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#あべさく
めかぶぷりん
8,223
29
雪月❄️
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約束の時間である15時に青井の家に着き、阿部、目黒、深澤の三人はマンションの一室に入った。宮舘と向井はマンションの外にいて、ボーダーコリーふーちゃんと共に待っている。
リビングに通され、テーブルを挟んでラグに座った。
「CLOSEについて詳細を確認したいって聞きましたけど」
💜「そうです。どこかで使用された時に対処できればと思いまして」
「一応、鑑定書を用意してたので。これを見てもらった方が早いと思います」
そう言って、青井は一枚の紙をテーブルに広げた。
賞状のようなしっかりした紙には装飾が施されており、そこに文字がびっしりと書かれている。
「俺の異能だったCLOSEって、見た目とかじゃ分からないから全然、異能があるなんて知らなかったんですよ。でも、大学入学の時に一斉に鑑定を受けることになって、そこで出た鑑定書です。ちゃんとした機関のやつなんで、正確だと思いますよ」
💚「これ、国の鑑定施設のものだ。刻印がちゃんと入ってる」
「そうです。国立異能学研究機構、だったかな」
💚「ああ、なら確実だね」
🖤「阿部ちゃん知ってるの?」
💚「今ある鑑定施設の中ではトップクラスだよ。いつ異能が発現するか分からないから、大学側も正確に把握したかったんだと思う」
「その鑑定書、あげましょうか?」
💚「えっ?」
「どうせもう、俺には必要ないですし。元々、CLOSEは一度しか使えないし、使ったらオーバーロードするし、封印なんて使う気にもならなかったから」
💜「じゃあ、いただいていきますね。お時間取ってもらって、ありがとうございました」
「いえ。でもそんなに何回も調べなきゃいけないなんて、警察も大変ですね」
ぽつりと呟かれた言葉に、立ち上がりかけていた三人が動きを止めた。
💜「そんなに何回も来ました?」
「来ましたよ。最近だと、一週間くらい前かな。同じように、CLOSEについて詳しく知りたいからって。その鑑定書、見せましたけど」
深澤は目を見開き、阿部は眉を寄せ、目黒は考えるように目を細める。
💜「それって、どんな人でした?」
「普通の人でしたけど。あんまり印象に残ってなくて、どんなっていうのは、わかんないです。そういや、影の薄い人だったなー」
鑑定書を手に、ありがとうございましたとお礼を言うとすぐにマンションから出た。
外にいる宮舘・向井と合流すると大烏ふーちゃんに乗って上空に飛び立つ。
🧡「なんや、そないに慌てて」
💜「ちょっと、想定よりマズそうなんだよ」
❤️「……何かあった?」
💜「誰かが、青井さんに接触してた。CLOSEについて詳しく教えてほしいって。それも、一週間前」
❤️「一週間前って……」
💚「命冠の環の時だよ。俺たちが、教団を調べてた時。つまり、あの事件の裏でCLOSEを調べてる人物がいた。青井さんの話ではその人、印象に残らないくらい影が薄かった」
❤️「影……例の、影の異能力者?」
💚「可能性、高いよね。単純に比喩なだけかもしれない。でも昨日、実際にCLOSEを解除しようとしてる。偶然なわけないよ」
💜「……鑑定書、読んだ。阿部ちゃん、可能性じゃない。繋がった」
🧡「なんて書いてあったん?」
💜「CLOSEの封印は完全じゃない。その人が命の危険にさらされた時に、封印が浮かび上がる」
💚「……だから、紅歪」
💜「そう。あの時、阿部ちゃんは大量の血を流して危険な状態だった。でも、死ぬほどのものじゃなかった。そこ多分、加減されてたんだよ」
❤️「そういえば、ラウールも同じようなこと言ってたよ。紅歪は本気で殺そうと思ってたわけじゃないと思うって」
💚「あの時の襲撃の目的は、封印を見ることだった。だから、その封印を見て、鍵を作って開けようとした」
🧡「おー、繋がったなぁ。めっちゃやな方向で」
