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端末に指を重ねようとした、その時。
🍵「……こさめちゃん」
掠れた声がして、
こさめの肩がびくりと跳ねた。
顔を上げる。
すちが薄く目を開けていた。
酸素マスク越しの浅い呼吸。
ぼんやりした視線。
でも、
ちゃんとこさめを見ている。
🦈「……すち」
こさめは慌てて端末を隠そうとした。
けれど。
弱々しく伸びた手が、
その手首をそっと掴む。
力なんてほとんどない。
それなのに、
逃げられなかった。
🍵「……だめ」
小さな声。
でもはっきりしていた。
こさめの喉が詰まる。
🦈「でも……」
🍵「だめ、だよ」
すちは苦しそうに息を吐く。
それでも手を離さない。
🍵「俺のために、こさめちゃんが消えてくの……やだ」
“消えてく”。
その言葉に、
こさめの胸が痛む。
最近、
自分でも分かる。
少しずつ、
自分が欠けていってる。
メモが増える。
思い出せないことが増える。
なのに。
すちが苦しそうだと、
全部どうでもよくなる。
🦈「……こさめね」
涙がぽろぽろ落ちる。
🦈「すちが死ぬ方がやだもん」
子どもみたいな声だった。
すちは静かに目を閉じる。
苦しそうな呼吸。
それでも、
掴んだ手だけは離さない。
🍵「……俺もやだよ」
掠れた声が落ちる。
🍵「こさめちゃんが、俺のこと忘れるの」
その瞬間。
こさめの呼吸が止まる。
忘れる。
その言葉が、
今までよりずっと現実味を持って胸へ刺さった。
もし本当に。
すちの笑い方も、
声も、
好きって気持ちも、
全部消えたら。
🦈「……っ」
怖い。
急に。
ものすごく怖くなる。
すちはゆっくり、
こさめの手を引き寄せた。
弱々しく笑う。
🍵「俺さ」
🦈「……」
🍵「こさめちゃんに覚えててもらえた方が、うれしい」
涙が止まらない。
すちは指先で、
こさめの涙を拭う。
🍵「だから、お願い」
その目は、
泣きそうなくらい優しかった。
🍵「生きて」
その言葉が、
こさめの胸をぐちゃぐちゃに壊した。
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