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それからは何も揉め事もなく時は過ぎた。
そろそろ正式に付き合ってから三ヶ月たつ。
これまでに幾度となくデートをした。
クリスマス、正月、もちろんバレンタインデーの日も一緒に過ごした。
友達からは最初は何かと言われていたが、最近は全く言わない。
僕の本気さが伝わったんだろう。
一緒に過ごす日々を重ねるうちに藤本はだんだん変わっていった。
特に変わったのは性格。
前より格段に明るくなった。
今ではあまりモジモジしない。
ちなみに僕は全く変わってない。
ただ、『もう傷付けるような事はしない』という決意が加わったぐらいだと思う。
今日は三月十四日。
世間的に言えばホワイトデー。
関係ない人もいれば、けっこう関係ある人もいる。
基本的にはチョコをもらった人が関係ある。
僕は後者だ。
まぁもらったのは藤本からだけなんだけどさ。
「藤本。ほらこれ。」
僕は学校帰りにお返しを渡した。
「なにかな……あ、ペンダントだ。ありがとう。」
「どういたしまして。」
「でも私に似合うかな…。」
「大丈夫だって。絶対似合うからさ。」
藤本は恐る恐る首にペンダントをかけた。
僕の予想通りちゃんと似合っていた。
「ねぇ、佐倉くん。明日とか時間ある?」
「あぁごめん。明日から三日間はバイトがぎっしり入ってるんだ。」
「そうなの……じゃあ四日後の十八日は?」
「えーっと、多分大丈夫。」
僕は記憶の中のスケジュールを思いだしながら答えた。
「じゃあ三月十八日の十一時にいつもの坂でね。約束だよ。」
「いつもの坂って言ってもここじゃないか。」
「ふふふ、そうだね。じゃあまたね。」
後ろを向いて手を振りながら坂を降りる藤本を僕は見えなくなるまで見送った。
やがて藤本が坂の向こうに隠れ見えなくなった時に僕も自分の帰る道を歩いた。
何歩ほど歩いただろうか、とにかく歩き出してから一分もたってないうちに
キキキィィィイィィ
と、明らかに何か起こったような音がした。
(……なんだ、随分派手な音だったな。)
僕はそう軽く思っていたが、数秒してから何かイヤな予感がした。
(…ふ、藤本!)
方向的にも時間的にも音があった場所と一致するような気がする。
僕は全速力で走った。
悪い予感を吹き飛ばすように。
坂を降りていくと、だんだん人ごみが見えてかた。
何かを取り囲むように集まってるように見える。
その近くにはトラック。
悪い予感が近づくほどに現実になっていく。
(まさか…まさか!)
短い距離のはずなのに随分遠く感じた。
そしてようやく人ごみの所に辿り着いた。
無理矢理かきわけその中心部に入った。
そこには
「ふ…藤本……」
数分前に会ったばっかりの藤本がそこに倒れていた。
「あ…さ、佐倉…くん……」
血だらけの藤本が僕に話しかける。
僕は人目を気にせずに近寄った。
「大丈夫か、藤本。」
しかし素人の僕から見ても大丈夫じゃなさそうなのは一目瞭然であった。
「ごめんね……佐倉…くん…」
何故か笑顔で藤本が言う。
「約束…守れないかも…しれな…いね…」
それが僕の聞いた藤本の最後の言葉だった。