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処刑が行われるまで、私は城の地下牢に閉じ込められることになりました。
私の見張りをすることになったのも……何故か彼でした。
騎士とは、囚人の監視までするものなのだろうか……という疑問もありましたが、そんなことを聞いたところでどうなるものでもないので……私はじっと、彼を観察してみることにしました。
鍛え抜かれた筋肉質の体。
あちこちについている傷跡。
それらを見るだけで、彼という人間が……私が知っているオリバーとは全く違う人生を歩んできたことはもう、明らかでした。
(一体、どんな風に生きてきたのかしら……)
「あの……」
私はつい、話しかけてしまいました。
彼は、ちらと私を見ましたが、何も答えませんでした。
きっと……会話をするということが好きではないのだろう……と、私は思いました。
なので、私はそのまま彼と話すことを諦めました。
ところが。
「何だ?」
「……え?」
「何かあるんじゃないのか?」
せっかく、彼から会話のきっかけを振ってもらったので、私は聞いてみることにしました。
「家族は……いますか?」
と。
「何故……そんなことを聞く」
「あなたが殺したのは、私の大切な家族だからです」
私は、自分で自分が発した言葉に……驚きました。
こんなことを発したかったわけじゃなかったのに。
きっと、言わずにいられなかったのかもしれません。
伝えたかったのかもしれません。
気づいて欲しかったのかもしれません。
あなたが殺したのは、あなたの家族でもあるんですよ……と。
そんなことを言ったとして、きっとこの人に信じてもらえるはずはないに。
「…………魔女と繋がっていれば、誰だって殺すしかない」
そう言った彼の表情が、微かに歪んだのがわかりました。
この人はもしかして、望んでこんなことをする人ではなかったのかもしれないと、感じてしまいました。
オリバーは、とても優しい人でした。
虫を殺すのも躊躇うほど。
彼と同じ魂を持っているならば、きっと彼も……。
「あなたに、家族はいるのですか?」
もう1度、尋ねてみました。
すると、彼は、大きなため息をつきました。
「病気の母が……田舎に……」
その言葉で、察してしまいました。
騎士を目指す人は戦いが好き、権威が好きな人もいますが……騎士という職業に就くことで手に入れられるお金目当ての方も多いと……聞いたことがありました。
彼は……きっと母親のために、したくもない人殺しを強制されているのでしょうと、私は思う事にしました。
「そうですか……」
「もう良いだろうか」
彼はまた、無言になりました。
「ええ、十分です」
たった数往復の会話で、オリバーの優しい魂を、ほんの少しですが感じることが……できましたから、この会話に意味がありました。
その優しさが、彼の今世では私に向いていないということが、寂しくも思いましたが、同時に……ほんの1つだけ、希望が生まれました。