ピピピピ…アラームの音に目が覚めると、目の前に頬杖ついて🌼を見てる蛍と目があった。
🌼)もう!!いつも勝手に入ってきたらダメって言ってるじゃん!
蛍)だって、よだれ垂らして寝てるからww
布団でバサっと顔を隠す🌼。布団越しに蛍の笑い声がする。これが高校入学してからの私たちの日常だ。
高校からはお互いの進路を選択し、離れてしまった。
蛍は兄の母校の烏野高校へ。🌼は白鳥沢高校へと入学した。蛍は🌼が別の高校に行くことが決まり、不満気だった。それでも、毎日最寄りのバス停まで一緒に行き、🌼を見送ることが日課だった。
バスに乗り、窓越しに蛍に手を振ってると、
友達)🌼の彼、カッコいいよね。
いいなぁ、リア充w
🌼)でしょ〜(^_^*)あげないよw
友達)でも彼、烏野でしょ?気をつけた方がいいよ。年下キラーの先輩がいるって噂あるから。
🌼)蛍は大丈夫だよw
そう言って自分に思い込ませてる🌼。不安がないわけではなかった。
蛍はバス停で自分に手を振る🌼に片手を上げていた。
山口)ツッキー。彼女と近い男を威嚇するのやめなよw
蛍)はぁ…。烏野にすればよかったのに…
蛍はいつも🌼に気づかれないように、🌼を見てる男を鋭い目つきで牽制していた。
そんなある日の朝、登校中に
🌼)蛍、私バレー部のマネージャーする事になったの。
蛍)は?なんで?
🌼)友達から誘われて。困ってるみたいだから断れなくて。
蛍)無理。やめなよ。
敵チームになっちゃうじゃん。
🌼)だって…
蛍)そんなに他の男の世話したいんだ。
勝手にすれば?
🌼)そんな言い方しなくてもいいじゃない!
もういいよ!
🌼はそのまま走ってバスに乗りこみ、蛍が見えない席にドサっと座った。蛍もバスが出発する前に学校へと立ち去った。
その日の夜、お互いモヤモヤしたまま一言も話さなかった。
次の日の朝、蛍は来ないだろうと思いながらため息をつく🌼。一人で行こうと少し早めに支度して、玄関を開けるとそこにはムスっとした顔の蛍が立っていた。
🌼)お、おはよう。
蛍は驚く🌼の腕を持ち、玄関の中に押し戻した。ドアが閉まった瞬間、🌼はそのまま背中から抱き竦められた。
蛍)絶対、俺以外の男に必要以上に触らないで。
触らせないで。喋らないで。番号教えないで。
可愛い顔見せないで。約束して?
🌼は抱きしめられている蛍の腕に手を添えて、頬を擦り寄せる。
🌼)可愛い顔は自分じゃ、わかんないよw
でもわかった。約束する。蛍が不安になる事はしないよ。蛍以外好きにならないから…蛍、大好きだよ。
蛍)昨日はごめん…言い過ぎた。🌼、好き。
そう言うと、蛍は自分の眼鏡を片手で取り、🌼の前にひらひらっと見せた。眼鏡が🌼の顔に当たらないように外す、これが蛍のキスのおねだりの合図。
緩められた腕の中で向きを変えると、顎を掬い取られゆっくりとキスが降ってきた。
🌼)うふふふ。仲直りだね?蛍も浮気しないでよw
蛍)するわけないし。ありえない。
それから、徐々にお互いバレー部で忙しくなっていった夏休み。蛍は東京や埼玉に合宿。🌼も白鳥沢バレー部の合宿だった。毎日会えないけど、🌼は電話やメールは欠かさなかった。
🌼)こんなに会えないのは初めてだな…寂しいもんだね
ドリンクを作りに来て、蛍からの素っ気ないメールを見てため息をつく🌼。その時、後ろから突然△△が話しかけてくる。執拗に迫ってくる二年生の△△先輩を🌼も警戒していた。
△△)🌼ちゃん、どうしたの?元気ないねぇ〜?彼氏と喧嘩?もう俺にすれば良いのに〜
🌼)大丈夫ですよー、ちょっと暑くてボーッとしただけです。
△△)あ、ちょっと待って!髪にゴミついてるよ?
そう言うと△△は🌼の頭に手を置いて顔を近づけた。🌼は咄嗟に手で自分の口を塞いだ。
その時二人の後ろから声がして
牛島)何をしてるんだ。サボる暇はない筈だが。
△△はギョッとして🌼から離れる。その場から逃げるようにして練習に戻っていった。
🌼)牛島先輩、あ、あの。すみませんでした。
牛島)ん?お前が謝らなくていい。すまない、俺の力不足だ。△△は浮ついたところがあるから、困った事があればいつでも相談してくれ。
🌼)はい!ありがとうございます!
耳障りな蝉の鳴き声が響き、ぬるい風が纏わりついた。
同じ頃、烏野高校では…
山口)ツッキー、元気ないね?どうした?
