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千愛のおやつに作ろうと思っていたフライパンで簡単にできる食パンラスクを、直美さんを待つ間に作ることにした。
いつも15分くらいで出来るけど、量を増やしたから20分くらいで完成。
千愛の分を取り分けて、あとはたっぷりとお皿に盛っておく。
しばらくすると車の音が聞こえて、それからすぐ直美さんが来た。
「着替えたの?」
「はい、このあと新幹線に乗るので」
「あっちに帰るってこと…ね?帰る、であってる?」
何か月か前と同じ場所に座った彼女の前に、コーヒーを置きながら聞くと
「はい。実は私、離婚しました」
と、直美さんははっきりと言った。
「離婚……?」
「ぉっと…はい…」
びっくりした私が持っていたお皿が傾いたのを支えた直美さん。
そのまま手に乗った3センチ角のコロコロラスクを
「いただきますっ」
と口に入れる。
「美味しい。風子さんが作ったんですか?」
「そう…今ね」
「今?これ食パンですよね?私にもできます?」
「フライパンで簡単にできるわよ。それは、あとで教えるとして…離婚…?」
「はい…離婚しました。やっと成立して、今日は荷物を取りに来たんです。私と亜優の服とか、アルバムとか幼稚園や学校の工作とか…手元に残したいから…引っ越し業者さんにパッキングしてもらって。最後に自転車を乗せてもらいました。電動自転車、高いし新しく買えないんで」
最後は明るく言う直美さんに
「そう…理由は…普通聞くものじゃないけど……あんなに仲良くて、ここに引っ越しして数か月で…本当にわからないわね…」
私は理由を聞こうと思ったけど、聞くものでないと思い直してコーヒーを一口飲んだ。