💜「しかもこれで終わりじゃない。CLOSEの封印は、一度解除を始めたら止められない。いずれ完全に解ける。そう、書いてある」
💚「そうか。だからあの大学生、簡単に引いたんだ。重要なのは結果じゃない。鍵を差し込みさえできればもう、目的は達成されたようなものだった」
鍵を持って行った理由はわからない。まだ、解除のために必要なのかもしれない。けれど、いずれ完全に解除されるのであれば、このまま過ごしているだけでも封印は解ける。
そうなるともう、猶予はない。
そして、ファントムの時に阿部を攫っていることを考えると、次に組織側がどう動くのかは予想がつく。
💜「阿部ちゃん、ここから先は阿部ちゃんが決めることだ」
隣の阿部を見つめる。
現状、阿部に残された選択肢は二つしかない。一つは、今すぐ封印を解除すること。もう一つは、いずれ解除されるというのを待ち、その間に対策を立てること。
決断を、しなければならない。
ふうっと息を吐き出す。
💚「待つのは得策じゃない。この状態のまま捕まったら、俺は何もできない。封印が解けるのを待たされるか、持って行かれた鍵で無理やり解かれる……だったら、今の内に選択肢は増やしておきたい。ファントムの時より対策されてるだろうけど、それでも、武器はほしい」
答えを聞いて、深澤も、宮舘も、向井も頷いた。皆が、阿部の考えを尊重するつもりでいることは明白だから。
💜「帰ったら、ラウにもう一回、鍵を作ってもらおう。それで解除する」
💚「うん。CLOSEを解いた後のことも、ちゃんと考えなきゃ」
ふーちゃんのスピードが上がる。
風を全身に受けながら、目黒はただ、阿部を見つめていた。
事務所に帰るとすぐに、ラウールに鍵の作成を依頼した。同じものだから頭の中に設計図はあるので、作れるとのこと。複雑な鍵だったから、作るのにはまた20分ほどかかるという話で、それぞれ事務所内で過ごす事になった。
そんな中で目黒は深澤に声をかけ、三階に来るよう手招きをしてベッドルームに入る。
ドアを閉め、今は二人きりだ。
💜「どうした? めめがこうやって呼ぶの、珍しいじゃん」
🖤「ちょっと、俺だけだとどうしていいか分かんなくて。相談、です」
💜「ああ、なるほどね。座って」
適当にベッドに腰かけた深澤の向かい側にあるベッドの縁に、深澤と向き合うように目黒も腰かけた。
💜「で、なに?」
問いかけられて、けれど目黒はすぐに答えられなかった。
自分の中で話そうと決めてはいたけれど、言葉にはならない。
💜「いいよ、ゆっくりで。言えそうだったら教えて」
🖤「や、大丈夫です……阿部ちゃんの封印のことで、一つ」
💜「CLOSEの?」
🖤「夏音の話だと、CLOSEの封印に、俺の声が混ざったかもって」
💜「……ごめん、どういうこと?」
🖤「あの時、俺らタペストリー歌ってたじゃないですか。で、クイーンがCLOSEを発動して鍵をかけたタイミングが、俺が『孤独終わらせにいこう』って歌ったタイミングらしくて、その時に黒いマテリアも流れ込んでたみたいだったって。蓮お兄ちゃんの色だよねって言われて」
💜「あー。重なったんだ、ちょうど。しかも、歌詞もピッタリ」
🖤「です。だからもしかしたら、関係あるかもしれないって言ってた」
💜「なるほどねー。解除の時にも、もしかしたら必要になるかもね。でもそれ、わざわざ二人きりで言うこと?」
🖤「……いや、こっちじゃなくて」
言葉を切った目黒に、深澤が姿勢を正す。
🖤「夏音が最初に持ってた人形、憶えてます?」
💜「あー、なんだっけ。男の子っぽいような女の子っぽいような人形持ってた気がする」
🖤「それです。マロウって言ってた人形。でも、佐久間くん達が合流した時はもう持ってなかったって言ってた。で、そのマロウについて。夏音、誰かに渡したって言ったんです」
💜「……え? 夢幻ノ杜で?」
🖤「夢幻ノ杜で。あの時に」
💜「……いやいやいやいや、待って待って。だってあの時、俺らしかいなかったじゃん」
🖤「のはず、です。でも、いたって」
目黒は、先ほどの夏音との会話を思い出していた。
