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健太が家に着いたのは夜七時頃、それから食事をして、ミエを家まで送って、シャワーを浴びて出てくると、向かいのアパートに電気がついた。彼は早速出かけていった。

「もう大変だったさ。アッチの街からこっちの街へ連れてって、海辺のプロムナードで買い物に付き合わされたり、ステーキハウスにまでついてったよ。食事はおごってくれたけどさ」森さんはくたびれた顔をしながら笑った。

健太はファイヤーバードについて聞いた。森さんは煙草を取り出し、足を組んだ。

「俺の小型車じゃ、アメリカンドリームっていうのかなぁ、そういうイメージがないんだよ。どうせお客は、そういう幻想食うために旅してんだろ」

緑の大型スポーツカーはルームメイトから借りたのだそうだ。

「でもさ、あんな重い、でかい、ガス食う、よく壊れる中古車だったら、こっちじゃ普通二束三文で買い叩かれるよね」と健太は言った。

森さんは煙草に火をつけた。

「そんなの旅行者にゃ関係ないさ。そのでかさが逆にいいんだよ。勝手に大きな夢を見てくれる」

健太と森さんはファイヤーバードを、持ち主不在のまま勝手に「ドリーム号」と名づけた。

「ところで、やっぱ会社名ないとまずいな」森さんは組んでいた足を入れ替えた。

「えっ? か・い・しゃ・め・い」

「今日聞かれて困った。適当言やぁいいんだけど、とっさだったから思いつかなかったんだよ。別な話してごまかせたからよかったけど」話しながら、森さんは額に手を乗せた。

確かにこの「活動」は収益を生んだ。事業と言えば事業ということになるのか。

「でも会社にするには、よくわかんないけどいろんな手続きが必要なんじゃないの」と健太は言った。

「形なんてどうでもいいんだよ。でも、名前は必要だぞ」

健太はガタつく古ぼけた椅子からおもむろに立ち上がった。窓越しに、彼のアパートのリビングが見えた。確か今夜の上映会は政治物だと聞いていたが、画面にはブラジャーをはずした女性が映っている。ブラウン管の前には、ツヨシが張り付くようにして座っている。

森さんは新しい煙草を取り出した。

「で、どうすんのよ」

「じゃ、ドリーム・トラベルってどうかな」

健太は苦し紛れに答えた。森さんは煙草をケースに戻した。 

ハーバー共和国 (Ⅱ)

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