テラーノベル
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~公園~
奏side
ふわぁ~…
間抜けなあくびをこぼし、私は透明な傘を差し、
父がいる病院へ向かう。
今日は、あいにくの雨。
雨は嫌いではない。父と公園で傘を差し、
雨音を聞いた記憶があるからだ。その時の父は、いつにもまして嬉しそうに、
微笑みをこぼしていた。
そして、父は、私の為に
『雨の日君とみた優しい噴水』という曲をつくってくれた。
そんな懐かしい記憶に、苦笑しながらも、病院につき、
塗れた傘を傘用の袋に入れる。
ガラガラ_と、病室のドアをあける。
「お父さん。来たよ。」
静かに眠る父に、ぽつりと言って椅子に腰掛ける。
「最近、友達の為に、曲をたくさんつくってるんだ。」
「お父さんにも、聞いてほしいから、PCもってきちゃった。」
ぽつりぽつりと、つぶやき、
パソコンを起動させる。何十、何百もの曲が入ったファイルをクリックし、
出来るだけ、小さい音で、音を流し始める。
「今回は、雨の音を表現したんだよ。覚えてる?お父さん」
「あの雨の日、噴水の縁に座って、ただただ雨を聞いてたの」
「その出来事を、この曲に入れたの。暖かい音になったかな?」
もちろん返事はない。だが、沈黙が続かないように、必死で言葉をつなげる。
「雨って、冷たいけど優しいんだよね。」
その言葉に、父の腕はピクッと動いた気がした
「またくるね。」と、微笑み、私は、病室をでた。
プロローグ:雨の日の噴水
『完』
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