コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「こはね、お待たせーー、、!」
数え切れないほど聞いた、明るくて力強い声。
杏ちゃんだ。
「あ、杏ちゃん!今来たばっかりだから、大丈夫だよ!」
「そう?よかった!じゃ、始めよっか!」 「うん!」
杏ちゃんが、音楽を流す。その瞬間、胸がドキドキする。
歌っている 瞬間が、私は大好き。
この時だけは、『生きてる』って思えるんだ。
そう思っていたら、杏ちゃんのパートが始まった。
杏ちゃん、本当にかっこいい。
私が落ち込んでるとき、誰よりも早く気づいてくれたり、優しく励ましてくれたり。
杏ちゃんだったら、こんなふうに悩むこと、あるのかな…?
「次はこはねの番だよ!」と、杏ちゃんが目で合図を送ってくれる。
なるべく悩みたくない。そんな思いも込めて、大きく息を吸う。
その時だ。
「…………ッ?!」
声が、出ない。
「、、、!?――!!」
杏ちゃんが、すぐにカバーしてくれた。
それも、すごく苦しそうに…。
なんで、どうして、歌いたいのに。こんな時に。
歌詞を忘れたわけじゃない。
本当に、喉に力が入らなくて、空気になって消えてしまうような感覚なんだ。
「ちょっとストップ。一旦音楽止めるね」
「……うん」
どうして私は、悩み事なんかでこんなことしてしまうんだろう。
「こはね、大丈夫?喉調子悪い?」
「ううん、大丈夫だよ。ごめんね、少し休むね。」
どろっとしたもやもやが、頭の中を埋め尽くした。