テラーノベル
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動画が世界に衝撃を与え、衆愚の邪念がその圧倒的な虚無に飲み込まれて沈黙した頃。
B.P.Dが施行される直前の、雪の降る静かな夜。
田辺翔太と向山パレルは、オフラインで、誰にも知られずに会った。
豪華なマンションでも、騒がしい学校でもない。どこにでもある、寂れた公園のベンチだった。
「……」
「……」
二人は言葉を交わさなかった。
ただ、お互いの目の中に、自分と同じ「底なしの虚無」があることを確認した。
翔太が、ゆっくりと立ち上がった。
そして、自分と同じ痛みを抱え、同じ闇を潜り抜けてきたパレルを、力のかぎり抱きしめた。
それは、恋でも愛でもない。
世界から「居ない同然」とされた二人が、初めて「そこにいる誰か」の体温を感じた、魂の儀式だった。
かつて世界をあざ笑った二人の目から、熱い涙がこぼれ、肩を濡らした。
*
ローザ・スペンサーとミハエル・クローネンバーグは、
おもに密航中に、パレルの動向をチェックし続けた。
その間も行った先々で小さなトラブルを起こしながらも、目的を遂げようとしていた。
彼らは結局、
ロシア領の雪原近くの村で捕獲され、縮む身を温めながらうなだれていた。
そんな中でもミハエルは、報道陣が無慈悲に向けるカメラへ可愛くウィンク。
直感的にウザがるローザの表情も、同時に収まった……
彼らはもう、誰かを攻撃することはない。
ただ、この抱擁の記憶だけを抱えて、これからの「清算」の季節を生きていく。
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