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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第48話 担任視点 〚修学旅行前の空気の違和感〛
修学旅行まで、
あと6日。
担任は、教室の後ろからクラスを見渡していた。
一見すると、
いつも通り。
騒がしい生徒。
計画の話で盛り上がるグループ。
席で静かに本を読む生徒。
——何も問題はない。
……はずなのに。
(……妙だな)
担任は、
胸の奥に引っかかるものを感じていた。
まず、
海翔。
彼は班長として、
完璧に仕事をこなしている。
予定の確認。
提出物の回収。
全体への声かけ。
非の打ちどころがない。
だが。
(……見すぎている)
澪の動きに、
視線が必ず反応する。
立ち上がれば。
席を離れれば。
誰かが近づけば。
それが“心配”の域を超えていることを、
担任は分かっていた。
(守ろうとしている、というより……)
(張りつめている、か)
次に、
澪。
彼女は以前より、
静かだった。
元々、目立つタイプではない。
だが今は、
“引いている”。
笑っている。
話している。
ちゃんと日常を過ごしている。
それなのに。
(気持ちだけ、
少し後ろに下がっている)
担任は、
職員室でよく見る。
——何も起きていないのに、
何かが起きる前の顔。
それを、
澪はしていた。
そしてもう一人。
真壁恒一。
彼は、
相変わらず空気を読めていない。
無理に会話に入ろうとする。
距離を詰めすぎる。
周囲の反応に気づかない。
だが最近。
(……焦っている)
担任には、
それがはっきり見えた。
修学旅行の話になると、
声が大きくなる。
澪の名前が出ると、
一瞬、顔が明るくなる。
——危うい。
そう、直感した。
一方で、
西園寺恒一。
表面上は、
静かだ。
むしろ大人しい。
だが。
(……静かすぎる)
修学旅行の話題になると、
決して澪の方を見ない。
見ない、という選択。
それが、
担任には不自然だった。
(視線を避けている生徒ほど、
内側で何かを考えている)
長年の経験が、
そう告げていた。
教室全体。
笑い声はある。
予定も決まっている。
問題行動も、
今のところない。
それなのに。
(空気が、
一枚薄い)
何かが起きたら、
一気に破れる——
そんな予感。
担任は、
出席簿を閉じて小さく息を吐いた。
(修学旅行は、
楽しい思い出を作るためのものだ)
(誰かが、
傷つく場じゃない)
だから。
この違和感を、
見逃さないと決めた。
「……よし」
担任は、
次の週の予定を見ながら、
心の中で確認する。
見回りを増やす。
部屋割りを再確認。
夜の巡回を念入りに。
そして。
(海翔)
(君が一番、
無理をしそうだ)
担任は、
彼の背中を一瞬見つめた。
——守る役を、
一人に背負わせるわけにはいかない。
修学旅行前。
何も起きていない教室で。
ただ一人、
担任だけが気づいていた。
このクラスは今、
“静かすぎる”。
それが一番、
危険なサインだということを。