テラーノベル
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――文化祭の夜。
旧校舎。
静寂の中。
三人のスマホに。
同じ通知が届いていた。
『見つけた』
『やっと見つけた』
『今度こそ、逃がさない』
「……」
玲は。
画面を見つめたまま動かなかった。
星羅は。
玲の前に立っている。
「……誰が送ったんだ?」
玲が尋ねる。
佐伯は。
険しい表情を浮かべていた。
「分からない」
「……」
「ただ」
佐伯は。
ゆっくり周囲を見る。
「もうここにいる可能性が高い」
「……!」
美咲が。
廊下を見る。
「さっきから」
「……」
「誰かに見られてる気がする」
その瞬間。
――カツ。
廊下から。
足音。
「……!」
全員が振り向く。
カツ。
カツ。
ゆっくり。
近づいてくる。
「誰だ!」
玲が叫ぶ。
返事はない。
そして。
廊下の角から。
一人の影が現れた。
「……」
しかし。
次の瞬間。
非常灯が点滅する。
――パッ。
――消える。
――パッ。
再び点いた時には。
誰もいなかった。
「……逃げた?」
美咲が呟く。
「違う」
星羅が答える。
「……え?」
星羅は。
玲の腕を強く掴む。
「まだ近くにいる」
「星羅?」
「私」
星羅は。
周囲を見回す。
「ずっと見られてる」
その声には。
恐怖がなかった。
むしろ。
怒りがあった。
「……」
玲は。
そんな星羅を見ていた。
「星羅」
「ん?」
「怖くないのか?」
「……」
星羅は。
玲を見る。
「怖いよ」
「……」
「すごく怖い」
そして。
玲の手を握る。
「でも」
「……」
「玲くんがいるから」
少しだけ笑う。
「大丈夫」
#青春恋愛
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夏希(なつき)
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奇蹟あい
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玲は。
その手を握り返す。
「なら」
「……?」
「俺も一緒に戦う」
「……!」
星羅が目を見開く。
「今までは」
玲は。
静かに続ける。
「お前に守られてばかりだった」
「そんなこと……」
「ある」
「……」
「俺がもっと強ければ」
玲は。
拳を握る。
「七年前だって」
「……」
「お前を怖がらせずに済んだ」
星羅は。
首を横に振る。
「違うよ」
「……」
「玲くんは」
星羅が。
優しく笑う。
「あの時も私を守ってくれた」
「……」
「今だって」
玲の胸に。
そっと手を置く。
「私を守ろうとしてくれてる」
「星羅……」
「だから」
星羅は。
玲を見つめる。
「一緒にいよう」
「……ああ」
「絶対に」
「ああ」
「何があっても」
「ああ」
星羅は。
嬉しそうに笑った。
「……大好き」
その様子を。
佐伯は静かに見ていた。
「……二人とも」
「?」
「一つだけ」
佐伯は。
真剣な顔になる。
「明日から」
「……」
「しばらく学校を休みなさい」
「え?」
玲が驚く。
「危険だから」
「でも」
玲は。
首を振る。
「逃げ続けるだけじゃ何も変わらない」
「玲くん……」
「俺は」
玲は。
まっすぐ佐伯を見る。
「知りたい」
「……」
「七年前に何があったのか」
「……」
「俺たちを追っているのが誰なのか」
そして。
「なぜ星羅が狙われたのか」
佐伯は。
しばらく玲を見る。
やがて。
「……分かった」
そう言った。
「なら」
佐伯は。
ポケットから。
一つの鍵を取り出す。
「これを持っていなさい」
「鍵?」
「学校の地下資料室」
「……!」
「そこには」
佐伯が言う。
「七年前の事件に関する記録が残っている」
「どうして今まで……」
「見せるわけにはいかなかった」
「……」
「でも」
