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休日出勤は悪くないかもしれない
窓から差し込む午前の陽ざしが
平日よりも柔らかく感じる
以前リュカも言っていたが
周りを気にする事なく
自分のペースで仕事が出来る
圧迫感というか
脅迫感というか
外的要因が一切無く
自分が左右されない
本来は業務時間でない
必須ではないという認識が
心に余裕をもたらす
私も
休日出勤は嫌いじゃないかもしれない
心なしか
平日よりも体調も良い気がする
やたら捗る仕事
その波に乗り
時が経つのも忘れ
仕事に没頭する
遅れていた分の業務は
午前中だけであっという間に片付いた
ようやくこれからの業務に取り掛かれる
そんな折だった
コンコンッ!
顔を上げ振り返る
立っていたのはリュカ
ドアは開いているのに
壁をノックし
入室の配慮を示し
その存在を知らせる
「あ、おはようございます!やっぱり出社してたんですね」
「やっぱり?」
「口調が社内モードに戻ってるね」
「ははは……つい癖で」
「ところで……お昼だしランチ一緒にどう?」
そう言ってリュカは
私をランチに誘ってくれた
私達二人以外
誰もいない休日のオフィス
私は心置き無く快諾した
***
以前と同様
相変わらず人もまばらな
休日のオフィス街のレストラン
順番待ちする人を気に掛ける必要もなく
心置き無くお喋り出来る
くだらない軽い会話に
思わず笑みが零れる
久しぶりのリュカとの食事が嬉しい
くだらない軽い会話が
何より楽しい
リュカは私に笑顔をくれる存在
やっぱり
私はこの人に心惹かれているんだ
改めてそう実感する
やっぱり
私はこの人に心奪われいる
私は
この人の事が好きだ
改めてそう実感した
「え?双子だったの?」
それまで一人で抱えていた
不安も緊張もそこにはなく
話の流れで
言えていなかった事を
あっさりとリュカに伝える事が出来た
くだらない軽い会話から始まり
話題は徐々に移ろい
私達の事
私個人の事
私の妊娠の事
そして
避けては通れない
喫緊の真面目な話題へと移ろう
夫の浮気の事——
「リュカが言ってた通りだった」
「直接見ちゃったんだよね先日、二人が密会してるところ」
リュカは
それを黙って聞いていた
そして
「この間言った事考えてくれた?」
——この間言ってた事
それはきっと
私がリュカと結ばれる事
そんな事
考えないはずが無い
だけど
幾重にも立ちはだかる障壁の数々
そんなに簡単な話じゃない
そんなに楽観的に私の意志だけで決められるはずもない
そのリュカの問いに
私は返す言葉に困ってしまった
「瑠奈がどうしたいか、瑠奈の意志だけで良いんだよ」
「あとはどうにかなるさ」
そう促すリュカ
それはきっと
リュカがどうにかしようとしてくれている
リュカが助けてくれようとしている
それは
私の問題で
私と純也の問題で
リュカに迷惑を掛ける事に他ならない
「瑠奈だけの問題じゃないよ、俺達二人の話をしてるんだから」
相変わらずリュカは勘が鋭い
私の思考を
分かっているかのような
先読みしたかのような会話を紡ぐ
でも……
それでも尚ハッキリとした物言いが出来ないのは
お腹の子の父親が
純也の可能性が残っているから
もし
お腹の子の父親がリュカならば
リュカの言う通り私達二人の問題
でももし
お腹の子の父親が純也だったならば
拗れに拗れ
全てが御破算になる
そこにリュカを巻き込んでしまう事になる
その大きすぎる障壁が
私に言葉を詰まらせた
と、ふと
黙りこくった私を尻目に
思い出したかのように
リュカが口を開いた
「そういえば……鈴木さん?だっけ?旦那さんの浮気相手」
「彼女はどこの部署で働いてる子?」
「……」
興味が無いと言っていた
鈴木さんの事
実際興味無さそうで
これまで深く聞かれた事も無かった
それを
急に脈略も無く
深堀りしてきたリュカ
不思議に感じながらも
私はそのままの事実を伝えた
「購買部です」
その返答を受け
リュカは
一瞬
斜め上の空を見つめ
何かを悟った様な顔をした
#独占欲
#ダークファンタジー