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71 - 第71話 遥那の誤解

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2025年03月29日

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◻︎誤解




やっぱりかと思う。

晶馬君の浮気疑惑発覚というところか。


「あー、さっき、晶馬くんから電話があったよ、心配してた」

「なんか言ってた?」

「誤解を解きたいから、ちゃんと話をさせてくださいって」

「誤解かぁ…」


ココアのマグカップを両手で大事そうに持つ。


「何があったの?」


何か決心したように、スマホを取り出し画像を私に見せた。

そこには、親しそうに並んで歩く男女が写っている。男性は晶馬だけど、女性は誰だろう?

遥那よりは年上?晶馬よりも上に見えるほど大人びた女性だ。


「それが先週友達から送られてきたの、“これ晶馬くんじゃない?”って」

「晶馬くんに確認したの?」

「ううん、確認しても嘘つかれると思って」

「どうして?」

「だって、そういうもんだって友達が言うし」

「そういうもんって、どういうことよ?」


結婚することが決まってこれから先のことを考えたら、もっと遊んでおきたくなったんだろうとその友達は遥那に言ったらしい。

女にマリッジブルーがあるように男にはまだ遊び足りないって思うことがあったり?とか。


「で?遥那自身はどう思うの?」

「わからないけど。結婚しようって決めたあたりから、晶馬君の行動でわからないことが増えた気がして。私が知らない時間に晶馬君が何してるかわからない時があるし」

「で?友達がそんなこと言うから、当の晶馬君にはなにも確認せず飛び出してきたの?」

「…うん。だって、見ちゃったから。その日とは別の日に、晶馬君がその人といるとこを、近所の花屋さんで」


___若いなぁ、この感情の激しさは若いからだろうなぁ


「あのさぁ、遥那。もう大人なんだし、相手の言うこともきちんと聞かないと、話は見えないよ。もしかしたらただの誤解ってこともあるし」

「だって…晶馬くんにその写真見せたら、びっくりしてその後、ちょっと黙っちゃってさ、それって私には言いにくいってことでしょ?それが答えでしょ?」

「それはそうかもしれないけど、言いにくい理由があるんじゃない?浮気とかではなく」

「そんなの、わかんない!」

「わかんないから、ちゃんと話をしなさいって言ってるの。二人で話すのがキツイなら、お母さんが一緒に話を聞くから、ね」

「うん、まぁ、そういうことなら」


私は早速晶馬に連絡して、次の日、外で三人で会うことにした。





次の日の夕方。

家からは少し離れた喫茶店で、遥那と二人で晶馬が来るのを待つ。


からんころんとドアベルの音がして、晶馬がやってきた、あの写真の女性と一緒に。





「えっ!なんで?」


二人が席に着くより先に、遥那が口を開く。


「遥那、落ち着いて、ね!とりあえず、コーヒーでいい?」


二人分のコーヒーを注文してから、話を始める。


「遥那、誤解させてごめん、今日はちゃんと説明するから話を聞いて」

「……」

「ほら、遥那、ちゃんと晶馬くんと向き合って!」

「…うん、聞いてる」


その間に、バッグから名刺を取り出して遥那の前のテーブルに置いた女性。


【フラワーアレンジメント講師:北澤スミレ】


「はじめまして、北澤スミレと言います。市のカルチャーセンターでフラワーアレンジメントの講師をしています」


遥那は何も答えない。


「…で、こちらが僕の婚約者、田中遥那、それから遥那のお母さん」


晶馬が私と遥那をその北澤という人に紹介する。


「でもって、この北澤スミレは、僕の姉です、実の姉弟です」

「は?」

「え?」


私と遥那はほとんど同時に間の抜けた声を出した。


「ちょっとどういうこと?お姉さんって?」

「遥那、ごめんね、ちゃんと話してなくて。僕は父の連れ子なんだ、父は再婚してて。本当のお母さんは別にいる、もう亡くなってしまったけど。両親が離婚する時、姉ちゃんはお母さんと、僕はお父さんとに離れたんだ」

「そう…だったんだ…」

「最初に話しておけばよかったんだろうけど、ちゃんと結婚する時に話せばいいかな?と思って遅くなってしまった、ホントごめん、誤解させてしまって」


テーブルに両手をついて頭を下げる晶馬。


「あの、晶馬は悪くないです。私が“晶馬が結婚する時には花嫁さんにブーケを作らせて欲しい”とずっと昔、言っていて晶馬はそれを憶えていてくれて。結婚が決まったからブーケを作ってほしいと言われたので、それで会ってました」


「なんだ、そういうことだったの。誤解だったのね、遥那の」

「…ごめんなさい」

「いや、悪いのは僕だから。できればサプライズとしてブーケを贈ろうとして、内緒にしてたからね。それに、ブーケだけじゃ物足りなくなってしまってこれも…」


そう言ってカバンから取り出したパンフレットには、色とりどりのバルーンの写真があった。


「このバルーンの仕事も、姉ちゃんがやってるって聞いてさ、これもお願いしようと思ってたんだよ。で、これも内緒にしてたから、よけいな心配させちゃったね、ホントごめん。お母さんにも心配かけちゃって、すみませんでした」


晶馬の姉だというスミレも、一緒に頭を下げる。


「安心したわ、よかった。あ、ねー、このこと晶馬くんの…お母さん、もちろん今のね、知ってるの?」

「知ってます。会ったこともあります」

「じゃあ、結婚式にも招待するんでしょ?血のつながった姉弟なんだから、当然よね?」

「はい、遥那にもきちんと紹介してそのつもりでした」

「てことは、何も問題なし!だね。だけど」


私は遥那に言っておきたいことがあった。


「遥那は、友達からの情報だけを信じようとしたことは反省しなきゃね。友達に悪気はないかもしれないけど。遥那は自分というものをしっかり持って。誰を信じるのか決めたら疑わないこと」

「うん…わかった」


「それから、晶馬くん、隠し事をしたいならきっちり隠し通すこと。それができないなら隠さないこと。今回のことで分かったと思うけど中途半端な隠し事は、相手を傷つけることがあるからね」

「そうですね、これからは隠し事はしないようにします」



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