ピリリリ…ピリリリ……
携帯が鳴った。
今この瞬間に十一時00分になった。
アラーム機能を使ってこの時間にセットした。
君と交わした約束を忘れないように。
けど君の姿は見えない。
約束に関しては人一倍うるさい君が。
君の姿を見たのはあの事故が最後だった。
その後救急車で運ばれていく君を僕は呆然と見送る事しかできなかった。
ついていく事はもちろんできた。
でも行けなかった。
――また明日、学校で会えるはずだ
そう信じていた。
誰よりも強く、強く、激しく。
君が死ぬ所なんて絶対に見たくない。
誰よりも想い、想い、願った。
それらの気持ちは親にも負けないと思っている。
なぜなら君は僕にとって一番大事だからだ。
他のどんな人、物、事よりも大切な存在であった。
だからこそ君の最後になるかもしれない瞬間を見たくはなかった。
なので僕はその後の事は何も知らない。
大学で話が出たかもしれないが聞いていない。
僕たちの関係を知ってる友人も何も言わない。
と言ってもあの日の次の日は君がいないのを確認してからすぐ帰っちゃったし。
それからは学校休んでるからさ。
そんな僕を見たら君は
「ちゃんと学校行かないとダメだよ」
と言うかもな。
じゃあちゃんと明日からは行くよ。
結局、君が生きているのか死んでいるかは分からずじまいだ。
でも僕は信じているから。
君は必ず約束を守ると。
ただ今回はいつもと少し違うね。
僕が君を待つよ。
三月十八日の十一時は今日だけじゃないから。
少しずつ春に近づいていく日差しの中、僕は引合坂をゆっくりと降りた。
来年のこの時もこうしているだろう。
来ないであろう君の事を。
それでも僕は待ち続ける。
君と交わした大切なモノ。
――それが約束だから
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