招待状が届いてから一か月の間、色々なことがレーナを襲った。 マイラ国王室から召集をかけられたり、メイに『お手つき』のことがバレたり、ローラとリリスに自分の運命のことを話したりと、本当に色々なことがあった。
見様見真似のマナーを教え込まれどうにか形にはなったが、この程度で魔王様と王妃様、王女様に謁見できるわけがない。
しかし、お茶会というのは建前で、本当のところは顔合わせを兼ねたお茶会なのだ。まだまだ未熟なマナーはどうにか許されるだろうというのがノアの言い分だったので、それを信じて頑張ったのだ。
そして、お茶会当日。
レーナはノアより贈られたサイズぴったりのドレスに着替えて魔界へと渡った。
ちなみに、このドレスはレーナのスリーサイズを把握しているノアが魔界の仕立て屋で頼んだものだった。ノアの瞳と全く同じ色のワインレッドがレーナの全身を包む。見事な薔薇の刺繍がレーナの乙女心をくすぐった。
ノアの魔法によって瞬間移動したレーナは、本当に一瞬で魔界へと辿り着いたことに感動した。
人間が魔界へ行くには各国にある聖教会に行って手続きをしなければならない。それはどの国の市民や貴族、王族も一緒。
例外は『お手つき』になった女だけである。
逆も然り、召喚以外で呼ばれた魔族以外は魔界の役所で申請をするらしい。その申請が魔王から許可が出たら人間界へ渡ってもよいのだ。
ニアが突然やってきたのも、父である魔王から許可を得てやってきたとのことだった。
辿り着いた魔界はノアの言っていた通り、人間界と何ら変わりはなかった。太陽の眩しい光が降り注ぎ、自然豊かで美しいところだった。
目の前にそびえ立つ立派なお城を見て、マイラ国の城とは違い、要塞のような出で立ちの建物にレーナは驚いた。
「マイラ国と全然違うね」
三週間前に見たマイラ国の城を思い出したレーナは、アンヌ国の見事な要塞めいた城に感嘆する。
マイラ国の話を出すと、ノアは分かりやすく嫌そうな顔をするのだ。
そして、嫌々といった風にレーナに説明してくれた。
「あそこは昔から贅を尽くすのがお好きらしいわ。ちなみに、うちの城が要塞のような訳は、昔から魔王や魔族が悪だと勝手に決めつけて城に乗り込んでくる輩がいるからこうなったのよ」
「そういえば、数年前に自称勇者一行が来たって言ってたね」
ノアは当時のことを思い出しているのだろう、先ほどより嫌そうな顔をしてその時のことを話した。
「そうなの。今の時代下手に殺すと面倒だし、適当にあしらっても懲りずに何度もやってくるから大変だったわ」
「そのひと達はどこから来たの?」
「海をまたいだ国よ、どうでもいいから名前は忘れたわ。その国は魔獣が多く生息する国らしくてね、魔族が魔獣を作り出していると勘違いしていたのよ。だから、魔法で拘束して魔界と魔族のことを大臣が三日三晩こんこんと説明したらしいの。そうしたら真面目一辺倒の勇者一行はアタシ達に謝罪して、魔界のルールを国のみんなに知らせると言って帰って行ったわ」
思っていたより時代錯誤なことをしているのは魔族も一緒なのではないかとレーナは思ったが、ノアが至極真面目に語るので言わないでおいた。
魔族のひと達は命を狙われていたのだから、おいそれと口出しするのはルール違反だと理解しているからだ。
「そ、それは、大変だったね……?」
「まあ、そういう馬鹿な連中からの攻撃を防ぐために祖父が建てたのよ」
「そうなんだ」
「そういうこと。さあ、みんなが待っているわ。急ぎましょう」
門番はノアの一時帰城を知らされていたのだろう、当たり前だが顔パスで入城できた。レーナのことも話が通っていたようで、荷物検査などされることなく通された。
ノアの足取りは軽く、久しぶりの実家(?)に浮かれているのだろう。
「これから玉座のある広間に入るわ、心の準備はいいかしら?」
「うん、大丈夫。 ……でも、心細いから、私から離れないでくれる?」
「もちろんよ、大事なダーリンを放っておくわけないじゃない」
