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横になってから、寝るまで早かった為、
いつもあまり寝ないリンデェンには、目が覚めてしまった。
開きっぱなしの扉から、静かな夜風が流れ込んできている。
リンデェンは起き上がり、外へ出た。
少しの間、夜空を眺めていると、 何か音がしたような気がした。
思わず、「誰だ。」と声を出す。
ただ、返事は無く、静けさが残る。
風の音や、木々が掠れる音でもなく、あれはしっかりと何かの
足音だった。
警戒しているものの、なにもない。
少し気が緩んだ時、遠くからまた音がした。
今度は先程のような足音ではない。
昨晩聞いたあの音だった。
チーン┈┈ というあの音。
綺麗な 風鈴の音。
はっとして、後退りをした。
すると、風がリンデェンの真横を過ぎる。
これは一体、誰の仕業なのだろうか。
もしや、鬼ではないか?
という考えが、頭の中いっぱいに広がる。
その説が、1番濃厚だった。
本来そこらにいる鬼なら、知能という知能も持ち合わせて居ないため、
直ぐに襲いかかってくるのだろう。
だが、これが鬼だとするなら、少なくとも知能はあるだろうし、目的も分からない。
こんな力の無さそうな人間二人など、襲いかかれば一瞬だ。
なにかの暗示ではないか。
それにしても、訳が分からない。
困惑するばかりだった。
ただ、その一度の音から、もう一度なにか音がすることはなかった。
万が一のため、リンシィーを守る体制でありながら、何も起きない。
リンシィーが起きるまで、それほど時間は立っていなかった。
辺りが明るくなり始めた頃、横にいたリンシィーが目を覚ました。
「デェン師、起きていたのですか。体はもう大丈夫なのですね。」
リンシィーはほっと息をつく。
それを見て、リンデェンが言った。
「迷惑をかけたね。悪かったよ。
話したいことがあるから、することが終わったら、時間を良いかな。 」
それに対し、もちろんです と言うと、外へ出ていった。
その姿をみて、リンデェンも息をつく。
椅子へ腰をかけた。
昨日のは一体、なんだったのだろうか。
記憶があるのは、意識を失う前と、目を覚ましたあとから。
不思議な感覚がした。
リンシィーの言い方的にも、彼女が見つけた訳でも、運んできた訳でもないのだろう。
ただ、ここまで歩いてきた記憶もない。
だとしたら、何が起きている?
何者かがここまで、運んできてくれたの だろうか。
なら、何故、姿を表さない?
悩むばかりだった。
頭を抱えていると、リンシィーが外から帰ってきたようだ。
「お疲れなのでしょう。休んでいますか?」
心配なのが、顔全面に出ていた。
「いや、大丈夫だよ。それと、聞きたいことがあるしね。」
リンシィーは、向かって椅子に座る。
「私も不思議なことが多くて……。
お話を聞きたいと思っていました。」
リンデェンは慎重に思い出しながら、順序を整理して話していく。
「昨日散策へ出ていって、長い間歩いた後、
脱水だろう。立ち上がれなくった。 」
その時、喉が乾き始めてから体がだるくなっていく感覚がまだ残っていた。
「それからの間、木陰で休んでいたんだれけど、回復できなくてね。
意識を失ってしまったと思う。」
切り株のことは言わなかった。
なんとなくだが、言わないでいた。
「次に目を覚ました時には、床で眠っていたよ。リンシィーが、私のことを見つけてくれたのかと思っていた。」
以上だ と話を区切った。
それを聞いて、リンシィーは何かを考えているようだ。
数秒後、話し始めた。
「そうですか。ただ、私はデェン師を森の中で見つけた訳ではありません。
外へ出た時、庭園にて横になっていました。」
なら、
どうやってここまでたどり着いたのだろう。
リンデェンが自分の足でここまで来た可能性は捨てきれなかったが、%で考えても
あまり現実的ではない。
ただ、それじゃないければ、説明がつかなくなってしまう。
「誰かがここまで……ということですか。」
リンシィーの言葉に、頷いた。
歩いてきた記憶は一切ないのだから、誰かが
なにかを としか考えられない。
「ですが、一体誰が…何の目的で?」
「それが不思議なんだ。」
互いに、色々な考えをめぐらせている。
でも、現実的な考え 可能性はひとつも浮かばなかった。
そもそも、この事態が現実的ではないためである。
リンデェンは突然、
「あ」
と一言発した。
それにリンシィーさ即座に反応する。
「関係ないかもしれないが、まだ空がくらい頃に、足音をひとつと風鈴の音を一度。
昨日は、明け方に一度、風鈴の音を聞いた。」
関係があるかもしれない、と。
リンシィーには、足音 という単語よりも風鈴 という言葉に反応していた。
足音などと言えば、もしかしたら勘違いで済む話だが、
風鈴の音となれば、聞き間違えるわけも無い。
「関係あるかもしれませんよ。そういうことは、出来るだけ早く……」
説教が続きそうだと察し、リンデェンは早めに話を巻き上げた。
「嗚呼、そうだね。気をつけるよ。ところで、リンシィーはどう思う? 」
リンデェンが挟んだ話を聞いて、すっかり静かに考え始めた。
「確実に関係がある、とは言いきれませんが、関係しているはずです。
ただ、何がどう関わっているのか、全く……
検討もつきません。」
こめかみを押さえながら言う。
確かにその通りで、考えようもないことだ。
ただ、関係がありそうだと思っているのは、
2人とも同じだった。
「リンシィーもそう思うか。
今日1日は、音には敏感でいよう。」
そう言うと、リンデェンは立ち上がり、
部屋の掃除を始めた。
それに続いて、リンシィーも席を立つ。
それから2人は個々に作業を分担することにした。