帰る頃にはヨーロッパは冬。
ロンドンの城は白く染まり
銀色の雪景色が広がっていた。
マフラーをした人々と雪だるまを作る子供が
窓から見えて、冬を感じさせた。
それと同時に…
「さっみぃ…」
寒い。脳髄から震え上がるほど寒い。
そういえばモスクワは−20℃
ヨーロッパも寒いはずだ…。
まだララの家の中だから良いのだが
それにしても寒い。
「へっくし…私も寒いわよ!服着てないんだから。」
「鱗があるだろ?!」
「はぁ?あんたこそ皮膚があるじゃないの!」
「それとこれは話がちげぇって…」
「…っあ!!グルの病院!」
話に夢中で気が付かなかったが
冬になっても変わらぬ真っ白な建物は
BIRD病院だ。季節が変わっても
どこか清潔さを感じる。
ララに言って病院に連れて行ってもらうと
見覚えのある看板の前に来た。
「変わらないわね〜!グルに会わなくっちゃ。」
鼻歌を歌いながらララは扉をノックした。
「は〜い!」とクルルの声が聞こえたと思うと
扉が開いて、独特な消毒液の香りが鼻に広がる。
俺は咄嗟に報告した。
「リーズ国に行ってきた。
ララの提案で王を殺め、どうにか和解出来たかと思う。」
「これで良いのか?」
クルルに問いかけると
笑って答えてくれた。
「良いですよ!人と和解できたのなら
経済的にも安定するでしょう。」
「貴方たちは良いことをしてくれた…。
ララさんも良い働きをしてくれました。」
クルルがパチパチと手を叩くと
ララはフンと鼻を鳴らした。
「当たり前でしょう?
私に出来ないことなんてないわ。」
「気合で十分!さぁ、次は何をしたら良いのかしら?」
身を乗り出すと
後ろからグルが顔をのぞかせて言った。
「海底に行ってこい。」
「敵対…ではないがな…。
建築材料等、海底に全てある。」
「サーガラに会いに行け。」
俺は首を傾げた。
サーガラ…とは何なのか?
「サーガラって?」
「大海龍王だ。敵わんほど強くて格が高い。」
「海神だからな。」
海神と聞いて唾を飲んだ。
ララはというと目を輝かせている。
「カッコいいわ〜!どんなお方なの?」
「それは……その…。
あ、明るくて…陽気なやつだ。
期待しないほうが良いと…思うのだがな…。」
目を逸らして冷や汗を流している。
俺はなんとなく察した。
とんでもない人なのだなぁ〜と。
今までの経験上、こういうやつは大体
やばい奴だ。関わらないほうが良いのかもしれない。
「はぁ…俺は人運ないな。」
ふと呟くと、グルが深く頷いた。
「お前には運がねぇ。俺等に会ったのも凶だな。」
「サーガラに会いに行くのは
この世界の凶を集めたようなもんだ。それと同時に___
この世界の真理が分かるかもしれないぞ?」
急に怖いことを言われて、俺はゾクッと肩を震わせた。
ララはというと興奮していて
今すぐ行きましょう!と言わんばかりだ。
「ロウヴェス!真理とやらを知りたいわ!
さっさと乗って行くわよ!」
「は?行くのかよ?!」
「当たり前じゃないの!」
「チッ…」
舌打ちをして、グルとクルルに言った。
「多分もう帰らないだろうが
元気にしろよ。…海底が何処か知らねぇけどな。」
「…海底はアジアの近くにある井戸を通って行け。
材料やらは部下に運ばせろよ。」
「分かった。」
「……元気でな。」
「あぁ…」
一歩下がって礼をすると
ララに乗ってヨーロッパを出た。
物凄い勢いで空を駆けると
雲の中を通って澄んだ山を超えていく。
青空のよく見える所で一回転すると
翼を四回ほど動かして、一直線に進んだ。
海へ近づけば近づくほど潮の香りが鼻を突く。
しばらくすれば群青色の海が広がっていて
ウミネコが魚を突いていた。
ララが海に近づくと透けていて
小魚やイソギンチャクがよく見えた。
「綺麗だな。」
そう言うとララが振り返った。
「貴方にそんな感情があるのね。」
そう言ったララの顔は
本当に驚いたような顔をしていて
本気で感情がないと思われていたようで悲しかった。
「…俺だって綺麗だって思うよ。…お前のことも…。」
ボソッと言うと、ララは顔を赤らめて
視線を前に戻した。
「___そう。そうなのね…!良かったわ。」
嬉しそうに声を上げると
飛行速度を上げて、空まで飛んだ。
宇宙が近いからか青色が濃くなって
海と同じ程の群青色であった。
真っ直ぐ飛ぶと、下に向かって行って
あっという間にアジアに着いた。
こちらでは春に近づいていて、桜のツボミが見られた。
井戸を見つけようと海岸を見ていると
ララが口を開く。
「ロウヴェス、私と出会った日を覚えてる?」
「…なんだ急に。」
「なんとなくよ。」
「そりゃ、覚えてるさ。確か二年前…」
夏の日だった。日差しが眩しくて
青葉が辺りを彩っていた。
そんな中、深海色のハウスドラゴンが座っていたんだ。
背中には大きな家を背負っていて
ラ〜♪ラ〜♪と鼻歌を歌っていた。
俺はその声に魅了されて声をかけた。
『お前、名前は?』
『…名前はないの。…貴方は?』
『ロウヴェスだ。』
『そう…ロウヴェス。
覚えておこうかしら。』
そう言って、眉を八の字に寄せた。
名前がないと聞くと、
俺まで悲しくなってついにはこう言った。
『お前、名前がないんだろ?
俺が名付けてやるよ。』
『本当?!』
目をキラキラ輝かせて
俺を見つめた。まつ毛が長くて顔は美人だ。
名前と言われると考えていなかったが
ふと、さっきのことを思い出して
こう口にした。
『ラ…ララ。ララはどうだ?』
『ララ…いいわね!ありがとう!』
『…私、行くところもないし、
ロウヴェスの所にでも行かせてほしいわ。』
安心したのか
ララはそんなことを言う。
俺は悩んだが仕方がないと思いOKしてしまった。
…こんなのだったかな。
俺は思い出しながら懐かしさを感じて
微笑んでいた。ララは「ふふ」と笑い
前を向いた。すると、一つの大きな井戸が見え始める。
「井戸よ!海底の井戸だわ!」
甲高い声でそう言って
そこまで飛んだ。そうしたら、苔の生えた井戸があって
中には透明の水がある。
奥行きがあるからか奥は見えなくて
仕方がないから、
ララの家に入ったまま俺は飛び込んだ。
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