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#あべさく
めかぶぷりん
8,223
29
雪月❄️
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ひんやりとしたものが額に当たっている。ボーっとする頭がクリアになるような感覚に、阿部の意識が浮上していく。
目を開けて見えたのは、優しい宮舘の顔。
💚「舘様……?」
❤️「阿部、起きたね。体調は?」
💚「ん、平気……ってか、俺、舘様に膝枕されてる?」
❤️「してるね」
💚「……何で?」
❤️「肩に寄り掛かって寝てたんだけど、膝枕の方が楽かなと思って」
💚「海での膝枕、こんな形で回収されるとは……」
❤️「ふふっ。俺の膝はいつでも空いてるよ」
💚「ふはっ。舘様のここ空いてますって、それギャグのやつじゃん」
❤️「俺は本気なんだけどな」
💚「でもなんか、おかげでぐっすり寝れたような気がする。起き上がっていい?」
❤️「ちょっと待ってね……翔太、阿部のこと起こしてあげてくれる? 急に起き上がったら、また立ち眩みするかも」
💙「おー、阿部ちゃん起きたのか」
呼ばれてすぐに近づいてきた渡辺が手を差し出してくれたので、その手を掴むと強い力で、それでも優しく上半身を起こしてくれた。
💙「どう? フラフラする?」
💚「しないよ。ありがと。舘様もね」
❤️「どういたしまして」
💛「お前らー、飯できたぞー。ひーくん特製チャーハンだぞー」
コンコン、とお玉でフライパンを叩く音がしてそちらを見ると、キッチンに立っている岩本の姿が映った。
💚「あ、今日は照が作ったんだ」
❤️「そう。俺は阿部当番だったからね」
💚「阿部当番って……でも、照のチャーハン、久しぶりかも」
💙「ひーハン、美味いんだよな」
💚「わかる。照、こだわってるからね」
💛「阿部、食べれそう?」
💚「お腹空いた!」
💛「おし。少な目に盛るから、足りなかったらおかわりしろよ」
全員が集まり、キッチンカウンターで食べる者、応接間のソファのところで食べる者、執務机で食べる者と分かれ、九人全員で昼食を済ませた。
ゆっくり食べ進める阿部に合わせて昼食を終えたのはおよそ30分後。
阿部から見えないようにひっくり返していたホワイトボードを元に戻し、書いてあるものを見せる。それを、阿部はただじっと見つめていた。驚くでもなく、考え込むでもなく、ただ、じっと。
沈黙が流れる。
誰も、その間に言葉を発しなかった。
💚「……なるほどね……」
ぽつりと呟き、静寂を破る。
🩷「……それだけ?」
💚「それだけ。まあ、なんとなく予想はしてたから。大体、合ってたよ」
今度は、はぁーっと大きなため息が部屋を包み込む。
💚「え、なに?」
💜「ほらー、だから言ったじゃん。阿部ちゃんはいろいろ気付いてるって」
💙「マジで情報共有してなかっただけかよ」
💚「ほらまあ、確証はなかったから」
💜「それ、それだよ。俺らは、考え途中も話してほしいわけ。正解がほしいんじゃないの」
💚「ああ。それは、ごめん。考えてることはある、程度だとね。でもそうだね、俺が思ってたことにはみんなも辿り着いてる。だから、言わなかったのは悪手だったと、今は思うよ」
🧡「握手?」
💚「悪手。良くなかったってこと」
🤍「阿部ちゃんがちゃんと認めてる! えらいっ」
💚「もー」
💜「でも実際問題、阿部ちゃんはこれ見て、どう思ってるわけ? 大体合ってるって、どの辺のこと?」
詳しく聞かなければ、阿部の考えは分からない。
だから訊ねると、阿部は顎に手を当てて少し考える素振りを見せていたが、不意に立ち上がろうとしたので、近くにいた渡辺が制止する。
💙「なに、どうした?」