蛍)はぁ…なんでもない。
(🌼不足なんてダサくて言えない)
山口)🌼ちゃん合宿で、会えてないもんね。
蛍)別に…
山口)白鳥沢のバレー部の2年の△△って先輩、あんまりいい噂がないから気をつけた方がいいよ。
蛍も気付いていた。ちょっと前から、🌼のSNSにアップされた白鳥沢バレー部の写真で、いつも🌼隣にいる男がいたからだ。それを見てからモヤモヤしていたが、素直になれないために、🌼へのメールの返信も素っ気なく返してしまうのだった。山口の話を聞いて更に眉間に皺がよった。
モブ子)あ、いたいた。蛍くーん❤️
モブ子は二年生の先輩。蛍とは委員会が一緒になってからよく話しかけてくるが、距離感が近いので蛍は苦手だった。
モブ子)あのね、ちょっといい?この前、バス停で蛍くんが彼女といるの見かけたんだけど、白鳥沢だよね?彼女。もしかして、バレー部のマネージャーじゃないかな?
蛍)はい。そうですけど。
モブ子)友達が白鳥沢のバレー部にいるから、SNSで最近よく見かけてたからさ、すぐわかったよ。彼女、可愛いねぇ。
蛍)はぁ、そうですか。じゃ、そろそろ練習戻るんで。
モブ子)あ、ちょっと待って!
蛍)あの、練習戻りたいんですけど。
モブ子)ごめんね。ちょっとだけだから!あのね、蛍くんに見せるか悩んだんだけど、やっぱりほっとけなくて…
モブ子が携帯の画面を蛍たちに見せた。それは、🌼と△△がキスしているような写真だった。
蛍)は?なんすか、これ。
モブ子)あのね、最近バレー部の二年生と彼女ちゃん仲が良いみたいで、たまたま通りかかった友達が撮ってたみたいなんだけど…
山口)ツ、ツッキー、何かの間違いだよ。そう見えるだけ
蛍は話の途中だったが無言のまま体育館へと戻っていった。蛍は持っていたペットボトルをグシャっと潰して、ゴミ箱に叩き入れた。蛍は胃を掴まれたようだった。モヤモヤした思いが腹の中で黒く重く渦巻いた。その日はどうやって帰ったか覚えていない。
🌼)ただいまー!蛍、いるのー?
合宿から戻った🌼が蛍の部屋に行くと、蛍は電気もつけず、真っ暗な部屋でベッドに座っていた。
🌼)どうしたの?真っ暗で。体調悪いの?
🌼が蛍のおでこに手を当てようとすると、腕を強く握られてそのままベッドへ押し倒された。
蛍は縋るように🌼へ抱きついた。身動きが取れないように両手をベッドに押し付け、噛み付くように何度もキスをした。蛍の手が🌼の服の中に入ってくる。抵抗しようと蛍の体を押し返すと、両手を頭の上でまとめ、再びベッドに押しつけた。
🌼)け、蛍。やめて、お願い
蛍)は?なかなか会えなかったのに、嫌なの?あんなやつにキスまでさせて。あいつならいいの?
🌼)何のことか…わ、わかんない…よ。どうした
🌼の口から△△の事を聞きたくない蛍は、🌼の口を再びキスで塞いだ。蛍は🌼の服を捲り上げ、🌼の胸を手で掴む。その時、🌼の震えが伝わり、顔を見ると目から涙が溢れていた。蛍はハッとした。
🌼)泣グズッ、グズ。こんなの嫌だぁ
🌼は緩んだ蛍の腕から抜け出し、慌てて出ていった。蛍は我に返り、強い自己嫌悪に襲われ🌼を追いかけられなかった。
🌼は蛍の家の玄関を飛び出すと、ちょうど帰省してきた明光にぶつかる。
明光)おっと。🌼か、どうした
明光は乱れた服と、震えて青ざめた🌼の顔を見て事態を察した。
明光)🌼、家まで一緒に行こう。
🌼は明光に促され、一緒に自宅に帰った。リビングに入ると、明光は🌼をソファに座らせた。
明光)腹減っただろ。なんか、作ってやるから。
一人暮らしを始めて自炊も頑張ってるから、
意外とうまいぞ。
何も聞かず、いつも通りにしてくれる明光に🌼はほっとした。ちょっと焦げたピラフをお皿に入れて、明光は帰っていった。
🌼)明兄、ありがとう…
🌼はピラフを頬張りながら、赤くなった手首を見て、涙がとまらなかった。
明光は家に戻り、蛍の部屋へ行く。ドアは開いたままで、蛍がベッドの上で壁にもたれかかり座っていた。明光は蛍に近づくと胸ぐらを掴んだ。
明光)おい、🌼に何をした?
蛍)兄ちゃんには関係ないだろ。
🌼は俺のだから
その瞬間、明光は蛍を殴っていた。
明光)🌼は物じゃない!ちゃんとわかってんのか!お前が🌼を大事にできないなら、もう遠慮しないからな?
蛍)やっぱり兄ちゃん、🌼を好きなんじゃん。俺に情けで譲ってやって優越感にでも浸ってるわけ?…勝手にしなよ。
明光)わかった。後悔すんなよ。
明光が出ていくと、蛍は殴られた頬を手で押さえ
蛍)どうしたらよかったんだよ…
再び暗闇でうずくまった。
3話に続く
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!