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第二話:ウォッカと不器用な気遣い
ソルグとルーナの小さな家は、国際色豊かな来客で賑わっていた。
居間のテーブルには、日本が持参した和菓子と、ロシアが持ってきたウォッカのボトルが並んでいる。中国は茶をすすり、アメリカは携帯端末で何かを調べている。
☀「いやぁ、まさかこんな小さな国に、貴方たちのような大国が来てくれるとはな!」
ソルグは嬉しそうに、ロシアにグラスを差し出した。
ロシアは豪快な笑い声を上げ、ボトルからウォッカを注ぐ。
🇷🇺「ハハッ、良いじゃないか。ウォッカを飲めば、どんな壁も乗り越えられる!お前さんも飲むか?」
ロシアはルーナの方に目を向けたが、ルーナはソルグの背中に顔をうずめたまま、小さく震えている。
ソルグは困ったように微笑んだ。
☀「すみません、ルーナはまだお酒は飲めないんです」
🇷🇺「そうか、残念だな。だが、お前はいい奴だ。俺たちともっと仲良くなろう」
ロシアはソルグの肩を力強く叩いた。その様子を、日本は微笑ましく見守っている。
🇯🇵「ルーナさん、もしよかったら、この和菓子をどうぞ」
日本はルーナに、桜の花を模した可愛らしい和菓子を差し出した。ルーナはソルグの顔をうかがい、ソルグが「大丈夫だよ」と優しく頷くのを見て、恐る恐る小さな手を伸ばした。
🌙「ありがとうございます…」
ルーナはか細い声で礼を言い、和菓子を一口食べた。その途端、彼女の目がほんの少しだけ輝いた。
🌙「…おいしい…」
日本は嬉しそうに微笑んだ。
🇯🇵「それはよかったです。日本の伝統的なお菓子です。気に入っていただけて、私も嬉しいです。もし興味があれば、今度作り方もお教えしますよ」
日本の言葉に、ルーナは少しだけ顔を上げた。
その時、中国が真剣な顔で口を開いた。
🇨🇳「ルーナ殿。君の国の海軍は、まだ規模が小さいと聞いているが、指揮能力は高いと聞く。もしよろしければ、我が国と合同演習をしてみてはどうか?我が国の軍事技術は、きっと君たちの助けになるだろう。もちろん、経費はこちらが負担しよう」
ルーナは中国の真剣な眼差しに再び怯え、ソルグの背中に隠れてしまう。
ソルグは中国に謝りながら、ルーナをなだめた。
☀「すみません、中国さん。ルーナはまだ、そういった話をするのが苦手なんです」
🇨🇳「そうか…」
中国は少し残念そうに、しかしすぐに何かを思いついたように言った。
🇨🇳「では、食事でもどうだ?我が国の料理は、世界一美味いと評判だ。これを食べれば、きっと元気になるだろう」
そう言って、中国はルーナに温かい肉まんを差し出した。ルーナは再びソルグの顔を見て、彼の優しい表情に安心し、小さな手でそれを受け取った。
🌙「…ありがとうございます」
ルーナが肉まんを食べていると、今度はアメリカが陽気に話しかけてきた。
🇺🇸「ヘイ!ルーナ!その肉まん、クールだね!でも、俺の国のハンバーガーも最高だぜ!今度みんなで食べに行こうぜ!あ、それともピザはどうだ?それともコーラ?どっちも最高だぜ!」
ルーナはアメリカの勢いに圧倒され、固まってしまう。
☀「…アメリカさん、ルーナは人が多い場所は苦手なんです」
ソルグがそう言うと、アメリカは少し落ち込んだ顔になった。
🇺🇸「そっか…ごめんよ。でも、いつか一緒にパーティに行こうな!最高の音楽とダンスがあるんだぜ!」
そう言って、アメリカはルーナの頭を優しく撫でた。
その日、ルーナはたくさんの感情を経験した。日本の優しさ、ロシアの豪快さ、中国の不器用な気遣い、アメリカの明るさ。ソルグ以外のボールたちとの交流は、彼女にとって初めての体験だった。
夜になり、来客が帰り、家には再びソルグとルーナだけが残った。
☀「疲れただろ、ルーナ」
ソルグはルーナの小さな体を抱きしめ、優しく頭を撫でた。ルーナはソルグの腕の中で、今日受け取った折り鶴と、中国からもらった肉まんをぎゅっと握りしめている。
🌙「…うん…でも…」
☀「でも?」
🌙「…楽しかった…」
ルーナの小さな声に、ソルグの心は温かくなった。
☀「そうか…よかった。これからも、色々なことが待っている。でも、俺がずっとそばにいるから。もう、一人じゃないからな」
ルーナはこくりと頷き、ソルグの胸に顔をうずめた。外の世界はまだ怖いけれど、ソルグが、そして今日出会った仲間たちがいる。彼女の凍てついた心に、わずかながらも温かさが宿り始めていた。
(続く)
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