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ぬいぬい
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東京の物価に圧倒されて上京2日目で金欠になった僕は、路地裏で拾った怪しげなチラシを頼りに「黄泉國探偵事務所」へ。そこで出会ったのは、顔はいいのに真顔で不穏なボケを連発する謎の男・黄泉國 尊だった。
採用から三日目、事務所に「昨日が盗まれ、口座から300万円が消えた」という顔色の悪い男がやってくる。
黄泉國が「恐竜にカツアゲされた」と真顔でボケる中、突如「彼が失ったのは『昨日』ではない」と、事務所の空気を凍らせるようなセリフを放ったのだった
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「彼が失ったのは『昨日』ではない。……すでに、ね」
黄泉國さんの目が怪しく光り、事務所の温度がすっと下がった気がした。
僕はゴクリと唾を飲み込む。ついに「冥探偵」の本領発揮か!
「黄泉國さん、一体どういうことですか!? 彼は何を失って……」
「ええ。彼は昨日ではなく、『前髪の生え際』をすでに失っています。おそらく3年前ほどから徐々に」
「不適切な個人情報を真顔で開信するな!!! 今関係ないだろ!!!」
「ひどい……! 確かに最近気にして育毛剤を買いましたが、今は300万円の話を……!」
依頼人の男が頭を抱えてガタガタと震えだす。
「冗談はさておき」
黄泉國さんはすっとデスクに両手を突くと、依頼人の顔を至近距離で覗き込んだ。
「人との関わり方が異常」な彼は、相手のパーソナルスペースを完全に無視して、その虚ろな目を凝視する。
「あなたが盗まれたと言っている『昨日』の記憶。そして消えた300万円。……その答えは、あなたのそのスーツの袖口についた『お線香の匂い』、『防腐剤の特有の匂い』がすべて語っています」
「え……?」
「あなたが昨日いたのは、タイムスリップした過去でも、強盗の目の前でもない。『あなた自身の葬儀』ですよ」
「……は?」
僕の口から間抜けな声が出た。
黄泉國さんは一歩後ろに下がり、相変わらず感情の読めない真顔のまま、淡々と事実を突きつけ始めた。
「一昨日、あなたは不慮の事故、あるいは突然の病で亡くなっている。そして昨日、あなたの親族によって通夜と葬儀が執り行われた。消えた300万円は、あなたの口座から引き出された正当な『葬儀費用と戒名代』です。手帳やスマホに昨日の予定がないのは当たり前だ。あなたはもう、現世のスケジュールを動かす存在ではないのですから」
「な、何を言っているんだ……! 私はこうして生きている! 体だってある!」
男が取り乱して自分の両手を見る。しかし、その手はどこか透けているようにも見えた。
「黄泉國さん、じゃあこの人は……」
「ええ、幽霊(おきゃくさま)です。当事務所は最初に言ったはずです。『現世の未練の整理まで幅広く取り扱っている』と。彼は自分が死んだ現実を受け入れられず、記憶にモザイクをかけて、生前の悩みのふりをしてここに迷い込んだのですよ」
男は呆然と自分の手を見つめ、やがてポロポロと涙を流し始めた。
「そうか……私は、死んだのか。会社が忙しくて、遺される家族のことが心配で、どうしても死にきれなくて……」
「未練があるなら、今からでも家族に会いに行けばいい。あなたのスマホのメッセージアプリ、まだ『送信中』のまま止まっている未送信の遺言があるでしょう。幽霊になった今のあなたなら、それくらい届ける力はあるはずです」
黄泉國さんの言葉に、男はハッとしてスマホの画面を見た。そこには家族への感謝の言葉が綴られていた。
男の姿が、光の粒子のように少しずつ薄くなっていく。
「……ありがとう、探偵さん。自分の行くべき場所が分かりました」
静かに微笑みながら、男の姿は完全に消え去った。
残されたのは、男が座っていたソファと、静まり返った事務所。
「……行っちゃいましたね」
僕は初めて直面した「冥探偵」の仕事に、じわじわと鳥肌が立っていた。本当にこの人、何者なんだろう。家族も年齢も不明だけど、死者と生者を繋ぐような、とんでもない力を持って――
「さて、助手くん」
黄泉國さんが真顔で僕を振り返った。
「はい!」
「今日の依頼料ですが、彼は幽霊なので『現世の通貨』を持っていませんでした。代わりに彼の強い感謝の念(霊素)を私の右腕にチャージしておいたので、今月の君の給料は『徳』で支払います。来世で大富豪になれますよ」
「現世で餓死するわ!!! 3日でいいから現金をくれよ!!!」
僕の切実な叫びが、今日も東京の路地裏に虚しく響き渡るのだった。
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お金って大事だよね(なんで今?)
コメント
15件
なんか出てあるwwww
わあああ第4話もめっちゃ面白かった!!😭✨ 「昨日が盗まれた」って依頼からまさかの「自分はもう幽霊でした」展開、めっちゃ痺れた…!最初の前髪ボケで笑わせといてからの、一気にシリアスに持っていく構成が天才すぎるよ…黄泉國さんの「あなた自身の葬儀」の切り返し、鳥肌立ったし、依頼人が光になって消えるところはじんわりきた(´;ω;`)💦 最後の「給料は徳で支払います」でまたぶっこんでくるの、尊さんのキャラ崩れなくて好き!!現金で払ってあげて!!笑