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#独占欲
#ダークファンタジー
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「そういえば……鈴木さん?だっけ?」
「旦那さんの浮気相手」
「彼女はどこの部署で働いてる子?」
「……」
興味が無いと言っていた
鈴木さんの事
これまで深く聞かれた事も無かった
不思議に感じながらも
私はありのままの事実を伝えた
「購買部です」
その返答を受け
リュカは
一瞬
斜め上の空を見つめ
何かを悟った様な顔をした
「なるほどね……」
(え?……何その反応)
リュカはそれ以上
特段掘り下げる事もなく
何を悟ったのかも
何かを悟ったのかさえも
結局良く分からなかった
「とにかく瑠奈がどうしたいかだよ」
「色々あるのは理解出来る」
「けどね、そんなものはどうにでもなるんだよ」
「一人で出来なくても、二人なら」
再度のその問いに
中々言い出せず
中々言葉にならない私を見兼ねてか
それ以上追及はしようとせず
ハッキリと
私がどうするべきかだけを伝え
それ以上言及しなかった
食後の温かい紅茶を飲みながら
私の妊娠の経過と
DNA検査の日程を伝えた
リュカは
何の問題も無さそうに
ただ全てを
全肯定で了承してくれた
***
休日出勤とはいえ
やる事は山積み
早退と病欠
不在の間に積もった業務
一時の休息
リュカとのランチから戻り
再びデスクに向かい
片付けるべく業務に向き合う
リュカの寛容さと
リュカの真摯な対応
そして
リュカの優しさには本当に救われる
こんな状況になって尚
私はやっぱりリュカが好きなんだと
再認識した一時だった
しかし
その私の想いと現実は
必ずしも比例しない
反比例する多数の軸が存在する
更には交差する様に時間軸も存在する
しかし
まずは喫緊の課題
今は業務が最優先
一人オフィスでパソコンに向かい
これまでに溜まった分と
これからの業務の準備を
ひたすらにこなし
納得いくまで整えた
一区切りついたのは夕方前
そろそろ終えようかと思い始め
再びリュカが脳裏に過る
前回はこの流れから
リュカ宅へお邪魔するに至った
本音では
またリュカと一緒に居たい
そう思いつつも
自分から言えるわけもなく
そんな淡い可能性に
乙女の様に心ときめかしつつ
社長室へ帰宅の挨拶へと向かった
コンコンッ!
「失礼します」
社内の礼節は保った
休日とはいえここは会社のオフィス
社外の友人ノリというわけにはいかない
その節度は大事だ
「社長、そろそろ帰ります……社長はまだかかりそうですか?」
——もしかしたらまた誘ってくれたりするかも
そんな一抹の妄想を思い浮かべつつ
帰宅の挨拶をしに来た
「うん、ちょっと調べ物してるからもう少し残るよ」
私の淡い妄想は
儚く散った
まあ当然と言えば当然の事
落ち込む程の事ではないが
でも
期待してしまっていた分
少し残念だった
***
DNA検査は
妊娠7週目から可能と言っていた
だが
胎児DNA量を鑑みると通常は
妊娠10週目あたりが妥当だそう
検査が早過ぎると
再検査の可能性もあるし
鑑定精度の安定を考えると
妊娠10週目あたりを推奨された
時間的制約に背を追われながらも
全てが早ければ良いというわけではない
順序と
各フェーズの
適切なタイミングが求められる
事の経緯と目的を
リュカに打ち明け
準備は整いながらも
前へ進む事を一旦停止でお預け
早く片付けてしまいたい思いと
否応なく進む妊娠週に
焦りを感じながら
私は
これから悶々とした日々を過ごさねばならない
子の父親が不明なままで
不安な気持ちを抱えながら
***
溜まっていた仕事も一段落つき
ようやく通常軌道に戻った
悶々とした心情と
不安な気持ちを抱えながらも
世界はありふれた日常を奏でている
社内も通常運転
さもありげな
何気ない平日を奏でている
ここのところランチタイムは
伊藤さんと昼食を摂るか
仕事しながら片手間で済ますか
いずれにせよ
自室で過ごす日々が続いていた
めっきり顔を出していなかった
同期同僚とのランチ女子会
正直あまり行きたくはなかったが
異動
昇進
それを境に顔を出さないのも如何なものかと
心に若干の余裕が出来たこの日
ふとそう思った
私が陰口の的になっているのは想像に難くない
放っておけば
社内の生存戦略上
居場所が無くなる
鈴木さんから伊藤さんへの探りが来るのも
私が御無沙汰なのもあるかもしれない
ふとそう感じた私は
この日のお昼時
久方ぶりに
かつて慣れ親しんだ
かつて毎日の様に通った
食堂の
いつもの席へ向かった