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塩 﨑 _ .
314
178
𝕔𝕠𝕔𝕠
7,286
もなか
79
めっちゃ長いです笑
申し訳ない😭😭
それでは👋🏻
仁人side
甘い余韻に浸っていたのも束の間。
まさかその数時間後、とんでもない大パニックに巻き込まれるなんて、俺たちは予想すらしていなかった。
――ッ、ピピッ! パシャシャシャシャ!!
「おい仁人! 顔隠せ、こっちだ!」
勇斗の鋭い怒鳴り声と、激しいカメラのシャッター音が夜の街に響き渡る。
どこでどう漏れたのか、「感情が高ぶると猫になる男子高校生」の動画がSNSで大バズりしてしまったのだ。
特定班の恐ろしい執念によって勇斗の家が秒速で突き止められ、自宅の周りはスマホを掲げた野次馬とフラッシュの嵐に囲まれてしまった。
命からがら裏口から逃げ出したものの、勇斗の家にはもう戻れない。
スマホを開けば、俺の猫姿の写真や「リアル化け猫発見」「尊すぎる」なんてコメントが狂ったように拡散されている。
「クソッ、俺のせいで……」
「気にするな。それより、今夜の逃げ場所だ」
勇斗が焦った様子でスマホを操作し、ある人物に電話をかける。
「あ、舜太? ごめん、今から上がらせてくれないか? 事情は後で話す!」
勇斗の唯一の初恋の相手、舜太。
勇斗からその名前を聞いた瞬間、俺の胸の奥がツンと痛んだ。
勇斗side
幼馴染の舜太のマンションに転がり込んだのは、2時を過ぎた頃だった。
「ホンマ急に何事かと思ったわぁ。まぁ入り入り、災難やったな」
出迎えてくれた舜太ちゃんは、ゆるいスウェット姿で、相変わらず柔らかい関西弁を話す。
俺たちより一つ年下で、昔からみんなの弟分みたいな、ほんわかした癒やし系の最年少だ。
整った顔立ちに、あざとかわいい雰囲気を纏っている。
「悪いな、舜太。本当に助かった」
俺が頭を下げると、舜太は「水くさいなぁ」とふにゃりと笑って、俺の肩をポンと叩いた。
その瞬間、後ろから「フシューッ!!」と、お馴染みの地獄の威嚇音が聞こえる。
見ると、仁人は大きすぎる俺のパーカーの袖をぎゅっと握りしめ、ものすごいジト目で舜太を睨みつけていた。
「……勇斗、その人が『舜太』?」
「お、おう。中学の時に引っ越しちゃったんだけど、最近こっちに戻ってきてさ」
舜太は首をこてんと傾げて、ふわふわの笑顔で仁人を見つめる。
「そうやで、舜太。君が噂の仁人くんかぁ、かわいらしいなぁ! 猫ちゃんになるんやって? 勇斗からよぉ話は聞いてるで。勇斗、君のことばっかりやったから」
「う、うわ、あざとい……!」
仁人は舜太の圧倒的な『あざとかわいい弟オーラ』に気圧されたのか、一瞬言葉を詰まらせた。
しかし、舜太がいたずらっぽく俺の顔を覗き込んできたことで、事態は急変する。
「何? 照れてるん? 勇斗は昔から分かりやすいなぁ。そういうとこ、俺嫌いおらへんよ?」
舜太がクスッと笑いながら、俺の髪に触れようと手を伸ばした。
「――っ、ちょっと、離れろ変態!!」
叫んだのは仁人だった。
赤面した仁人が、俺と舜太ちゃんの間に強引に割り込んでくる。
「何や、仁人くん。嫉嫉?」
舜太が面白そうに目を細めると、仁人の顔がみるみるうちに沸騰していく。
「し、嫉妬なんかじゃない! 勇斗はバカで変態だけど……その、俺の、飼い主っていうか……とにかく、そいつにベタベタ触るな!」
――あ、ヤバい。
仁人の感情メーターが完全に振り切れてる。
「あ、おい仁人、落ち着け! メーターが――」
ボゴォン!!!
