テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
Mee
62
507
346
422
╴次に黒パーカーを見つけたら追え。╴
その文字は頭から離れなかった。
リオラは止めた。
ノートは追えと言った。
どちらが正しいのか分からない。
だが。
どちらかは嘘をついている。
そんな気がした。
翌日。
オレはひとりで駅前へ来ていた。
リオラには言っていない。
言えば絶対に止められる。
そう分かっていた。
🐕 _ おらんよな …… 、
小さく呟く。
平日の昼。
人は多い。
だが黒パーカーはいない。
何時間も待つわけにもいかない。
中々にこないかなから帰ろうとした。
その時だった。
視界の端。
横断歩道の向こう。
黒いパーカー。
反射的に走り出す。
人混みを抜ける。
信号を渡る。
黒パーカーは振り返らない。
一定の速度で歩き続ける。
まるで。
追われることを知っているみたいに。
🐕 _ 待て !
叫ぶ。
反応はない。
路地に入る。
さらに奥へ。
気付けば人通りが消えていた。
静かだった。
異様なくらいに。
そして。
黒パーカーが止まる。
行き止まりだった。
息を切らしながら近付く。
🐕 _ .. はッ 、なぁ …オマエ誰なの 。
返事はない。
🐕 _ 失踪事件とはなにか関係があるのか ?
沈黙。
そして。
黒パーカーがゆっくり振り返る。
フードの奥。
見えた顔に。
固まった。
🐕 _ …… は ?
ありえない。
そんなはずがない。
そこにいたのは。
自分だった。
次の瞬間。
頭に激痛が走る。
膝をつく。
視界が揺れる。
映像。
音。
記憶。
知らないはずのものが流れ込んでくる。
夜。
雨。
泣いているリオラ。
血の付いた手。
そして。
自分の声。
« 次こそ助ける 。 »
別の映像。
« 次こそ 。 »
また別の映像。
« 次こそ 。 »
« 次こそ 。 »
« 次こそ 。 »
« 次こそ 。 »
頭がおかしくなりそうだった。
気付くと。
黒パーカーは目の前にしゃがんでいた。
自分と同じ顔。
自分と同じ声。
だが。
目だけが違う。
疲れ切っていた。
何百日も眠っていないような目。
🐶 _ やっっっと会えた 、
そいつが言う。
息を呑む。
🐕 _ 誰だよ 、 ?
男は苦笑した。
🐶 _ オレだよ 。
🐕 _ ふざけんな 。
🐶 _ ふざけてない 。
静かな声だった。
不思議と嘘には聞こえない。
🐶 _ オレは …… 。
男が言葉を続ける。
🐕327 _ 327回目のオレだよ 。
その瞬間。
スマホが鳴った。
着信。
リオラ。
画面を見た男の顔色が変わる。
初めて。
焦った表情を見せた。
🐕327 _ 出るな 。
🐕 _ は ?
🐕327 _ 今だけは出ないで 。
🐕 _ なんで ?
🐕327 _ お願いだから 、 ッ
男は立ち上がる。
そして。
震える声で言った。
🐕327 _ まだ知られたらだめ 。
🐕 _ 誰に ?
男は答えない。
代わりに。
オレの肩を掴んだ。
強く。
必死に。
🐕327 _ リオラは覚えてんだよ 、
オレの呼吸が止まる。
🐕 _ … 、 何 を 、 ?
🐕327 _ 最初から全部 、 何もかも 。
世界が静まり返った。
スマホだけが鳴り続けている。
男は最後にこう言った。
🐕327 _ それでもお前は 、
まだリオラを信じるんだよ 。
その言葉を残して。
黒パーカーは路地の奥へ消えた。
夜。
家に帰ったオレは震える手でノートを開く。
そこには。
今までで一番短い文章が書かれていた。
╴会ったな 。╴
そしてその下。
赤い文字。
大きく。
まるで警告のように。
╴もう戻れない 。╴
コメント
2件
今までで一番好き
わあ……第8話、めちゃくちゃ重い展開でしたね……。「327回目のオレ」って言葉、一気に世界観が変わった感じがしました。自分自身の別ループの存在と、リオラが「最初から全部覚えてる」って示唆——もうすべてが疑わしくなってきますね。ラストの「もう戻れない」も不気味で、続きが気になって仕方ないです。素敵な執筆、ありがとうございます🍀