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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第47話 〚修学旅行1週間前、澪の気持ち〛
修学旅行まで、
あと1週間。
その言葉を聞くだけで、
胸の奥がきゅっと鳴る。
楽しみ、のはずだった。
みんなと行く。
笑う。
写真を撮る。
夜、同じ部屋で話す。
——それだけ。
なのに。
(……どうして、こんなに落ち着かないんだろう)
朝の教室。
机に座りながら、
澪は窓の外を見ていた。
冬の光は淡くて、
どこか遠い。
後ろから、
椅子が引かれる音。
振り向かなくても分かる。
海翔だ。
最近、
それが当たり前になりすぎていた。
(気づけば、いつも近くにいる)
怖いことが起きそうなわけじゃない。
むしろ、
何も起きていない。
それが、
逆に不安だった。
修学旅行の話題になると、
教室は少しざわつく。
「部屋どうなるんだろ」
「夜更かし禁止だって」
「お土産何買う?」
笑い声。
その中で、
澪は一人、静かだった。
(同じ部屋)
(同じ班)
(同じ時間)
海翔と。
それが決まった時、
安心したのは本当。
でも同時に、
胸の奥で小さく音がした。
——近すぎる、って。
(私が不安になるたびに)
(海翔は、
全部引き受けようとしてる)
それに、
最近気づいてしまった。
だから。
「楽しみだね」
そう言われるたび、
少しだけ言葉に詰まる。
楽しみじゃないわけじゃない。
ただ。
(このまま行っていいのかな)
昼休み。
えまたちと話していても、
澪の視線は無意識に教室の入口を追ってしまう。
海翔が、
そこにいるかどうか。
(……確認してる)
自分で気づいて、
少し嫌になった。
(私、依存してない?)
答えは、
分からない。
でも。
前みたいに
「守ってもらえば大丈夫」
とは思えなくなっていた。
放課後。
帰り道。
海翔は、
少し後ろを歩いている。
わざとだ。
澪には、
それが分かる。
(距離を、
保とうとしてる)
それが、
余計に胸を締めつけた。
(近づかれるのも苦しいのに)
(離れられるのも、怖い)
——どうすればいいの?
心臓は、
何も見せない。
予知も、
沈黙したまま。
夜。
布団に入って、
目を閉じても眠れない。
修学旅行の景色が浮かぶ。
みんなの笑顔。
知らない場所。
夜の部屋。
そして。
海翔が、
自分の前に立っている姿。
(……私)
(この人を、
縛ってない?)
その考えが浮かんだ瞬間、
胸が痛んだ。
守られている安心と、
守らせている重さ。
両方を、
澪は知ってしまった。
(修学旅行)
(何も起きなければいい)
でも同時に、
こうも思ってしまう。
(何かが、
変わらなきゃいけない気がする)
それが何かは、
まだ分からない。
言葉にもできない。
ただ。
修学旅行1週間前。
澪の心は、
静かに、確実に——
次の一歩を求め始めていた。