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【翌朝】
「…」
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、静かな部屋を柔らかく照らし出している。
目を覚ますと、隣にはまだスヤスヤと穏やかな寝息を立てて眠るじゅうの姿があった。そっと起こさないように身を起こし、布団の端をほんの少しだけ捲ってみる。
そこにあるのは、昨夜と変わらない、しなやかな身体のラインだった。
(…そう簡単には、元に戻らねぇ…か)
心のどこかで分かっていたこととはいえ、どこかホッとしたような、いや、やっぱり少し複雑なような、不思議な感情が胸の奥で揺れる。
相変わらず整った綺麗な顔だ。男の頃からファンの子達だけでなく世間が絶賛するほどの国宝級の顔立ちだったが、女性に変わったことでその端正さに妖艶さと柔らかさが加わり、磨きがかかったようにすら思える。無防備に開いた唇は、昨夜の熱の名残をどこか残しているようだった。
「…」
吸い寄せられるように、そっと指先を伸ばし、その柔らかい唇を指の腹でそっとなぞった。
何度も何度も…それこそ数え切れないほどキスをしてきた相手だ。触れ合うことなんて日常茶飯事のはずなのに…不思議と、今この瞬間にしている指先は、初めて本当の気持ちを確かめ合ったあの日の夜と同じくらい、いや、それ以上に胸が高鳴り、妙な緊張が走っていた。
指先に残る、ほんのりとした温もりと柔らかさ… それを確かめるようにそっと離すと、唇をなぞったばかりの自分の指先を、じっと見つめてからそっと自分の唇へと当ててみる。
どうしてこんなことをしているのか…正直自分でもよく分からない。普通にキスをすればいいだけの関係だし、起きていれば「何やってるの」と少し照れくさそうに笑われるだけのはずだ。
「…おはよ、はやちゃん…何してたの?」
「…?!」
いつの間にか目を覚ましていたじゅうが、ふわりと柔らかく微笑みながら俺の手をそっと握り締める。その表情は、まるで自分の寝顔を撫でていたところを最初からすべて見透かされていたかのようだ。
「…相変わらずそういうの、好きだよね…キスしたいなら、普通に起きてからので良いのに…」
「…っ…背徳感があるだろ、こっちの方が…ってかお前だって先に起きた時、俺の寝顔にイタズラしてただろ…っ!」
図星を突かれ、慌てて言い訳をすると、くすくすと嬉しそうに喉を鳴らした。
「まあ、起きる前の相手にこっそりそういうことするのって…普通にするより何倍もドキドキするもんね? ほら、そんなことより…今日のモーニングキスは、しないの?」
小首をかしげながら上目遣いでねだってくるその姿は、朝の寝起きの無防備さも相まって破壊力抜群だ。
「…ほんと、朝から調子狂わせる天才だな、お前は…」
呆れながらも、愛おしさを隠しきれない笑みを浮かべ、その唇へとゆっくりと重ね合わせた。
「…んっ…っ…」
「…っ…ん…」
昨夜燃え上がった熱を思い出させる一方で、窓から差し込む柔らかな朝の光に包まれたそれは、お互いの唇の感触や呼吸を慈しむように、どこまでも丁寧で優しい口づけだった。
「…ふふ、こうやってはやちゃんと一緒に起きられて幸せ…」
満足そうに目を細めながら胸元に心地よさそうに身を預ける。
「…こうやって、毎日じゅうの顔を見ながら起きられたらな…」
「…だね。でも、お互い同じ仕事してるから…どうしても、どうにもならない時ってあるもん…」
どこか切なさを混ぜながら微笑むその言葉に、小さく頷く。
アイドルとしての多忙なスケジュールや、お互いの活動のすれ違い。一緒にいられない日があることも、仕事に向き合う覚悟も、ずっと前から分かり合っていることだ。
「だからこそ、こうして一緒にいられる時間が特別なんだけどさ」
「うん…ねえ、はやちゃん。今日も一日、頑張れそう?」
「ああ、じゅうのおかげで、どんな仕事でも乗り切れそうな気がするよ」
「…グループかコンビで一緒に仕事する時…はやちゃんの笑顔を特等席で見られるの、至福なんだよね…でも今は…俺がこんな姿だから…」
じゅうの表情に影が落ちる。仕事の現場でカメラを向けられたり、メンバーと並んだりした時のことを思い出したのか、彼…いや、彼女の瞳に切なさが滲む。
「…そんな顔すんなよ…仕事に行きづらいじゃねぇか」