「ありがとう、ノア」
「さあ、行くわよ」
大きな扉の前で護衛をしている者──近衛兵──に、ノアが「父上への謁見をお願い」と言うと、近衛兵達はきびきびとした動きで謁見の許可を取った。
ノアにエスコートされながら、大きな扉の中へ足を踏み入れる。
玉座に座っていたのはノアが老けたらこんな感じになるのかなと思わせる、精悍な風貌をしている魔王アスタロトがゆったりと玉座に座っていた。
「よくぞ来てくれたな、レーナ嬢」
気難しそうな見た目の割りに、友好的な態度でレーナを迎えてくれたのが嬉しかったレーナはノアから教わったマナーで礼をする。
その隣に可憐で優雅な風貌をしているのは王妃エリーゼで、「待っていたわ、レーナ嬢」とこちらも友好的に接してくれた。
最後にニアが「お久しぶりね、レーナ嬢」と、畏まった態度で接してくださったのが逆に申し訳なく思ったレーナは、ノアから教わったカーテシーをして優雅に振る舞えるよう努めた。
ニアからレーナの出自はある程度聞いていたのか、それとも調べたのかレーナには判断がつかないが、ぎこちない動きでもそれを指摘されることはなかった。
「さて、レーナ嬢、発言を許可する」
「ありがとうございます。お初にお目にかかります、レーナでございます。本日はこのような機会を頂戴し、心より感謝申し上げます」
「そこまで堅くなくともよい。今日は我々だけの茶会なのだ、楽にすることを許す。庭には魔界でしか咲かない花があるのだ。そこに席を設けているいるから行こうか」
近衛兵に囲まれながら歩いたので落ち着かなかったが、何か悪いことをしているわけではないので堂々とすればいいのだと自分に言い聞かせ、ノアに連れられてひたすら足を動かした。
玉座の間から歩くこと約十分。辿り着いたのは、見たことのない赤い花が咲き乱れ、美しいとしか言いようのない庭園が眼前に広がっており、レーナはこんなに美しいものを見たのはノアを召喚して以来なので、しばらく呆けていた。
「レーナ、大丈夫?」
そっと優しく声をかけたのはノアで、ぼけっとしているレーナを心配しているようだった。
「うん、大丈夫。こんなに美しくて綺麗だと思ったのはノアと初めて会った時以来だから、ちょっとびっくりしちゃったの」
「……あなたって子は……!」
「ふふ、相変わらず仲がいいのね」
砕けた口調で話しかけてきたのはニアで、彼女はにっこりと微笑み「こちらへいらっしゃいな」と弟カップルを手で招いた。
「ニアお姉様、お久しぶりです。あの時はお姉様が王族の方だとは知らず、失礼な真似をして大変申し訳ございませんでした。先日の件も含め、感謝申し上げます」
レーナは深くお辞儀をして自身の非を詫びた。もちろん、マイラ国王城で突然召喚したことも含めてである。
すると、ニアは「気にしていないから平気よ。ふふ、あの時と違っていい顔してるじゃない」と、茶目っ気たっぷりに笑って許してくれたのが救いだった。
アスタロトとエリーゼ、ニアは既に着席していたので、ノアに誘われる形で彼の隣に腰を下ろした。
お茶会というだけあって、そこにあったのは滅多にお目にかかれない立派なティーセットと、豪華なお茶菓子がずらりと並んでいた。
「わあ、すごいです!」
「喜んでくれたようでよかったよ」
魔王はそう言って侍女達にお茶の準備をさせた。それぞれにカップがいきわたり、アスタロトがカップに口をつけてから周りも口にする。
「おいしいです!」
礼儀もマナーも関係なくただ思ったことをすらすらと言ってしまい、レーナは「申し訳ございません」と勢いよく頭を下げた。アスタロトとエリーゼは「気にするな/気にしないで」と言って、レーナの無礼を許した。
「ねえ、わたくしの申した通りでしょう? レーナさんは感情豊かで面白い子なのよ」
「そうね、ニアの言う通りだわ。ねえ、ふたりは人間界でどんな風に暮らしているの?」
おっとりとした王妃に尋ねられて、レーナは普段の何気ない生活を話した。