激しい煙と派手な爆発音が、舜太の綺麗なリビングに響き渡った。
「にゃ、にゃあぉぉぉん!!(何が嫌いじゃないだコラァァ!)」
煙が晴れた床の上には、俺の大きすぎるパーカーにすっぽり埋もれた、一匹の茶トラ猫。
毛を逆立てて、舜太に向かってシャーシャーと全力で肉球を振り回している。
「わあ、ホンマに猫になった! すっごいなぁ、ぬいぐるみみたいやん」
舜太は全く怖がらずに、目を輝かせて猫の仁人をひょいと抱き上げた。
「にゃ、にゃあ!?(放せ! 勇斗、助けろバカ!)」
ジタバタと暴れる仁人。
俺は慌てて舜太から仁人を奪い取るように抱きしめた。
「す、すまん舜太! こいつ、照れるとすぐこうなるんだ!」
腕の中の仁人は、相変わらず俺の胸に顔を押し付けながら、ゴロゴロとフガフガが混ざったような声で鳴いている。
人間の時は意地張るくせに、猫になると嫉妬がダダ漏れかよ……。
舜太はニヤニヤしながら俺たちを見つめ、ぽつりと言った。
「勇斗、あんた初恋の相手俺の前で、ずいぶん必死やなぁ? どっちが本命か、もうハッキリしてるみたいやん」
仁人side
夜が明けて、翌朝。
朝の光が差し込むリビングで、俺は無事に人間の姿に戻っていた。
勇斗の大きすぎるパーカーを着たまま、ソファの隅っこで膝を抱える。
キッチンからは、トントンと小気味いい包丁の音と、出汁のいい香りが漂ってくる。
「勇斗、おネギこれくらいでええ? 朝はやっぱりお味噌汁やんなぁ」
「おう、サンキュ舜太。お前マジで手際いいな」
キッチンに並んで立つ勇斗と舜太ちゃん。
舜太ちゃんは少し萌え袖気味のスウェットを着て、ほんわかした笑顔で勇斗を見上げている。
勇斗も勇斗で、いつも俺に見せるオラついた態度とは違って、完全に「可愛い弟を甘やかすお兄ちゃん」の顔になっていた。
それを見ていたら、胸の奥がモヤモヤとして、なんだか無性にイライラしてくる。
なんなんだよ、あいつ……。
初恋の相手が、あんな可愛い年下キャラだなんて聞いてない……!
「はい、仁人くんの分。しっかり食べんと、また猫ちゃんになっちゃうで?」
舜太がエプロン姿のまま、お盆を持ってトコトコと歩いてきた。
「……ど、どうも」
差し出されたお味噌汁を受け取る。
一口すすると、めちゃくちゃ美味い。
それがまた悔しい。
「なぁ舜太、お前本当に料理上手くなったな。昔は包丁も握れなかったのに」
勇斗が感心したように舜太の頭をぽんぽんと撫でた。
ピクッ。
俺の耳が跳ねる。勇斗の手が、舜太の柔らかそうな髪に触れている。
「もー、子ども扱いせんといてよ、勇斗。俺ももう高校生やんか」
舜太は頬を少し膨らませて、上目遣いで勇斗を睨む。
……いや、完全にじゃれついている。
勇斗のバカは、鼻の下を伸ばしそうな勢いで「悪い悪い」と笑っている。
その瞬間、俺の胸の奥の『感情メーター』が、急激に沸点へと向かって急上昇を始めた。
なんで勇斗のやつ、俺の時は『変態』のくせに、あいつの前ではあんなに爽やかお兄ちゃんぶってんだよ……!
「……勇斗」
低めの声で、俺は名前を呼んだ。
「ん? どうした仁人、お代わりか?」
のんきに振り返る勇斗のシャツの裾を、俺は座ったまま、ギュッと力任せに引っ張った。
「っ……、こっち見ろ」
「え?」
「ご飯食べたら、すぐここ出るからな。……あと、あんまり他の奴の頭、簡単に撫でんな。バカ勇斗」
顔が熱い。
自分で何を言っているのか分からなくなる。
でも、勇斗の視線が舜太に向いているのが、どうしても我慢できなかった。
勇斗side
「……っ!」
仁人に裾を引っ張られ、その真っ赤な顔と、潤んだジト目で見つめられた瞬間。
俺の心臓がどくん、と跳ね上がった。
やべえ、コントロール……!
