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城プル
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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神殿の最奥に位置する大理石造りの地下浴場。
激戦の痕跡である血と泥を湯で洗い流したウェアウルフは、湯船からゆっくりと姿を現した。
濡れそぼった黒毛はずっしりと重みを増し、頑丈な体躯から水滴が絶え間なく滴り落ちて床を濡らしている。
その傍らには、すでに身なりを整え、茶色のマントと胸の黄色いリボンを身につけたMowlが立っていた。
愛用のモノクルを指先で軽く直しながら、彼は大きめのタオルを手に、呆れたような溜め息をひとつ吐く。
「……ウルフ殿。そのままでは拭き取る前に床が水浸しになってしまいます。一度身体を震わせて水を払ってください」
「ハン、断るね」
ウェアウルフは左の赤目を細め、濡れた黒毛を気にも留めずに首を振った。
「わざわざ力を使ってブルブル震えなくたって、お前がその布で丁寧に拭いてくれれば済む話だろ。ほら、頭から拭けよ」
そう言ってニヤリと不敵に笑う狼の態度に、Mowlの黒ハチワレの猫耳がぴくりと警戒の動きを見せた。
紳士としての理性を保ちつつも、ネコ科の気まぐれな悪戯心と、少しばかりの仕返し心が彼の胸中で芽生える。
「……そうですか。ならば、仕方がありませんね」
Mowlはタオルを片手に一歩踏み込み、ウェアウルフのすぐ隣へと身を寄せた。
「おい、おとなしく拭く気になった——」
言葉の途中で、Mowlはすっと背伸びをし、濡れそぼった大きな狼耳のすぐ根元へハチワレ顔を寄せた。
そして、微かにピンク色をした猫舌の間から、ごく自然に、甘く温かい吐息を『フウッ……』と直接耳腔へ吹き込んだのだ。
「ーーー〜〜〜〜ッッ!?」
イヌ科の極めて敏感な耳介を襲った、突発的かつ生理的な刺激。
ウェアウルフの脳髄を強烈な悪寒と甘痺れが突き抜け、意識して抑え込む間もなく、全身の筋肉が反射的に跳ね上がった。
バババババババッッッ!!!
ウェアウルフの巨体が激しく旋回し、頭から背中、尻尾に至るまでの毛並みが猛烈な速度で左右に打ち振られる。
溜め込まれていた水滴が豪快な飛沫となって全方位へ撒き散らされた。
「にゃあっ!?」
完璧に水を被ったのは、隣のMowlだった。
綺麗に整えていたはずのハチワレの毛並みも、胸の黄色いリボンも、一瞬にして水浸しになる。
濡れたネコ科の悲惨な姿で、Mowlは目を白黒させながら声を詰まらせた。
「な……なにをするのですかバカ狼ッ! 水を払えとは言いましたが、私めにまで引っかける奴がありますかッ!」
「当たり前だろ、いきなり耳に息吹きかけやがって! 生理現象だ、文句言うな!」
「私めが親切心でお手伝いしてるというのに…濡れたではありませんか!」
濡れネコになって毛を逆立て、抗議の猫パンチを繰り出そうとしたMowl。
だが、次の瞬間、彼の腕は空中での拘束を余儀なくされた。
ウェアウルフの濡れた大きな手が、Mowlの両腕をやすやすと掴み上げていたのだ。
「……待てよ、Mowl」
ウェアウルフの声のトーンが、一瞬で低く、耳の奥を震わせるような獣の熱を帯びた。
右目の眼帯の横、燃えるような赤目が怪しく歪み、イヌ科の「狩猟スイッチ」が完全にONになったことを告げている。
「自分から火をつけておいて、濡れただけで済むと思ってんのか?」
「え……? あ、あの、ウルフ殿……? 私めはただ、身だしなみを……にぁっ!?」
抗議の言葉は、急激な浮遊感によって砕け散った。
ウェアウルフは濡れて細くなった身体のMowlを抱き上げると、そのまま脱衣所の広いベンチへと激しく押し倒した。
ドスンと重い音が響き、逃げ場は狼の巨大な体躯によって完全に塞がれる。
「や……やめっ……! 冷たいですぞ、ウルフ殿の体毛が……っ!」
「冷たいなら、今からお前を温めてやるよ。……まずは、さっきの仕返しからだ」
「なっ…!——んっ!?」
ウェアウルフの熱い舌先が、Mowlの真っ赤に染まった黒い猫耳の根元へと、滑り込むように擦り付けられた。
チュウッと強い吸着音を立てて、ネコ科の最も敏感な領域が貪られる。
さらに、ウェアウルフはMowlの耳腔に向かって、意地悪く「フウッ……」と熱い 吐息を吹き返した。
「んぅ〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
今度はMowlの全身が跳ね上がった。
「あぁっ! ダメ……ッ! 耳は……耳の中はダメですっ! にぁぁ…っ!」
「どうだ? 自分の吹きかけた息の何倍も甘いだろ、Mowl……ッ!」
「んあッ……! んんっ……っ! 卑怯ですぞ……っ、力任せに……あぁっ!」
狼のざらついた舌が猫耳の裏側を丹念に舐め回し、耳輪のフチを甘噛みするたび、Mowlの口からは甘い悲鳴が漏れ出す。
抵抗しようと伸ばした前脚は、ウェアウルフの腕に爪を立てるのが精一杯だった。
「仕返しは……耳だけじゃ終わらせねえからな」
「っ……!? ウ……ウルフ殿……っ!」
濡れた毛並み同士が擦れ合い、浴場の熱気の中で甘い体臭が混ざり合っていく。
イタズラの代償はあまりにも大きく、Mowlは朝までの長い間、甘やかしの渦の中へと落ちていくのだった。