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その日も私は薬部屋で、忙しく調合していた。
シャルルダルク様は相変わらず傍におり、なにやら難し気な書物を読んでいる。
「そう言えば、そなたのこと、皆が何と呼んでいるか知っておるか?」
「は?
さぁ?
分かりかねまする。」
「”幻のローズクォーツの姫君”とな。」
「…噂などはすぐに皆忘れてしまうでしょう。」
その時、「ここですわ!」という声がして、松葉杖を付いた姫君がやってきた。
「キーラ様…」
「こんにちは。
エリアス様にお聞きして、あなたの薬部屋を突き止めましたのよ。
紫陽花の会では、ありがとう。」
「いえいえ、大事にならずにようございました。」
私は言い、椅子を勧める。
「ありがとう。
あなたに頼みたい事があるのです。」
キーラ様は座りながらそう言った。
「私は、第6王子、サバライカ様との婚約が決まっておるのです。
もちろん、正妃としてです。」
キーラ様は言う。
「それは、おめでとうございまする。」
「しかし…
サバライカ様は最近胃腸の調子が悪く、ご飯もろくに食べて居らぬのです。」
「一度診察を…」
「それが…
サバライカ様は大の医者嫌いで、薬も苦手だと言い、飲まぬのでございます。
何かいい方法はあらぬか?
そなただけが頼りなのです!」
キーラ様はおっしゃる。
「おい、キーラよ。
いくら、マリーナとて、その条件では無理があろう。」
シャルルダルク様が言う。
「…少々お待ちいただけまするか?」
私は言った。
「方法があるのですか!?」
「本来なら、やはり診察しなければならぬのですが、とりあえずは…」
私は薬棚の1番下に置いてある大瓶を取り出した。
「そ、そ、それはなんですか?」
キーラ様が尋ねる。
「これは、梅酒というものにございます。」
「ウメシュ?」
「梅という酸っぱい果実がありまして、胃腸の病気や食欲増進に使われるのですが…
それにホワイトリカーと砂糖を加えて、酒にしたものでございます。
薬は嫌いでも酒ならば、飲まれるかと…」
「えぇ!
それは、酒ならばお好きだから…!」
「美味しいからと飲み過ぎはよくありませぬので、それだけご注意くだされ。」
私は梅酒を瓶に移して、蓋をする。
キーラ様はお礼を言い金貨1枚を置いていかれた。
うーん、しかし、最近は薬部屋も忙しいな。
そんな事を思いながら、調合に戻った。
数日後、サバライカ様の食欲は戻り、私はサバライカ様とキーラ様の結婚パーティーにお招きいただいた。
また、ドレス代がかかるぞ…
いただいた金貨を使うしかあるまいな。
そんな事を思いながら、結婚パーティーの日が近づいてきていた。