少し困ったような、けれど愛おしさを抑えきれない笑みを浮かべ、優しく頭を撫でる 。
「…早く元の姿に戻って…はやちゃんの笑顔を、特等席でまた眺めたいな…」
「…おいおい。お前にしか見せねぇ顔を自分が独占してる自覚、本当にあんのかよ…」
「…っ…!」
不意を突かれたように息を呑む。俺はそのままじゅうの顎を軽く指先で持ち上げ、まっすぐにその瞳を見据えた。
「じゅうが男だろうが女だろうが…俺が一番向けられたくない、でも一番見せたい顔を引き出すのは、いつだって他でもねぇお前なんだよ」
自分から言っておいてなんだが、気恥ずかしくなるようなストレートな言葉に、じゅうの顔が一気に真っ赤に染まる。
「…そんな事言われたら…益々好きになっちゃうじゃん…」
「もっと俺のこと…好きになれよ」
強気で不敵な笑みを浮かべたその言葉に、もう言葉が出ないといった様子で目を見張り、やがてたまらない愛おしさに負けるようにふっと柔らかく微笑む。
「…っ…このままだと、ホントに仕事に遅刻しそうだわ」
時計の針を確認してが慌ててベッドから起き上がり、散らばっていた服を急いで体に通していく。今日のじゅうは元から完全なオフ日だったためお留守番だが、俺は雑誌の取材や打ち合わせなど、びっしりとスケジュールが詰まっている。
「マネージャーの稲垣さんが迎えに来るまで、もう1時間もないでしょ? 早く準備しないとね…」
布団にくるまったままの姿で、くすくすと笑いながらそんな現実的なツッコミを入れる。けれど、どこか名残惜しそうな顔をしているのは隠しきれていなかった。
私服へと着替えを済ませ、出かける直前の身支度を整ええがベッドの脇に戻ると、スッと上半身を起こす。
「……じゃあ、気をつけていってらっしゃい、はやちゃん」
「おう、留守番頼むな。何かあったらすぐ連…」
言葉を最後まで紡ぐより早く、じゅうがふわりと腕を伸ばし、首元に手を回して引き寄せる。昨夜からの甘い余韻をそのまま閉じ込めたような、名残惜しさと愛しさが詰まった柔らかいキスが、そっと落とされた。
「…っ…!」
「…これで、今日の分の充電完了…お仕事、頑張ってきてね?」
真っ赤になりながらもどこか満足げに微笑む。その姿に思わずため息をつきつつも、愛おしそうにその頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「…ずるいヤツだな、本当にお前は…んじゃ、行ってくるわ」
「いってらっしゃい…はやちゃん」
後ろ髪を引かれる思いで玄関へと向かうその背中に、じゅうの明るい声が優しく見送るように響くのだった。
【……To be continued】
いや、マジで平日更新きついて!!(中の人の本業の都合上、こうなるのはまあ仕方ないとして…え、お前いくつなんだって?メンバーの誰かと同じ年です、はい(いや、それ中の人の生年月日が1997年4月2日から2003年4月1日までの生まれなの確定してない?大丈夫そ??→多分大丈夫(どこが?))。
まあ、平日はいけた時…土日は頑張ってどっちも更新(どっちもストックがある限り)…的なスタンスでいこうかな…なんて思います。
コメント
2件
更新、ありがとうございます!私生活もお疲れ様です。今回は一話同様、朝の時間でしたね。 何気ない時間も丁寧に描写していて、すごい…良いです。流れが掴みやすいし、感情の変化がグラデーションで伝わります。そして!山中くんの微笑む姿!キュンキュンを通り越して…悶絶?してました! お身体に気をつけて、私生活も!頑張っていただきたいです。
うわあ、朝の時間がこんなに甘くて切ないなんて…。寝顔を指でなぞるシーン、何度もキスしてきた相手なのに「今この瞬間」に特別な緊張感が走るって描写、すごく繊細で好きです。お互いの仕事のすれ違いを分かった上で「一緒にいられる時間が特別」って台詞に、関係の深さが滲んでてじんわりきました。To be continued、続きが気になりますね!
#ご本人様には一切関係ありません
m!ki
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情も義もあるキノコン
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#そのじん
ぬま子
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