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昔ながらの青果店『みっちゃんのくだものや』は、目黒駅から少し離れた権之助商店街の一角に店を構えていた。主人の三井拓郎は、店先でパインジュースを人々に配っていた。
奥では妻の霧子と息子の孝明が忙しなく働いている。
時刻は午後4時。
丁度お腹が空いてくるいつもの時間。
拓郎は霧子に声をかけた。
「これ終わらせたらメシ食うよ。アレ食いたい」
「あいよ」
霧子は店奥の居間へと消えていった。
『みっちゃんのくだものや』は大盛況で、フレッシュフルーツジュースは瞬く間に巷で人気となっていた。
それというのも、口コミサイトで美味しいと評判になったお陰だ。
だから拓郎は、ながらスマホの若者には積極的に声をかけるようにした。
今もこちらに向かって駆けて来る、若い眼鏡の女性を見つけて、拓郎は迷わすにフレッシュパインジュースを勧めた。
女性は立ち止まり、一気にそれを飲み干して。
「美味しい!」
と叫ぶと、走り去って行った。
拓郎は、会話をする間もなく駆けて行く背中を見ながら呟いた。
「忙しない世の中だねえ。さ、メシ食お!」