愛の出力コントロール……!!
必死にイメージする。
『健全距離感』……!!
でも、人間の姿で、あからさまに嫉妬をぶつけてくる仁人が可愛すぎて、俺のメーターも爆発寸前だ。
「お、おい仁人、そんな怒るなよ。舜太は昔から弟みたいなもんで――」
「弟でも、初恋だろ!!」
仁人が声を荒らげた、その瞬間。
ボゴォン!!!
「にゃああぁぁぁん!!(バカァァァ!)」
本日一回目の大爆発。
朝のリビングに白い煙が立ち込め、俺のパーカーの中から、再び怒り狂った茶トラ猫が飛び出してきた。
仁人はそのまま俺の膝に飛び乗ると、フシューッと威嚇しながら、俺の顎にペシペシと高速猫パンチを叩き込んでくる。
「痛い痛い! 仁人、落ち着け! ほら、煙が舜太のご飯にかかるだろ!」
「にゃー! にゃおーう!(知るか! 勇斗のバカ! ド変態!)」
そんな俺たちのドタバタ劇を見て、舜太ちゃんはご飯茶碗を抱えたまま、目を丸くしてポカンとしていた。
けれど、すぐに「ふふっ」と、いつも通りのほんわかした笑みをこぼす。
「あはは、おもろいなぁ。仁人くん、ほんまに勇斗のことが大好きなんやね」
舜太はトコトコと近づいてくると、俺の膝の上で怒っている猫の仁人の背中を、優しく撫でた。
「俺のことは心配せんくて大丈夫やで、仁人くん。勇斗の初恋なんて、大昔のただの勘違いやし。今の勇斗の目ぇ見てみ? 君のことしか映ってへんよ」
「にゃ……?」
仁人がピタッと動きを止め、丸い目で舜太ちゃんを見上げる。
「な、何言ってんだよ舜太!」
顔を真っ赤にして叫ぶ俺を、舜太は「ウチ、最年少やけど、二人より大人やもんねー」と、いたずらっぽくウインクして見せる。
腕の中では、猫になった仁人が「るぅ……」と不満そうに喉を鳴らしながら、じっと俺たちを見上げている。
仁人の嫉妬。
SNSの大炎上。
そして、あまりにも出来た元・初恋の年下。
なんだかもう、脳内のキャパシティが完全に限界を超えてしまった。
あーーーーもう!! 俺はどうすればいいんだよ……っ!!
仁人のメーターを上げないように必死に自分の感情をセーブして、でも仁人のことは可愛すぎて爆発しそうで、その上、お世話になってる舜太にはこんな風に全部見透かされてからかわれて。
パニックが頂点に達した俺は、考えるより先に、目の前にいた舜太ちゃんの体を両腕でギュッと抱きしめていた。
「舜太…」
「えっ!? う、わぁっ!?」
ほんわか余裕を崩さなかった舜太が、突然の俺のハグに「ふぇ?」と間の抜けた声を上げて目を丸くする。
スウェット越しに伝わる舜太の体は小さくて、昔と変わらないおひさまみたいな匂いがして、俺はただただ現実逃避するように、その細い肩にガシッと顔を埋めた。
「助けてくれ舜太……。俺、仁人が可愛すぎて頭おかしくなりそうだし、SNSの奴らには家特定されるし、もうキャパオーバーだわ……!」
「ちょ、ちょっと勇斗!? 離して、俺、今めっちゃびっくりしとる……っ!」
普段あざとい舜太が、耳まで真っ赤にしてバタバタとジタバタ暴れる。
その時だった。
俺の腕の隙間――ちょうど俺と舜太の胸が重なる、そのド真ん中から。
「ギャウァァァァァァァウ!!!!(離れろド変態ウルトラバカ勇斗ォォォ!!!)」
この日一番の、鼓膜が破れそうな大絶叫が響き渡った。
忘れていた。
俺の腕の中には、今、猫の姿の仁人が挟まれていたということを。
しかも、あろうことか『初恋の相手』と『大好きな飼い主(?)』のハグの肉壁にされるという、仁人にとってはギルティ以外の何物でもない状況に追い込んでしまったということを。
ボッゴォォォォォン!!!!!