💚「タブレット取って来ようと思って。俺がまとめたもの、あった方がいいかなって思ったんだけど」
🩷「俺、取ってくるよ。どっち?」
💚「折り畳みじゃない方。コントロールルームの机の上に置いてあるから」
🩷「りょーかーい」
すぐにコントロールルームに入った佐久間は、ほんの数十秒で戻って来た。その手には柊の葉のデザインが入ったタブレットがある。
🩷「ほい」
💚「ありがと」
受け取るとすぐに起動させて、メモを開いた。
💚「じゃあ、順番にいこうか。服部さんのは、俺も確定扱いでいいと思う。事務所襲撃も。水族館は、俺が違和感あったのは、他の客があの場所に来なかったこと。X-CHARGERの人たちが封鎖してたとしてもだよ? 騒ぎにもならないって変だと思う。あの時は俺も気付かなかったけど、その後は普通に見て回れたしね」
🤍「もしかしたら、そこにも催眠が関わってる?」
💚「可能性はあるね。疑ってるっていうレベルだったけど、あれも組織絡みだとするなら、かなり近づく。それとNEW ERAも、俺は確定だと思う。あの金髪の男の復讐心が利用されたと見ていいかな。それから、不明のとこのルミナシアパーク。これも確定でいいと思う。明確に、俺の電脳を調べようとしてた。ルミナシアステーションもトラムも、俺の電脳を刺激するようなものばかりだったし、あからさまだったのは、トラムのFUTURE。もちろん、俺の電脳空間を見たわけじゃないから同じじゃなかった。でも」
🖤「阿部ちゃん、落ち着くって言ってたね」
💚「そう。普段から行き慣れてる場所によく似てて、情報が繋がってる感じが心地良かった。電子回廊から着想を得たのかも。第二の異能は、一つ目の異能と近しいものになるから。電子と電気に近いもので、可能性を埋めていったんだと思う」
阿部の話を受けて、水族館での浦川がほぼ確定。高宮浩介とNEW ERAが確定。ルミナシアパークも確定に変わる。
🤍「うわ、一気に広がったねー」
💚「もう、俺らの情報はほとんど渡ってると思った方がいいね。変身能力持ちの大学生がいるから、情報収集は簡単にできるだろうし」
🧡「何で?」
💚「姿を変えて近づかれたって分かんないってこと。それこそ、警察官としてそこに居たら普通に話すでしょ。俺らは、警察からの依頼も受けてるから、詳細は話さなきゃならないし、事件現場で実際に異能も見られてるだろうしね」
🤍「ああ、だからルミナシアパークの仕掛けか」
💚「そういうこと。一般の人に紛れて見られてたって気付けない。そうやって、情報を収集してたんじゃないかな」
警察に扮しても、野次馬になっていても、どうやっても情報収集はできてしまう。ラウールが鳥になっている可能性を見出しているので、動物になられていたらそれこそ、どんな状況でも防ぎようがない。
そこで話が一段落し、深澤が皆を見回した。
💜「……で、これからどうする? このままで済む問題じゃなくなったからね。手は打たなきゃならない」
阿部の異能が封印されたことで、これまで組織的に狙われていた部分での危険はなくなったと思っていた。
けれど今回の封印解除を試みたこと、前回の紅歪の事件を考えると、終わっていなかったのだと実感させられた。
阿部が、再び口を開く。
💚「……CLOSEのこと、知らなきゃいけない。あの時はただ、状況に身を任せて封印したけど、それを解こうとしてるなら、知って、対処しないと」
💛「警察からの資料にあったのって、封印ができるっていうだけだったよな?」
💚「そうだね。詳しくは聞いてないと思う。どんな異能だったかっていう確認だけだから」
💜「なら、直接訊くしかない、か」
再びタブレットに視線を落としている阿部。
💚「……あった。青井凌馬さん、21歳、男性。友人同士で茜波に泊まりに来てて、その日に被害に遭ってる。友人とは部屋を別々にしてたから、一人客扱い。住所は、陽ヶ瀬地区の隣だね」
