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レンズ
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🎲
ご本人様には関係ありません。
紫水 (赤水)
紫片思い
失恋系
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あの頃、喉が焼けるほど歌って、息も絶え絶えやったのに。
それでも、いむくんが「しょーちゃんの声、凄い好き」って言ってくれたあの日だけは、
弱い自分を誰かが見つけてくれた気がした。
欲しい言葉も、欲しい顔も、全部わかってた。
だから僕は、期待された通りの“優しい相棒”を演じた。
……そうやって、生きてきたんや。
りうちゃんといむくんが旅行行ったって聞いたのは、配信の合間。
「えっ、二人で?」「あー、そうなんや。ええなぁ」
声のトーンを崩さへんようにしたけど、
胸の奥で、何かが小さく崩れた音がした。
本当は少しごつごつした手も、
夜中まで頑張ってた声枯れたとこも、
全部、いむくんが「それでいいよ」って笑ってくれたんや。
その一言にどれだけ救われたか――もう本人は知らんのやろな。
気づけば、ステージで隣に立つのは僕やない。
いむくんの笑う隣、
そこにおるりうちゃんを見つめながら、
僕はマイクを握りしめて、
「気づいてしまったな」って心の中で呟いた。
その笑顔が眩しいほど、
あの唇からこぼれる“ありがとう”が憎らしかった。
どんな言葉も、いまの僕には“言い訳”に聞こえてしまう。
「君だけが幸せになれるなんて、そんなのズルいよな」
そう思った瞬間、
自分がいちばん汚い人間みたいやった。
拍手喝采の中、
誰よりも晴れやかな顔をしたいむくんを見て、
僕はもう一度だけ、あの日みたいにあの頃みたいに1番って言ってくれた日みたいに抱きしめたくなった。
けど、
手を伸ばした先にはもう“空気”しかなかった。
少しだけ笑えばよかった。
もう少し素直に話せばよかった。
あと一歩、勇気があれば――。
それだけで、
未来は違ってたんかもしれへん。
過去を綺麗に飾っても、
それは毒や。
残るのは後悔ばかりで、
もう指でなぞる意味もない。
「幸せでいて」って願うのは、
ほんまは“呪い”みたいなもんやと思う。
そう願ってしまった時点で、僕はまだ君を想ってる。
りうちゃんの肩に寄り添う君を見ながら、
心の中で何度も「もうええよ」って呟いた。
それでも、
「まだ好きや」って声が奥から聞こえてきた。
ステージのライトが落ちて、歓声が遠のく。
みんなが笑顔で抱き合う中、
僕は笑いながら、
心のどこかで“花が咲かない”ままの想いをそっと埋めた。
「これでお終い」
そう言い聞かせながら、
マイクを置いた指が、少し震えてた。
ありふれた日々を彩っていたのは、
ただ、君がそこにいたからやで。