夕闇の中、周りの雑音を閉ざずためにイヤフォンを耳に付ける。
 今日は月に一度の通院の日
 担当医と軽い会話をする、いわゆる精神科というところで先生と体調などの会話をする。
 別に病院に通うことになんとも思っていない。
 ただ"次はこの日に来てください"と言われれば"はい"と応えるだけで、面倒くさいとも思わないし、 無の感情に近い
 しかし担当医からすると、その何にも興味を示さないような無の感情から、俺は相当深く心に傷を負っているんだと言う。
 
 「吉田くん、今日の体調はどうかな?変わりない?」
 
 『普通です。』
 
 「そう。傷も…ある程度は治ってきてはいるけど、腹部のところとかは跡になっちゃいそうだな…」
 
 『…。』
 
 「最近はどう?ハマってるものとか」
 
 『特にないです。』
 
 「そっかぁ…。あ、そういえば来る時イヤフォンつけてたけど、何聴いてたの?」
 
 『これといって…ただ流れてきたものを聴いてただけで、 』
 
 「ふ〜ん…最近の歌とかわからないからなぁ俺笑そうだ、Mr.Childrenの終わりなき旅って曲聴いてみて!だいぶ前の世代だけど笑いい曲だから」
 
 『…わかりました。』
 
 「うん!じゃあそろそろ時間だし、次も一ヶ月後にまた来てね!気をつけて帰るんだよ」
 
 『はい。』
 
 今日の分の診療も終わり、病院を出た。
 昔よく褒められていた顔も伸びた前髪で隠して、なるべく人と視線を交わさないように俯きながら道を歩いた。
 多くの人と視線が合うと、当時の事を思い出してどうもお腹が痛くなる。
 
 あ、そういえば先生が言ってた曲でも聴くか…
 終わりなき旅だっけ,,,
 "閉ざされたドアの向こうに  新しい何かが待っていて"か…。
 "新しい何か"が良いこととは限らないのに、、
 
 そんな屁理屈と言わんばかりの事を考えていると、空から雨が降ってきた。
 雨は嫌いだが俺にとって都合が良い
 みんなが傘をさすから顔を合わせなくて済むし一定の距離があく。
 しかし生憎の俺は傘を持ち合わせていなくて、大きな滴が次々と俺の身体を打ち付けた。
 
 そういえば、俺が____時も雨だったっけ…
 あぁ何で今思い出すんだろ…,,
 ほんとに…
雨は嫌いだ____.
 
 シャッターが閉まる店の前で、独り座り込んで雨に打たれた。
 
 「兄ちゃんだいじょぶか〜?」
 
 肩を叩かれ落ちてくる雨に反抗して上を向くと、見ず知らずの人が4人、俺の前に立っていた。
 
 「そんなとこに居たら風邪引いちゃうよ?」
 
 「家は?」
 
 『…。』
 
 「…俺たちの家来るか?」
 
 何も返事をしない俺を強制的に連行すれば、気づけば、1人で住むのには広いくらいの家にいた。
 
 『どこここ…』
 
 「お、しゃべった」
 
 「ここ?俺たちの家。4人で住んでんの。俺は佐野勇斗、そんで右から、塩﨑太智、曽野舜太、山中柔太朗ね」
 
 「はい、これタオル。」
 
 「てか、その前髪鬱陶しくないん?」
 
 そう言って、俺の前髪を払い除けた。
 すると俺の視界が一瞬にして開け、 部屋の光と4人の顔が鮮明に映った。
 
 『まっ,,まって…』
 
 「え…めっちゃ綺麗な顔してるやん!」
 
 「うわっまじか、、タイプかも」
 
 「確かに勇ちゃん好きな顔だね笑てか、君名前は?」
 
 『吉田,,仁人です…。すみません、お邪魔しちゃって…何かお礼…』
 
 「え〜じゃあ、お礼にっちゃなんだけど、俺としよ?」
 
 「ばか!何言ってるん!」
 
 お金でも請求されるかと思った…
 お金はあんまり持ってないし、するだけで済まされるのなら正直助かる。
 
 「勇ちゃんはダメだよ笑あなた危ないんだから!」
 
 「それはさぁ〜」
 
 「俺、この子がそうなるの見たくないわ…」
 
 「ほんとにそう。いくらタイプだからって…」
 
 何をそんなに止めるんだろう。
 危ないって…ヤってる時に殺すとか…?骨を折るとか…?
 意識が無い時に殺してくれるのなら、最早良いかもしれない。
 最悪なのは、散々な目に遭った後に意識があること、生きてたんだって実感すること。
 
 『危ないとは…?』
 
 「この人ね、この間ヤった子に首絞めてさ、その子落ちかけちゃって… 」
「それは頼まれたからさぁ」
 
 「ほんと大変だったんだから!」
 
 「俺そういうのほんまに無理なんよ…」
 
 あぁなんだ…そんなことか。
 
 『…いいですよ。』
 
 「え!?まじ!?」
 
 「ほんまに大丈夫?心配なんやけど…」
 
 『首を絞めようが、蹴ろうが、殴ろうが…特に何とも思わないので』
 
 「は…?」
 
 「なに、そっち系の子?そういう経験あったりする感じ?」
 
 『過去に一度だけ…記憶は曖昧なんですが…』
 
 「えー!?意外!」
 
 「ねぇ、ちょっと待ってバカ勇斗。 」
 
 「おいバカって!なんでよ」
 
 「仁人、1回全部脱いで」
 
 「え?笑なに柔も一緒にする?」
 
 「しないわバカ。いいから、上も下も全部脱いで」
 
 『…わかりました。』
 
 言われた通り、4人の男を前にして素肌を全て晒した。
 
 は…?
 
 to be continued.
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