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こんな所まで逃げてしまった。
『あれ…?』
ここはどこだろう。
まさか、大人にもなって迷子になってしまうとは。
これでは、子供みたいだ。情けない。
1人は意外に寂しく、あたりは段々闇に包まれていく。
町外れのようで、周りに人もいない。
どうしよう。
このままでは、凍えてしまう。
国の化身だから死ぬことはない。
死ぬことはないが…
何時間経っただろうか。
冬の風は容赦なく私の体を刺すように吹く。
上着も席に忘れてしまい、なす術なく、その場に座り込んでしまった。
白い息を吐き、体を震わせる。
こんなことなら、逃げ出さなければよかったかもしれない。
イタリアで1人になるなど、油断していた。
きっと、逃げてきたバチがあたったんだ。
イタリア君には悪いことをした。
後で謝らなければならない。
謝ることができればいい方かもしれない。
体が限界を感じ始めているのが、自分でもわかるようになってきた。
雪が肩に積もる。
そういえば、北イタリアであれば雪はザラに降るとイタリア君が言っていた。
寒さ対策は万全だったはずだ。
咄嗟の出来事で全て無駄になってしまった。
寂しい。
日本はどこかに行ってしまった。
せっかく、勇気を出したのに。
やっぱり、俺じゃダメなのかなぁ。
おかしい。 日本が帰ってこない。
日本のことなら、余計な心配をかけないように数分したら帰ってくるはず。
数時間が経ってしまった。
ドイツやフランス兄ちゃん、他の奴らにも相談した。
イギリスとかアメリカとかも盗み聞きしてたみたいで、ヘリコプターやら、車やらを出してくれた。
「イタリア…」
『ドイツ…日本大丈夫かな…』
俺のせいだ。
日本は変なところで鋭いから、俺が言おうとしてたことに気づいてたかもしれない。
俺が変なことを言い出さなければ…
『菊〜!』
「菊ちゃーん!」
「返事しろ!菊!」
「菊〜!にーにあるよ!返事するよろし…」
アメリカが彼方此方の店や宿に連絡しても、日本を見かけた人はいなかったらしい。
寒いだろう。寂しいだろう。
日本のことだから、どこかで震えているかもしれない。
俺のせいだ。
「ーー!」
「ーーーーー!」
「ー!」
声、だろうか。
眠りそうになったが、名前を呼ばれたような気がして目を覚ます。
今なら、届くかもしれない。
でも、まだ誰かわからない。
「菊〜!」
あれは、イタリア君の声。
私が間違えるはずがない。
何回も聞いてきた。逃げ出してしまう前も。
出るはずもない声を絞り出して、返事をしてみる。
『ーーーーー…』
『い、たりあ、くん、』
私はそこで意識を手放してしまった。
「ーーーーー…」
今、聞こえた。間違えるはずがない。
ずっと追いかけてきた、好きな子の声。
微かな声だけど、こっちに気づいたんだ。
『菊!』
木の根に寄りかかり、意識を失った菊が1番に目に入る。
他の奴らにも教えなければならない、それは分かっていた。
でも、口よりも、頭よりも、体が、先に動いたんだ。
日本の体は冷たくて、震えていた。
直ぐに自分の胸に引き寄せ、抱き締めた。
日本の体は反射的に、短い腕で俺に抱きついてきた。
俺の温もりを求めるように。
よほど寒かったのだろう。
駆け付けてきたドイツがみんなを呼んでくれた。
日本は俺の家で暖炉の前のソファに寝かせた。
日本が逃げたのは俺のせい。でもね。
俺の元から離れるからこんなことになったんだよ?
心配かけたのは日本だから。
そんなことを思いながら、俺は、俺でも信じられないようなことを呟いた。
『もう俺から離れないでね♡』
コメント
2件
これは…黒フェリ!やばいよ菊監禁されるよやばいよ逃げて!!…あ、でもそれはそれで…、