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#青春恋愛
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夏希(なつき)
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奇蹟あい
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翌日。
放課後。
文化祭の片付けを終えた校舎は。
いつもの学校とは思えないほど静かだった。
「……ここか」
玲は。
階段の前で立ち止まる。
古びた扉。
その向こうに。
地下資料室がある。
「玲くん」
「ん?」
「本当に入るの?」
「ああ」
「……」
星羅は。
玲の腕にそっと抱きつく。
「じゃあ、私も一緒」
「最初からそのつもりだろ」
「えへへ」
玲が。
鍵を差し込む。
カチャ。
扉が開いた。
「……暗いな」
「怖い?」
「別に」
「私はちょっと怖い」
「なら戻るか?」
「嫌」
即答。
「玲くんと一緒なら行く」
「……そうか」
二人は。
階段を下りていく。
地下。
空気が冷たい。
壁には。
古い資料棚が並んでいる。
「……すごい」
星羅が呟く。
「学校にこんなのあったんだ」
「俺も初めて知った」
「何から探す?」
「2017年」
二人で。
棚を探す。
「……あった」
玲が。
一冊のファイルを取り出す。
『2017年度・外部イベント記録』
「これだ」
ページをめくる。
イベント名。
日時。
参加者。
そして。
「……」
玲の指が止まる。
「どうしたの?」
「名前がある」
「誰?」
「俺と星羅」
そこには。
『黒瀬玲』
『天城星羅』
さらに。
『要監視対象』
「……」
星羅の笑顔が消える。
「要監視……?」
「どういうことだ」
二人は。
さらにページをめくる。
そこには。
複数の記録。
『接触確認』
『対象同士の接近を確認』
『記憶処理を実施』
『再接触の可能性あり』
「……」
玲の顔が。
険しくなる。
「記憶処理」
「……私たち」
「七年前だけじゃなかった」
星羅が。
ページをめくる。
2018年。
2019年。
2020年。
2021年。
そして。
現在。
「……ずっと」
星羅の声が震える。
「私たち」
玲を見る。
「監視されてたんだ」
「ああ」
その時。
一枚の写真が落ちた。
「……?」
玲が拾う。
そこには。
幼い星羅。
そして。
その隣に。
幼い玲。
さらに。
二人を遠くから見つめる。
一人の少女。
「……美咲」
星羅が呟く。
写真の裏。
『接触担当:美咲』
「……」
玲は。
息を呑む。
「美咲が」
「私たちを監視してた?」
「でも」
星羅が。
写真をよく見る。
「この顔」
「?」
「泣いてる」
確かに。
幼い美咲は。
笑っていない。
むしろ。
今にも泣きそうな顔をしていた。
「……」
星羅は。
写真を見つめる。
「何か理由がある」
その時。
背後から。
「そうだよ」
「……!」
二人が振り返る。
「美咲……」
いつの間にか。
入口に。
美咲が立っていた。
「驚かせちゃったね」
「どうしてここに?」
「あなたたちが来ると思ってた」
「……」
美咲は。
ゆっくり歩いてくる。
「その資料」
「……」
「私も昔見た」
玲が聞く。
「何なんだ?」
「……」
美咲は。
少し迷って。
口を開く。
「昔」
「……」
「私の家族も」
「……?」
「この学校と関係があったの」
玲は。
黙って聞く。
「だから」
美咲は。
写真を見る。
「私はあなたたちを監視する役目を与えられた」
「……!」
「でも」
美咲の声が。
震える。
「できなかった」
「何が?」
「監視なんて」
「……」
「二人が楽しそうにしてるのを見てたら」
美咲は。
笑う。
「邪魔できなかった」
「……」
「だから」
美咲は。
玲を見る。
「あなたたちが再会するたびに」
「……」
「何も報告しなかった」
「……」
「そのせいで」
美咲は。
目を伏せる。
「私の家族は」
言葉を止める。
「……どうなった?」
玲が聞く。
「……いなくなった」
「……!」
星羅が。
息を呑む。
「それって……」
「私が報告しなかったから」
美咲は。
笑った。
でも。
その笑顔は。
泣いていた。
「私の家族は」
「……」
