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「総務大臣の平山夏生ですが、電波法改正推進委員会きってのタカ派なのはご存知ですか?東京ジェノサイド以前の話にはなりますが、タレントやスポンサーへの会社ぐるみの性接待疑惑で、さくらテレビは放送免許取消し寸前までいきましたが、それを止めたのは、平山夏生を含めた旧通産省の亡霊達なんですが、御存じでしたか?」「ああ、知ってるよ。だけど結構じゃないか、テレビ局が破産となったら大ごとだよ。失業者が大量に溢れ出るじゃないか。お台場だけじゃなく、地方に至るまで路頭に迷う連中は大勢いるだろうよ。それで…何が言いたい?」
「幣原さん、私もあなたと同じ思いを共有しているんです。この国は生まれ変わるべきだ。自らの足で、自らの智慧で、国際社会と対等に渡り合わなければならないと思っています。私たちの祖国を作り上げるのは、国民の純粋な心であって権力ではない。幣原さん、日本はいつまで敗戦国なんですか!?あなたの力を貸してください防衛大臣として。共に未来を創っていこうではありませんか!?」
「なるほど…なるほど…厄介なのはマスコミかな?」
「そうです!」
「なるほどねえ…」
「現在テレビが占領している帯域を含めて、電波オークション導入の法案を検討中です。その為の平山起用ですが、これはあくまで隠れ蓑に過ぎない。我々は、さくらテレビを買い上げて、国営放送へ切り替えたいんです」
「NHKはどうする…」
倉敷は勿体ぶりながら、腕組みをした。
幣原は完全に倉敷の策略に陥ったのだ。
それは、底なし沼のように深く、粘着質を持って人の欲望を刺激し開花させてしまう術であった。
「なあ、倉敷くん…」
「はい」
「ゼロからのスタートってわけだね」
「勿論です」
「あの焼け野原を、君たちは知らないだろう…大戦後、この国は焦土と化したんだよ…空を見上げるとだね、あいつらの攻撃機が飛んで行くんだ。爆弾落とした後にだね、グワアーっと音を立てて飛んで行く。その機体にはだね、裸の女の絵やふざけたキャラクターが描かれてる訳だ!」
「はい…」
「これがアメリカなんだよ、私は痛感したね…」
「…」
倉敷は沈黙を貫いた。
幣原は、体勢を整えながら笑みを浮かべて、
「いやあ、なかなか気に入ったよ」
「有難うございます」
「今度はGHQなんざいない訳だね、我々が再建する訳だこの国を」
「おっしゃる通りです!」
幣原は立ち上がり、壁画の妖精たちを指でなぞりながら言った。
「東京ジェノサイドが幸いだったって訳だね。予期していた展開ってことかな?」
嫌悪される静寂とは、こういう空気なのだろうかと倉敷は考えた。
其々の時間軸が、人生をあらぬ方向へと誘う恐怖に、身震いしながらも酔い痴れていく。
これが人間の業なのだ。
ならば流されつつも、従順に見届けなくてはなるまい。
倉敷は、
「御冗談を…」
と、笑みを浮かべて言った。