俺には、暗い路地から手が出てきたのかと思った。
episode20
その手は俺のフードを掴み、引っ張った。
やばっ…!
類さんは俺を抱え、猛ダッシュでそこから離れた。
その勢いに負けたのか、その手は俺から離れた。それはいいのだけれど…
類さんの足は想像以上に速く、勢い余ってレンガの壁に突進しそうになる。
こっちもやばすぎ!!!!死ぬ〜!!!
すると類さんは、クルリと方向をかえ、背中からそのまま壁に打つかった。
俺は前に抱っこされてたから無傷だけど…
「痛った〜……」
「類さん!?大丈夫!?」
「平気だよ。ショウにゃんは怪我ない…?」
そう言って微笑む。
「今は俺より自分の心配しろ!!」
「ホントに平気だよ。」
そう言いながらゆっくりと立ち上がる。
足も擦りむいてるし、当たったとき物凄い音がしたし…絶対平気じゃない!!
「ごめん。ホントごめん!」
「なんで、ショウにゃんが謝るの?!しかも、あのままだと、ショウにゃんが連れて行かれるところだったし…。」
…あの手、何だったんだ?それに、俺を捕まえるとか何とか…。
ショウにゃんに似てるってだけで、こんなにも苦労すんのか…。
類さんにも怪我させてるし…
すると、類さんの手が俺の頬に添えられる。
「そんな顔しないでよ。ショウにゃんのせいじゃないし、笑ってる方がかわいいよ?」
冷たい…。
「…そうだね。」
「あの犯人のことは僕に任せてよ。」
「え?」
「だから、もう帰ろう?」
類さんの顔を見て、少し、寒気を覚えた。
「そうなんだ…。でも、お兄さんが来てくれるなら安心だね!」
あれから一夜明け、学校に来ているのだが…
昨日のこともあり、類さんが今日は学校まで迎えに来てくれることになった。
「そうだな…。尚も気をつけた方がいいよ。」
「笑の方がでしょ?…そういえば、今日宵田くん来てないね。」
「確かに。ちょっと遅れるんじゃね?」
「かもしれないね。」
あれから、お昼まで宵田くんは顔を出さなかったが、昼休み、話している俺と尚のところへ現れた。
「細田さん。」
「な、何?」
コイツ、いつの間に…
宵田くんの顔に、緊張感が表れていた。
尚が、俺の袖を掴む。
「…笑に何か用があるの?」
「俺は笑に聞いてるんだ。」
「僕にも教えてよ。…何か隠し事?」
「いいから早く来て、細田さん。」
宵田くんは俺の腕を引っ張る。
「尚、大丈夫だから。またゆっくり話そう。」
「…!」
尚は少し不安そうだったが、すぐに俺を離した。
「で、校舎裏まで来て何の話?」
宵田くんに連れてこられたのは、人がいない、校舎裏だった。
「…そっちこそ、もう気付いているんじゃないの?」
「は?」
「見覚えが無い?…俺たちー…」
3年前に会ってるんだけど。
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