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「なぁ、そっちの問題解けた?」
机に向かいながら、そらとが低い声でぼそっと聞く。
「んー…あとちょっとやけん、待ってね」
まなみはシャーペンをカリカリ走らせながら、可愛らしく舌をちょこんと出した。
その横顔を、そらとは無意識にじっと見つめてしまう。
大学生になっても、こうやって一緒に勉強してるのが不思議で、くすぐったくて、だけど嬉しかった。
「……そんな真剣な顔、昔はせんやったのにな」
「え?なんか言うた?」
「なんも。集中せえ」
そらとはわざとぶっきらぼうに返す。
深夜0時を回った頃。
まなみは机に突っ伏して、もう半分夢の中だった。
「おい、寝たら風邪ひくっちゃろ。ベッド行けって」
そらとが肩を揺するけど、まなみは小さく首を振って、寝ぼけ声でつぶやく。
「やだぁ…そらとおるけん、ここがいいんよ…」
そらとの心臓が跳ねた。
顔をしかめて「お前なぁ…」と小声で唸るけど、眠そうに眉を寄せるまなみを見たら、無理に起こすこともできなかった。
「……しゃーなかね」
そっと自分の膝をぽんぽんと叩くと、まなみは素直にごろりと頭を乗せてきた。
膝の上で眠るまなみの髪を、そらとは指先で軽くすくってみる。
細い髪が指にからむ感触に、胸がざわついた。
「……小学生のときと変わらんのになぁ。
けど…今はもう、こんなに近いと、正直きついっちゃ」
ぼそっと呟いた瞬間。
「……すき」
膝の上から、かすかな声がした。
そらとは一瞬、呼吸が止まる。
「……お、おい、まなみ?今、なんて言った?」
「ん……すきって言うたぁ……」
夢の中の声は、甘すぎて反則だった。
そらとは頭を抱えたくなるほど動揺して、必死で理性をつなぎとめる。
「……寝言やろ。寝言に決まっとる」
そう言い聞かせるように、そらとはため息を落とす。
でも、膝の上のまなみの寝顔を見てると、もう一度手を伸ばしたくなる。
そっと頬にかかる髪を払うと、まなみが小さく身じろぎした。
「……そらと、ずっと一緒おろね」
「……っ、反則やって、それ…」
その夜、そらとは結局一睡もできなかった。