「あなたたちを守ろうとして」
拳を握る。
「消された」
沈黙。
「……」
玲は。
何も言えない。
星羅が。
美咲の肩に手を置く。
「……ごめん」
「謝らないで」
「でも」
「違うの」
美咲は。
首を振る。
「あなたたちは悪くない」
「……」
「むしろ」
美咲は。
二人を見る。
「あなたたちがいたから」
「……」
「私は一人じゃなかった」
その言葉に。
星羅の表情が少し緩む。
「……ありがとう」
美咲が笑う。
しかし。
その直後。
棚の奥から。
カサッ。
紙が落ちる。
「……?」
玲が拾う。
「また資料?」
「見せて」
星羅が覗き込む。
そこには。
『対象:天城星羅』
『危険度:A』
『理由:特殊な影響力』
さらに。
『対象に接触する人物は』
『長期的に対象への依存傾向を示す』
「……」
星羅の顔が。
固まる。
「……何これ」
玲が読む。
「依存……?」
ページの最後。
『黒瀬玲への影響:特に強い』
「……」
玲と星羅。
二人とも。
言葉を失う。
「私が……」
星羅が。
自分の手を見る。
「玲くんを」
「星羅」
「私が」
「……」
「玲くんを依存させたの?」
玲は。
首を振る。
「違う」
「でも」
「俺が選んだ」
「……」
「お前の配信を見たのも」
「……」
「お前を好きになったのも」
「全部俺だ」
星羅の目に。
涙が浮かぶ。
「……玲くん」
「だから」
玲は。
星羅の手を握る。
「お前のせいじゃない」
「……」
星羅は。
玲の手を握り返す。
「……よかった」
「?」
「もし玲くんが」
星羅は。
涙を拭う。
「私のせいで好きになったんだったら」
「……」
「嫌だった」
そして。
玲を見つめる。
「私は」
「……」
「玲くん自身に」
「……」
「私を選んでほしいから」
玲は。
静かに答える。
「なら」
星羅の頭に。
そっと手を置く。
「俺は何度でも選ぶ」
「……!」
星羅の頬が赤くなる。
「……もう」
「何?」
「そんなこと言うと」
星羅は。
玲の胸に顔を埋める。
「本当に離れられなくなる」
「……離れるつもりない」
「……」
星羅は。
玲を抱きしめる。
そして。
誰にも聞こえない声で。
「……絶対に」
「……?」
「絶対に、誰にも渡さない」
その瞬間。
地下資料室の奥。
古いスピーカーが。
突然。
点いた。
『――資料を見つけたか』
「……!」
玲が振り返る。
「誰だ!」
『天城星羅』
星羅の名前。
『君が知る必要はない』
星羅の目が。
鋭くなる。
「……私のこと知ってるんだ」
『当然だ』
「なら」
星羅は。
玲の前に立つ。
「玲くんには触らないで」
『……』
「私から」
玲の手を握る。
「絶対に奪わないで」
『……狂っているな』
「ええ」
星羅は。
微笑む。
「玲くんのことになると」
「……」
「私は昔から」
その瞳に。
濃い愛情が宿る。
「狂ってるの」
スピーカーから。
しばらく沈黙。
『……なるほど』
『やはり』
『対象への影響は――』
そこで。
通信が切れた。
「……」
玲は。
星羅を見る。
「大丈夫か?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
星羅は。
玲の手を握る。
「玲くんがいるから」
――そして。
資料室の最奥。
誰も触れていない棚が。
ゆっくり開いた。
その奥に。
一つの黒いファイル。
表紙には。
『天城星羅・黒瀬玲』
そして。
その下。
『最終観察記録』
美咲が。
顔を青ざめさせる。
「……これ」
「どうした?」
「開けないで」
「……?」
「それだけは」
美咲は。
震えながら言った。
「それを開いたら」
「……」
「二人が今まで信じてきたもの」
目に涙を浮かべる。
「全部、変わるから」
玲は。
黒いファイルを見つめる。
そして。
ゆっくり。
手を伸ばした。
――第三章。
最大の秘密が。
今。
開かれようとしていた。
コメント
1件
いやあ、第49話、めちゃくちゃ重かったですね……。地下資料室のひんやりした空気が伝わってくるような描写から、美咲の過去、そして「依存傾向」の記録まで、伏線が一気に回収されていく感覚がたまらなかったです。特に「私の家族は消された」という美咲の告白と、それでも「あなたたちがいたから一人じゃなかった」と言える強さに胸が熱くなりました。最後の黒いファイル、開けたら本当に全部変わるんでしょうね……続きが気になって仕方ないです。