💛「誰が行く? あんまり大人数で行っても邪魔になるだろ」
💜「家に入るのが三人、外で待機が二人、かな」
💚「多くない?」
💜「多くない。話を聞くのは、阿部ちゃん、俺、めめ。外で待機が、舘さんと康二でどう?」
💛「いいんじゃないか。いろいろ対応できそうなのはその辺だろ。なんかあれば、佐久間も向かわせる。佐久間、住所憶えとけよ」
🩷「合点承知!」
🧡「なんやそれ」
🩷「一回、言ってみたかったんだよ」
🧡「今?」
🩷「なんとなく」
佐久間と向井のやり取りで緩くなった空気に安堵したのか、事務所内が少し明るくなったように感じる。それでも自分が緊張しているのが分かって、阿部は膝の上で拳を握った。
不意に。
ふわっと頭が撫でられ、背中をさすられたことで後ろを見上げると、頭を撫でている目黒と、背中をさすってくれている渡辺の姿が見える。
💚「ん?」
🖤「俺らがついてるよ、阿部ちゃん」
💙「あんま気負うなよ。空回りするぞ」
💚「ふふっ。ありがと」
💜「異能が不正に使われるかもしれないから、その確認っていうことで、警察経由で青井さんには連絡するね」
💛「頼む。行くのは明日だな。ふーちゃんで行くなら、それも連絡しとけよ」
💜「りょーかい」
和んだ会話を聞きながら、目黒はスマホを操作した。その画面に映されたのは、『最低』の二文字だけだった。
翌日の午後、大烏ふーちゃんはグランドリゾート茜波の近くの地面に降り立った。
ホテルの庭園の方に向かうと、車椅子に乗った少女が見えた。その傍らには支配人の姿もある。
💚「夏音ちゃん」
声をかけるとこちらを向いた夏音が、顔をぱあっと明るくさせ、大きく手を振っている。
すると夏音は車椅子から立ち上がり、ゆっくりとこちらへ歩いて来ているので、みんなが驚いて夏音を見た。
🧡「え、歩いて平気なん?!」
「グローリーの聖雨のおかげでね、良くなってきてるの! お医者さんもビックリだって言ってた。この調子なら、走り回れるようになるかもって!」
💜「そっか……良かった」
「涼太お兄ちゃん。あの時、誘音で呼んじゃってごめんね。ずっと、言えなかったから」
❤️「俺は何も気にしてないよ。夏音と紅茶飲んでただけだし、楽しかったよ」
「そっか……ボクも楽しかったよ。いろんなお話してくれて、いろんなことが知れて。また、お話しようね」
❤️「そうだね」
💚「グローリーとソフィラは?」
「お部屋にいてもらってるよ。やっぱり、お人形があちこち動き回ると、みんなビックリしちゃうから。でもね、お部屋でいっぱい遊んでるし、人が少なくなった夜とかはね、一緒にお散歩してるんだ。これ、秘密だよ」
シーッと唇に人差し指を当てる夏音はとても嬉しそうだ。
その後、少しだけ庭園で一緒に遊んで過ごす。リハビリの為にも体を動かすのは大事だと言われているらしいので、夏音の負担にならないように気を付けながら。
夏音はずっと楽しそうで、それを見て、みんなも顔を綻ばせている。
阿部、深澤、向井、宮舘の四人は、前回はちゃんと見られなかった庭園を見て回ったり写真を撮ったりしていて、ひとしきり遊んだ夏音が車椅子に座ってその様子を眺めている。
その傍には目黒が立っていて、微笑んでいる目黒を夏音は見上げた。
「蓮お兄ちゃん」
声を掛けられた目黒が夏音に視線を向ける。
「あのね。言おうか迷ったんだけど、蓮お兄ちゃんには伝えた方がいいと思うの」
🖤「……なに?」
威圧しないように、優しく訊ねる。
夏音はまだ迷うような素振りを見せていたけれど、ゆっくりと口を開いた。
はしゃぐみんなの声が遠く聞こえる。その中で、夏音の小さな言葉を拾っていく。目黒は、僅かに目を丸くした。
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