テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
2回目の土曜日。
宮舘(幽霊)が指定してきたデートスポットは、水族館だった。
前回と同じ待ち合わせ場所に集まった二人は、そのまま電車に乗り込み、最寄り駅へと向かった。
.
.
.
.
.
💛「あのさ…」
ガタゴトと揺れる車内、岩本は張り詰めた面持ちで口を開いた。
🔴「ん?な〜に?」
前回の別れ際に幽霊から言われた『今度はもっと楽しませてね』という言葉が、脳内にリフレインしていたからだ。
💛「――って、ことがあって……」
本来、岩本はそこまでお喋りなタイプではない。
🔴「うん、うん」
けれども全ては宮舘の身体を取り戻すため。
💛「――だったんだけど……」
必死に頭をフル回転させて話題を探し、不器用ながらも出来る限りの会話を続けた。
💛「……結局、違ったみたい」
🔴「そうなんだぁ♪」
幽霊はそんな岩本の努力を面白がるように、時折クスクスと笑いながら相槌を打っていた。
.
.
.
駅から少し歩き目的の水族館へと到着する。
一歩足を踏み入れると、館内は青い灯りに照らされていた。
幻想的で、薄暗い空間。
💛「(……こっからが本番だ)」
岩本が身を硬くする。
その時、隣を歩く宮舘(幽霊)が、おねだりするように右手を差し出してきた。
🔴「照。手、繋ごうよ♡」
💛「……あぁ」
宮舘の身体を傷付けないため、岩本は拒むことなくその手を握る。
🔴「違〜うっ!」
💛「え?」
宮舘(幽霊)は不満げに声を尖らせた。
🔴「こう、だよ♡」
ギュッと一度、手が離された。
しかし、今度は指と指を深く絡ませて強引に『恋人繋ぎ』へと変えられた。
💛「…………」
🔴「えへへっ♡」
掌から伝わる宮舘(幽霊)の体温。
どこかで自分達を見守っているはずの目黒や渡辺への申し訳なくなる。
💛「(……二人共、……ごめん)」
その苦しさで岩本は一瞬、表情を歪めた。
🔴「照、行こっ!」
💛「……わかった」
それでも、デートは続いていく。
.
.
.
大きな水槽を泳ぐ魚たちを眺めたり。
🔴「照!見て見て!」
💛「……綺麗、だな」
ヨチヨチと歩く愛らしいペンギンに癒やされたり。
🔴「可愛い〜♡」
💛「(……可愛い)」
迫力あるイルカショーを特等席で観賞した。
🔴「凄かったね〜♡」
💛「…そうだな」
最初は難しい顔をしていた岩本も純粋に目の前の景色を楽しんだ。
時間が経つにつれ、いつしか緊張が解けて自然な笑顔が零れるようになっていた。
❤️「照!次、あっち♪」
💛「おいっ、引っ張るな、って…!」
ひと通り館内を回り終え、最後にお土産コーナーへと立ち寄る。
可愛いグッズが並ぶ店内で、宮舘(幽霊)は一つの棚の前で声を弾ませた。
🔴「照!これ、一緒につけよ♡」
💛「何?」
幽霊が掲げて見せたのは、お揃いの愛らしいイルカのキーホルダーだった。
岩本の返答を待たず、問答無用で二つのキーホルダーを会計に持っていく。
そして、自分の分を嬉しそうに手にした。
🔴「はい、照♡」
💛「……ありがとう」
岩本は手渡されたキーホルダーを見つめると、複雑な気持ちになった。
どうするか数秒、悩んだ末に鞄のジッパーにそれを結びつけた。
.
.
.
水族館を後にした二人は、再び電車に揺られ夕暮れ時の待ち合わせ場所へと戻ってきた。
🔴「照!今日は楽しかったよ♡ また来週もよろしく♪」
💛「……あぁ」
宮舘(幽霊)は満足そうに微笑む。
🔴「じゃあね〜♡」
名残惜しそうに手を振って、雑踏の中へと消えていった。
💛「……はぁ…」
小さく息を吐く岩本。
宮舘の姿が完全に人混みに紛れ、見えなくなったその瞬間。
まるでデジャヴのように背後から二つの気配が近づいてくる。
「岩本くん…」
「照…」
目黒と渡辺だった。
💛「…目黒。…翔太」
今回も二人は影から、ずっと岩本達のデートの様子を見守っていた。
🖤「岩本くん、それ…」
目黒の視線が、岩本の鞄で揺れるイルカのキーホルダーに留まる。
💛「……お揃いでつけたいって、あいつが…」
恋人が自分以外の誰かとお揃いのものをつけている。
――その事実が、目黒の瞳に嫉妬の炎を燃え上がらせた。
🖤「…っ!」
目黒は思わず手を伸ばし、そのキーホルダーを毟り取ろうとした。
💛「目黒……ダメだ。あいつから、絶対に外すなって言われてる……」
岩本は掠れた声でそれを制した。
水族館を出る間際、幽霊から『……照。外したらどうなるか分かってるよね?』と釘を刺されていたのだ。
💛「……ごめん」
拒絶された目黒の手が、空中で切なく震えて止まる。
視線を交わす岩本と目黒の瞳には、引き裂かれるような切なさと苦しみが満ちていた。
💙「………くそ…っ!」
渡辺が小さく呟いた。
二人のやり取りを見つめていると、友人にばかりに重荷を背負わせている不甲斐なさ。
愛しい恋人を今すぐ抱きしめることも出来ない悔しさで胸がいっぱいになる。
無意識ながら拳を血が滲むほど強く握りしめていた。
💛「(……これで2回目は、終わり…)」
幽霊の要求が少しずつエスカレートしていく中で、2回目のデートが終わりを告げた。
【残りデート数:3回】
コメント
4件
❤️がジワジワ攻めてきてるなぁ… でもウキウキな❤️もかわいい♡
わあ…第4話読みました! 水族館デート、めっちゃ甘い雰囲気かと思いきや、やっぱり岩本くんの心の葛藤が痛い…。恋人繋ぎに変えられた時の「ごめん」って気持ち、目黒くんと渡辺くんの影の存在を思うと胸が締め付けられます。最後のキーホルダーを毟り取ろうとした目黒くんの手の震え、めっちゃ切なかった…。残り3回、この先どうなるのか続きが気になりすぎます🔥
くろ
484