佐伯は。
玲を見る。
「もう隠す理由はない」
玲は。
鍵を受け取る。
「ありがとうございます」
星羅も。
その鍵を見る。
「……」
そして。
小さく笑う。
「玲くん」
「ん?」
「一緒に行こうね」
「ああ」
「二人で」
「ああ」
「絶対に」
「……分かった」
――その夜。
学校の屋上。
誰もいない場所。
星羅は。
一人でスマホを見ていた。
画面には。
さっきの通知。
『今度こそ、逃がさない』
「……」
星羅は。
ゆっくり文字を打つ。
『あなたが誰なのか知らない』
『何をしたのかも知らない』
『でも』
送信。
『玲くんには絶対に触らせない』
数秒後。
既読。
『ずいぶん変わったね』
星羅の指が止まる。
『昔は泣いていただけだったのに』
「……」
『今は』
『誰かを守る目をしている』
星羅は。
画面を睨む。
『玲くんは私が守る』
『あなたには関係ない』
返信。
『本当に?』
『もし』
『玲くんが私のことを捨てたら?』
「……」
星羅の表情が。
完全に消える。
「……」
そして。
静かに文字を打った。
『ありえないよ』
『玲くんは私を選ぶから』
送信。
すぐに返信が来る。
『どうして言い切れる?』
星羅は。
スマホを握る。
「……だって」
小さく呟く。
「私が一番、玲くんを愛してるから」
そして。
返信。
『もし誰かが玲くんを奪おうとしたら?』
星羅は。
数秒考える。
そして。
『奪わせない』
『誰にも』
『絶対に』
送信。
画面を閉じる。
「……」
その直後。
背後から。
「星羅」
「……!」
振り返る。
玲だった。
「玲くん……?」
「こんなところにいたのか」
「うん」
「探した」
「……」
星羅は。
慌ててスマホを隠す。
「どうした?」
「なんでもない」
「……」
玲は。
少しだけ星羅を見る。
そして。
「帰ろう」
「……うん」
玲が。
手を差し出す。
星羅は。
その手を握る。
「……玲くん」
「ん?」
「私ね」
「……」
「これから何があっても」
星羅は。
玲の手を両手で包む。
「絶対に離れないから」
「……ああ」
「もし」
少しだけ。
声が震える。
「誰かが私たちを引き離そうとしても」
「……」
「何度でも会いに行く」
玲は。
優しく笑った。
「じゃあ」
「……?」
「俺も何度でも迎えに行く」
「……!」
星羅の目から。
一粒。
涙が落ちる。
「……ずるい」
「何が?」
「そんなこと言われたら」
星羅は。
笑いながら泣く。
「もっと好きになっちゃう」
「……もう十分好きだろ」
「うん」
即答。
「世界で一番」
「……」
「宇宙で一番」
「……大げさ」
「本気だよ」
星羅は。
玲の肩に頭を預ける。
「だから」
「……」
「私たちの邪魔をする人には」
小さく。
しかし。
はっきりと。
「絶対に負けない」
――その頃。
学校の地下。
誰もいない資料室。
一人の人物が。
古いファイルを開いていた。
「……」
そこには。
2017年12月24日の記録。
そして。
玲と星羅の名前。
さらに。
二人の現在の写真。
「……ようやく」
その人物は。
写真を指でなぞる。
「ここまで来た」
ページをめくる。
最後のページ。
そこには。
一つの名前が書かれていた。
――天城星羅。
その下に。
『対象:現在も監視継続』
そして。
さらに一行。
『黒瀬玲との接触を確認』
「……」
人物は。
静かに笑う。
「なら」
ファイルを閉じる。
「次は――」
暗闇の中。
目だけが。
不気味に光った。
「玲くんを奪えばいい」
――文化祭は終わった。
しかし。
二人を巡る本当の戦いは。
今。
始まった。
コメント
1件
星羅ちゃんの「世界で一番、宇宙で一番好き」も、玲くんの「何度でも迎えに行く」も、もう涙なしでは読めませんでした。お互いを守り合う二人なのに、最後の不気味な影が「玲くんを奪えばいい」って……背筋が凍りました。絶対に負けないでほしいです。更新楽しみにしてます🤍