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『…あのね、まろ』
ないこの指が布団の端をきゅっと握る。
『昨日……その……“食べられた”時……』
まろの表情が、ほんのわずかに強張った。
罪悪感と不安が混ざったような目。
『こわかったんだ……ちょっとだけ。
でも、それ以上に…うれしかった』
『まろが必死で、でも優しくて、
離れたくないって……思っちゃって…』
その言葉は優しさより深い何かを、確かに揺らす。
ないこは小さく息を吸い、ぎゅっと目を閉じた。
『……俺ねまろのこと、すき』
一瞬、空気が止まった。
『ほんとにすき。ずっとそばにいたいって思う。 でも……迷惑だったらどうしようって、 ずっと怖かった……』
『だから……聞きたくなかったら、聞かなくてもいい。 ただ、気持ちだけ伝えたかった』
ないこはそのまま小さく肩をすくめた。
返事が怖いから、顔を上げられない。
「ないこ、」
呼ばれた声がやさしくて、ないこは思わず顔を上げてしまう。
まろはそっと手を伸ばし、ないこの震える手に触れた。
「…そんな顔で言われて、迷惑なわけないやろ」
「ないこ。 俺も…お前がすきや」
「……これで、不安は消えたか?」
ないこは涙をこぼしながら、
それでもしっかりと目を見て、こくりと頷いた。
『……うん…消えた…』
まろの声は、どこまでも優しかった。