻き声を上げる幹部。
「くっ……お前ら、どこの差し金だ!」
「答えるのはお前だ。背後にいるのは誰だ?」
幹部の吐露
アドルは抵抗を試みたが、ルーラが一歩前に出た。
銀の瞳が月光に照らされ、冷たい光を放つ。
「……嘘をつけば分かる」
その声音は、彼女自身も驚くほど強かった。
アドルは息を呑み、顔を青ざめさせた。
「わ、分かった! 俺たちの裏にいるのは……“神殿評議会”の一部だ! 奴らが巫女を奪えと命じたんだ!」
その名が出た瞬間、空気が張り詰める。
やはり神殿内部と繋がっていた――セルディンの言葉は真実だったのだ。
邪魔者
しかし、その時。
倉庫の屋根が崩れ落ち、黒衣の刺客が数人飛び降りてきた。
「幹部ごと消せ、痕跡を残すな!」
声と同時に刃が閃く。
俺とミリアが迎撃に回り、ルーラは後方へ。
火花が散り、木箱が弾け飛ぶ。
激戦の中、俺はアドルの腕を掴んだまま叫ぶ。
「こいつは渡さない! 全部吐かせるまではな!」
決着
ミリアが矢の雨を弾き飛ばし、俺は一人を斬り伏せる。
刺客たちは形勢不利と見るや、煙玉を投げて退いた。
残されたのは怯えるアドルだけ。
俺たちは彼を縛り上げ、口を塞いだ。
「これで証人は確保した。神殿の闇を暴けるかもしれない」
俺は深く息を吐いた。
ルーラはまだ震えていたが、しっかりと頷いた。
「……なら、私も聞きたい。私が何者なのか、はっきりと」
次への布石
俺たちは捕えたアドルを連れ、街を離れた。
神殿へ直接引き渡すか、それとも別の場所で情報を搾り取るか。
選択はまだ決まっていない。
だが少なくとも――
“敵は神殿評議会の一派”という確かな手掛かりを手に入れた。
その夜、遠くでまた鐘の音が響いた。
次なる嵐が迫っていることを告げるように。