お茶会は練習したおかげでどうにかマナー違反になることはしないで済んだ。
時間はあっという間に過ぎて、お茶会が始まって二時間が過ぎようとしていた。
「風が冷たくなってきたな、そろそろ中に入ろう」
アスタロトの言葉でお茶会はお開きになった。
「ここから玉座まで戻るのは時間がかかるだろう、そのまま戻ることを許可しよう」
「ありがとうございます、父上」
「ありがとうございます、陛下」
「では、私はレーナと共に人間界へ戻ります」
「結婚式は魔界でもやるのよ」
「はい、母上」
レーナは結婚という言葉に顔を赤くした。近い将来大好きなノアと永遠の愛を誓うのだと思うと、胸がいっぱいになる。
「レーナさんって本当に可愛いわぁ! キスしてもいい?」
「だめですよ、姉上!」
一悶着を起こす姉弟を止めたのは父アスタロトだった。
「客人の前でみっともない真似はやめなさい」
それからもう一度三人に挨拶をして、人間界へと戻った。
夕飯を食べ入浴も済ませてレーナの部屋でふたりはまったりと過ごした。
「ねえノア、いつか結婚する時は、村の教会と魔界のお城で式を挙げるんだよね?」
「そうね、アタシは王族だからお披露目も仕事の内よ。レーナも王妃になるのだから最後まで付き合ってもらうわ」
「望むところだよ!」
「さて、今日も愛し合いましょうね」
「うん」
お互い下着だけの状態で何度もキスをする。ふたりともキスが好きなので、満足するまで唇を合わせる。
「今日は違う体位で楽しみましょうか。レーナ、アタシの上に乗ってくれる?」
耳年増のレーナは、ノアが騎乗位というやつをしたがっているのだと理解し、またしても赤面する。
「レーナがアタシの上で乱れるところが見たいのよ」
なんて恥ずかしいことを言うのだろうとレーナは思ったが、ノアに求められるのは悪い気がしないので「ノアがしたいのなら私はいいよ」と軽く安請け合いをしたのだった。
いつものようにノアに愛されてどろどろに溶かされたレーナは少しくたくたになっているが、ノアが期待を込めた眼差しで見つめてくるので、レーナは頑張ることにした。
ノアのそそり立つペニスに触れるのはこれが初めてではないので、しっかりと手で掴んで蜜口に宛がうが、初めての騎乗位なのでうまくいかない。
焦れったく思うノアは、それでも頑張ろうとしているレーナの行動を見守った。
くちゅと卑猥な音を立てながら、ぬぷぬぷとノアの屹立が中に入っていく。
「んぅ……」
自重のせいでいつもより深いところに当たり、それだけでレーナは軽く達してしまった。
「ああっ!」
「レーナ、まだ挿れただけよ?」
「うう、ごめんなさい……」
「さあ、好きなように動いて」
レーナは腰を動かすが、ぎこちない動きがノアの嗜虐心をくすぐる。
「ほら、好きなところに当ててみせて」
ノアに言われて緩慢な動きではあるが、レーナの弱いところに掠めると中がきゅうと締まった。
「そう、いい子ね……」
ひたすらそこを目掛けて腰を振るレーナは金色の長い髪が汗で身体に張り付き、たわわな胸がレーナの動きに合わせて揺れるのがたまらない。
なかなかイけないことに焦れったくなったレーナに気づいたノアは「そろそろかしらね」と言って、下からどちゅんと思い切り突き上げた。
「ああん!」
それがレーナのいいところに当たったせいで、中は締めつけるのをやめない。
「頑張ってくれたご褒美をあげるわ」
ガンガン突き上げられて、過ぎた快感に力が入らなくなったレーナはノアの身体に乗るように突っ伏した。
「イっちゃう……!」
「いいのよ、イって」
「んぅ、イくっ……!」
レーナは深く貫かれ、絶頂した。それにつられるようにノアも吐精する。
ノアの身体にもたれかかり、荒い呼吸をくり返す。
「気持ちよかったわね、レーナ」
「うん、うん……」
それからしばらくはそのままの体勢で睦言を囁き合った。レーナはノアから囁かれる愛の言葉が好きだったので、この時間もまたかけがえのないものになっていた。






