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「親父・・。今日ここに来てもらった意味はわかってるよね?」
すると、樹が早々に話を切り出そうとする。
「・・・・望月さんは、うちの仕事好きですか?」
するとなぜか社長は樹のその問いかけに答えず、まさかの私に問いかけて来る。
不意打ちに私に話が振られると思っていなくて驚いてしまう。
「えっ?あっ、ハイ。会社の商品。実はずっと好きで憧れてて。持ってるだけで楽しくなったり幸せになったりする商品を今自分が作れていることが嬉しいし、やり甲斐ある時間を過ごせています」
「そうですか。では、うちの仕事を気に入って頂いてるんですね」
「ハイ。夢ある時間だなって思います。理想として描く商品がどんどん形になっていくのはワクワクするし、それをたくさんの人が手に取って笑顔になったり、私みたいにずっと好きな気持ちを持ち続けていられるモノを作れるって、すごく素敵で幸せなことだなって思います」
「うちの商品や仕事を愛してくださってると・・」
「ハイ。学生時代からお金を貯めて一つずつここの商品を集めていくのが嬉しくて。それを手にするまでの時間もそれを手にしてからの時間も、どれも私にとって楽しい時間で。そういう気持ちをずっと大切にしていけるこの仕事に今は誇りを持っています」
「だから今うちの会社にとって、あなたは頼りになって必要な存在だということですね」
「ただ・・私は好きな気持ちを大切にしているだけです。でも、入社してしばらくしてからは全然上手くいかなくて、思うような結果も出せず、正直ここまでの気持ちにはなれていませんでした。でもその時の支えになったのが、REIKA社長のブランドのネックレスでした」
「もしかして、前に言ってくださった自分へのご褒美に買ってくださったって言ってたやつかしら?」
「ハイ。そうです。憶えてくださってたんですね」
前にパーティーで少し話していたことをREIKA社長が憶えてくれていたことに感動する。
「ええ、もちろん」
「その時もお話させて頂いてたんですが、自分で買ったそのネックレスは私にそれから頑張る力や勇気をくれて。そしてそのネックレスが似合うような自分になりたい、自分を好きになれる自分でいたいって思えるようになりました」
「そのお話を聞いて、私もこのアクセサリーと共に届けたい想いがちゃんと届いてるのだと思えて嬉しかったわ。一人でも多く私と同じように自信を持って輝いてほしいと願って届けていたから」
「はい。なので私にとってY&Rの商品もREIジュエリーのアクセサリーも、自分を笑顔にしてくれて輝かせてくれる大切なモノです」
自分で言葉にして、少し胸が震えた。
私自身に力をくれるモノが、こんな風に繋がっていたことに。
今大切に想っている人と、こんな形で繋がれていたことに。
ずっと私の胸を熱くするモノ、そして今私の胸を誰よりも熱くする人。
樹を好きになるのもやっぱり必然的だったのかもしれない。
どうやったってきっと樹に繋がっていたはずだから。
「そして今は樹さんと一緒にいれることで、自分が自分らしくいれて好きでいることが出来る。樹さんと出会えたこと本当に幸せだと思ってます」
そう。樹が今の自分に変えてくれた。
樹と出会えただけで、樹を好きになれただけで。
きっと私はそれだけで幸せだ。
「この人がオレが今大切に想っている人でこれから幸せにしたい人」
そして私の言葉を聞いて、樹がそう伝えてくれる。
「昔はどうしようもなかったオレが、今こうやってちゃんと変われたのは彼女のおかげ。彼女がいなかったらオレはきっとまだ親父とこんな風に向き合えてもないし、母さんの力になることさえも出来なかった。どうやっても自分を好きになれなかったオレが、彼女と出会えて初めて自分という存在を認めてやれるようになった。彼女はオレにとってかけがえのない存在」
樹の一つ一つの言葉が胸に響いて。
隣でその想いを聞けるだけで、もう胸がいっぱいになる。
「だから。・・彼女との・・透子さんとの結婚を、どうか認めて下さい」
樹はそう言いながら頭を下げる。
「お願いします」
そして私も頭を下げてお願いする。
だけど、社長はそれを見ながらも、しばらく黙っていて。
「仕事はどうされるお考えかな?うちとしては、あなたにはそのまま続けて頂きたい」
ようやく口を開いたと思ったら、そんな言葉を投げかけられる。
「それはもちろん!まだまだ仕事頑張りたいです」
仕事は好き。やり甲斐もある。
まだまだやりたいことがある。
きっとそれは樹もわかっているし、私たちには何も問題ない。
「透子は仕事しててこそ、また一段と輝いていられる人だから」
そして樹がそう伝えてくれる。
やっぱり樹わかってくれてた。
だけど、この流れでその問いかけはどういうことだろう。
私のこの答えは正解なの・・・?
「優秀であるあなたには会社としては、このままもっと活躍して頂きたい。ですが、樹の相手となると、また話は別です」
それは・・一体どういう意味として・・?
仕事をこのまま続けているなら樹との結婚は認めてもらえないってこと・・?
「親父。それどういう意味?オレと結婚してから、彼女がこのまま仕事で活躍して何の問題があるワケ?まさか、仕事を辞めて家を守れとかそんな古臭い考えで言ってるんじゃないよね?」
社長の言葉の真意がわからなくて、何も答えられずにいると、樹が代わりに少し怒ったように言葉を返す。
そういうこと・・・?
じゃあ私がこの会社で仕事を続けてる以上、樹の相手には認めてもらえないってこと・・・?
だからずっと社長が選んだ人を樹の結婚相手に選んでたってこと・・・?
だったら、私はどうする・・・?
私はどうしたい・・・?
仕事は順調で、ようやく今ここまで積み重ねてきた経験と実績が認められて、それなりのポジションにいれて。
まだまだこれからやりたいこともある。
まだまだ仕事を頑張っていきたい。
だけど・・結婚は・・
結婚がしたいワケじゃない。
樹とこれからもずっと一緒にいたいから。
だから結婚したいと思った。
樹だから結婚したいと思った。
だったら、もしどちらかを選べと言われたら・・
私はどうする・・・?
そんなこと考えてもいなかった。
だけど・・・
今の私の気持ちは・・・。