夏音から声を掛けられて最初に伝えられたのは、封印について。目黒の歌声が関わっているかもしれないというもの。
そして、もう一つ。
「ボク、あの時は全然、気にしてなかったんだ。お兄ちゃん達のお友達だろうって。でも、お兄ちゃん達があのお兄さんと一緒にいるとこ、見なかったから、変だなって思ったの。それでね、ボク、もしかしたらダメなことしちゃったかもって思って」
🖤「……聞かせてくれる?」
「お兄ちゃん達が話してる間、お庭にいたでしょ? その時にね、またお兄さんに会ったの。それでね、お兄さんが大切な人のためにお人形が欲しいって言うから、ボク、大事にしてくれるならいいよって渡しちゃった」
🖤「人形を?」
「うん。ボクが持ってたマロウ。それと、近くにいたフェデレート」
🖤「……どんな異能持ってたのか、聞いていい?」
「マロウは、マテリア鑑定っていうの。見たマテリアの色とか、どんな異能なのか分かるって言ってた」
🖤「あ。だから俺らのこと、氷のお兄ちゃんとか岩のお兄ちゃんとか呼んでたんだ」
「そう。お名前は分からなかったから」
🖤「それで、もう一人の異能は?」
「フェデレートは、想像増大。新しく来た子だったから、どうぞって。どんな異能なのかは知らない」
🖤「……これ、なんで俺に?」
「ホントはね、亮平お兄ちゃんに言おうと思ったの。でも、あの時の亮平お兄ちゃんを見てるから、亮平お兄ちゃんだけに言ったら、隠し事にしちゃうんじゃないかって思ったんだ」
その言葉に、思わず目黒は笑ってしまった。
短時間でそこまで見抜かれている阿部は相当なものだと。
「でも、亮平お兄ちゃんが一人で残るの、蓮お兄ちゃんはずっと反対してたでしょ。亮平お兄ちゃんのこと、大好きなんだなって思ったから、だから、蓮お兄ちゃんに話したんだよ。ボクも、亮平お兄ちゃんのこと、大好きだから」
🖤「そっか……ありがとう、夏音。今の教えてくれて、嬉しかった。言い辛かったのに、話してくれてありがとう」
「ううん。話せてスッキリした!」
🖤「それなら良かった。あ。そのお兄さん? どんな人だったか教えてもらえる?」
「んー。優しかった。丁寧な話し方だったし。あと、お花がついてた」
🖤「花?」
「そう。ネクタイのとこに、なんか銀色の細いのついてて、そこにお花があったの」
これが、夏音と二人で話した全て。
それを、今度は深澤に伝えた。包み隠さず、全てを。
すると深澤は顎に手を当てて、難しい顔になってしまった。
🖤「……どう思います?」
💜「んー。これ、俺だけで処理できないかも。というか、なんで俺だけに話したの? みんなに話しても……いや、混乱するか、今話しても。阿部ちゃんの封印だけでも手一杯なのに」
🖤「でしょ。だから先にふっかさんだけにって思って。俺も一人で抱えきれなかったから。ラウールはクリエイト中だし、阿部ちゃんに言うと無理しそうだし」
💜「うん、いや、その判断でいいと思う。全員への通達はちょっと先にしよう。にしても……これ、また厄介なのが増えたなー。よりによって、マテリア鑑定と想像増大って」
🖤「想像増大ってあれですよね。マテリア量が増えるかもしれないって言ってた」
💜「そう。だから、夏音ちゃんの誘音の時期が一日ズレたんじゃないかって話してたじゃん。つまり、それが敵側に渡ったとするとさ、絶対、マテリア量増やしてくるだろ」
🖤「使い方が分かれば、ですけど」
💜「そこ。もう解決済みじゃん。マロウのマテリア鑑定があれば、使い方なんて一発」
🖤「あ」
💜「そう。最悪の組み合わせで持ってかれた」
🖤「……訳、分かんなくなってきた」
💜「俺も。いやでも、とりあえず分かった。かなりマズいの最上級ってことだけは理解した」
🖤「……どうします?」
💜「とりあえず、こっちは保留だね。今は目の前の、阿部ちゃんの封印解除の方。マロウたちのことはその後にする」
🖤「ですね」
話は一旦そこで区切り、ベッドルームを後にした。
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