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はっとして、思わず立ち上がる。
綺麗な音だった。
リンシィーは聞いたかと、振り返ると既に寝床へはいって眠りについていた。
聞こえているはずもないか。
一先ず、辺りを警戒しつつ、古屋の中へそっと入っていった。
寝ているリンシィーを見守りながら、長い間辺りを見渡していた。
だが、何も起きなければ、もう一度あの音がする事もない。
段々とリンデェンにも眠気が襲ってきた。
ここ数日、忙しかった為、瞼が落ちてくるのが感じられたが
眠気に抗う気もなく、静かに眠っていった。
朝目を覚ますと、太陽が完全に登る前だった。
壁にもたりかかりながら、寝ていたことに気がつく。
隣を見ると、リンシィーがまだ眠っていた。
きっと疲れているのだろう。
起こさぬようそっと立ち上がり、古く固くなった扉を開けた。
外の空気は澄んでいる。
深く息を吸って吐くと、明け方の暖かい風が隣を去っていった。
古屋周辺の散策へ行こうと思ったその時、後ろから声がした。
「デェン師、目覚めが早いですね。」
リンシィーだった。
「おはよう。起こしちゃったかな。」
「いえ。ちなみに、何処へ? 」
リンシィーが目を擦りながら聞く。
「散策へ行こうかと思ったけど、まだいいかな。少し顔を洗おう。」
ここに来るまでに、一つ川を見つけた。
清い川で、粼が照らされた静かな水。
そこで少しさっぱりしたかった。
「はい。ついて行きます。」
そういうとリンシィーは、リンデェンへ寄っていき、一緒に近くの川へ向かった。
軽く顔を流してスッキリしたあと、リンデェンはあくまでも自然に聞く。
「昨日、風鈴の音を聞かなかった?」
聞いているはずもないか、という思いで聞いたまでだった。
「いえ、全く。デェン師は聞いたのですか?」
その問いに答えることはなく、あっさり流して返事をした。
それに深く突っ込む訳ではなかったが、リンシィーは不思議 と言った様子だった。
朝食を済ませ、すべきことを終えると、個々に
活動を始めた。
リンデェンは、周辺の散策へ。
リンシィーは、古屋修復に必要なものを調べているようだった。
リンデェンは、一人にするのは心配なところもあったが、彼女はもう一人の大人だということを思い出す。
弟子というのには、こんなにも思い入れがあるものだろうか。
周りの様子を見ながら、道という道は無いものの、道を進んだ。
神力がほぼ無いに等しい今では、神らしいことは何一つできず、徒歩で進む。
それはそれで、新鮮だった。
進んで行くと、森の奥へ来たのだろう。
辺りから、様々な音がする。
近くで流れる川の音や、鳥のさえずり。
兎や鹿だろうか、足音もする。
長い間歩いて地に座ろうとしたとき、目の先に
不自然に一つ、切り株を見つけた。
ポツンと、周りには気など何も無く、まっさらな周辺に違和感を覚える。
だが、切り株へ腰を掛けることにした。
涼し気な風がリンデェンの横を過ぎ去る。
森の中にしては、相当手入れされているように思えた。
草木が腐る部分はひとつも見かけられず、花も綺麗に咲き誇っている。
少し休んだあと、リンデェンはまた歩き始めた。
先程来た所から、真反対へ 辺りをを見渡しながらゆっくり進む。
近くに家があるのではないか?
そう思っていた。
ここは、人が居ない程の奥町ではないのだろう。
この森を手入れしている誰かがいるはずだと、
リンデェンは考えている。
それから長い間歩いていくと、だんだん陽の光が強くなってきた。
木の葉の影で、少しはマシなものの、やはり体温が上がってきているのが感じられる。
少しづつ休憩しながら歩いていたが、やはり
体調があまり良くないようだ。
段々と目の焦点が合わなくなっていく。
しまったことに、水はもうない。
全てを、リンシィーにあげていたからだ。
お昼を過ぎた頃だろうか。
結構な間、木にもたれかかって休んでいた。
だが、意識が薄れていく。
息すらしづらく、苦しい。
朦朧とする意識の中、心配なのは リンシィーのことだった。
もしここで自分が倒れて、最悪動けなくなった場合、リンシィーはどうするのだろうか。
一応、昔からの教えで
“私が万が一動けなくても、決して探しに来なくていい。”
とは伝えて置いてあった。
結局、自分なんてどうでも良いし、
探索でもしたせいで、リンシィーが同じ目にあったら
それこそ最悪の事態だ。
リンシィーが教えを守ってくれるかは、分からない。
覚えているかどうかも曖昧。
ただ動けない中でそんなことを心配していた。
それから、リンデェンは知らぬ間に、
意識を失い、倒れていた。
目を覚まし、辺りを見渡すと目の前には
リンシィーがいた。
どういうことだろうか……
理解ができなかった。
まさか、リンシィーが
自分を見つけたのだろか?
そんな考えは一瞬で過ぎ去ったが、頭の中が混乱して理解できなかった。
「デェン師……目を覚ましましたか。」
そういうリンシィーの顔を見て、夢では無いのか と改めて思う。
「ええと……うん。」
まったく状況が分からないまま、適当な返事をし、起き上がった。
外を見れば、月が光っているのが見える。
「安静にしていてください。」
そう言いながら、
リンデェンをまた床へ寝かせた。
されるがままに、横になる。
「リンシィー、迷惑をかけてすまない。
私は何を?」
申し訳なさそうに謝る姿を見て、リンシィーは
ハッキリと答えた。
「迷惑ではありません。ただ、とても心配したんですよ…… ほんとにもう。」
怒っているのだろうか?
普段、見たことの無い顔をしているリンシィーを見つめていた。
「本当にすまない。気をつけるよ。」
何を気をつければいいのかさえ、分からなかったが流れるままに返事をした。
「今日のことは私も不思議なことが多いので、明日、話しましょう。
とりあえず、デェン師は安静に。」
リンシィーは、横になっているリンデェンに
薄い布をかけてくれた。
こんなもの、持っていただろうか?
そうこう考えているうち、知らぬ間に眠りについていた。
次目を覚ました時、外はまだ明るくはなく
朝になる前だった。
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