朝のリビングが完全に真っ白になるほどの、過去最大級の爆発音が鳴り響いた。
「ぶほっ!? けむっ……!」
「うわ、ゴホゴホッ……!」
激しい煙に巻かれ、俺と舜太ちゃんはたまらずお互いをパッと離して激しく咳き込む。
やがて、ゆっくりと白い煙が晴れていくと、そこには――。
「……ハァ、ハァ……、お前、マジで、いい加減にしろよ……っ!!」
大きすぎる俺のパーカーの首元をガバッと手で広げ、肩を大きく上下させて激怒している、人間の姿に戻った仁人が立っていた。
あまりの怒りと羞恥心で、顔だけじゃなく、鎖骨のあたりまで真っ赤に染まっている。
「ひ、仁人……!? 戻っ……」
「戻ったよバカ!! 戻らざるを得ないだろこんなの!!! なんで俺を挟んで男同士で抱き合ってんだよ!! 意味分かんねぇよ!!」
仁人は涙目で怒鳴り散らすと、床にへたり込んでいる俺の胸ぐらを、両手で思いっきりグイッと掴んで引き寄せた。
「おい、勇斗。お前の初恋がなんだか知らないけどな……っ」
顔が、さっきの午前0時のキスよりも近い。
仁人は鼻息が荒いまま、俺の目を真っ直ぐに睨みつけて、地響きのような声で言い放った。
「お前がハグしていいのは、俺だけだ。……分かったか!?」
「あ……」
その瞬間、俺の頭の中で何かがパチンと弾けた。
あ、無理。
愛の出力コントロール、強制終了
今度は俺の胸の奥のメーターが、音を立ててぶっ壊れた。
仁人のあまりの独占欲と、人間の姿での心臓が止まりそうな大迫力の告白に、俺の理性が完全に消し飛んだのだ。
「……仁人」
「な、何だよ、人の話聞いて――」
言い終わる前に、俺は今度こそ、人間の姿の仁人を正面から力いっぱい抱きしめ返した。
今度は誰も挟んでいない。
仁人の温かい体温が、どくどくと速い心臓の鼓動が、ダイレクトに俺の胸に伝ってくる。
「わ、分かった。もう絶対他の奴には触らない。だから、俺のことだけ見てろ」
「っ……、ば、バカ、離せ……! 舜太の前だぞ……!」
仁人は真っ赤になって俺の胸をポカポカ叩くけれど、その手にはさっきみたいな力は入っていなくて、結局は俺の背中にそっと手が回された。
そんな俺たちの熱い抱擁を前に、完全に巻き込まれ事故に遭った舜太は、乱れたスウェットを直しながら、ハァと深いタメ息をついた。
「……ほんま、朝からごちそうさまやわ。ウチ、最年少やのに、なんで二人の熟年夫婦みたいな痴話喧嘩に付き合わされてるんやろなぁ……」
お味噌汁の湯気が寂しく立ち上る中、舜太の呆れ果てた関西弁だけが、静かにリビングに響いていた。
fin
スクロールお疲れ様でした🙏💦
コメント
1件
ああもう、今回のエピソードめっちゃ良かった〜!!😭💕 仁人の嫉妬爆発が可愛すぎて、猫姿で威嚇するところとか「ハグしていいのは俺だけ」発言とか、胸がきゅうきゅうしたよ…!舜太ちゃんの「ごちそうさま」って関西弁のツッコミも最高で、二人のドタバタを優しく見守ってくれる姉御肌な感じがたまらんかった🥺 今回も甘さとコメディのバランス完璧だったよ、mo-さん!続きめっちゃ待ってる⋆♡