テラーノベル
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「消えた昨日と300万円」の依頼人は、実は自分が死んだことに気づいていない幽霊だった!
冥探偵・黄泉國 尊の見事な(?)推理によって男は成仏したものの、報酬はまさかの「徳(来世で有効)」。
現世で餓死寸前の僕は、一刻も早く「現金を払ってくれる生身の人間」の依頼人が来ることを激しく祈るのだった。
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真夏の昼間だというのに、その女性が部屋に入ってきた瞬間、事務所の空気が一瞬で氷点下に切り替わったのが分かった。
女性は深く帽子を被り、青白い顔で小さく震えている。
「……助けてください。もう、一週間も眠れていないんです」
「ええ、ようこそ。当事務所は迷子の子猫から、あの世の住民票の紛失届まで幅広く対応しております」
「役所のブラックホールみたいな仕事増やすな」
僕がいつものように突っ込むが、女性の表情は一切晴れない。彼女はバッグから、古びた「小さなガラスの小瓶」を取り出した。中には透明な水と、川底で拾ったような黒い小石が一つだけ入っている。
「これ……一週間前に亡くなった、私の年の離れた妹の部屋にあったものです。妹はアクアリウムが趣味で、部屋でたくさんの魚を育てていたのですが……彼女が亡くなってから、奇妙なことが起きるんです」
女性は小瓶を握りしめ、声を震わせた。
「夜、私が自分の部屋で寝ようとすると、どこからか『ぶくぶく……ぶくぶく……』と、水槽のエアーポンプの音が聞こえてくるんです。妹の部屋の水槽は、四十九日が終わるまではと、私が毎朝綺麗に手入れをして、水も入れ替えているのに……夜になると、音が私の耳元で鳴り響くんです。まるで、妹が水の中で溺れて、助けを求めているみたいに……」
妹の死と、夜な夜な響く水槽の泡の音。
あまりにも生々しい霊的な相談に、僕は背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。これは今までの勘違い事件とは訳が違う。本物の「未練」だ。
僕が緊張に身をこわばらせる中、我が「冥探偵」は椅子からゆっくりと立ち上がり、すっと人差し指を立てた。
「なるほど。それは極めて深海な事態ですね。つまりあなたのベッドの真下に、夜な夜な素潜りの練習をしに来ているプロの海女さんが潜伏している可能性が極めて高い」
「どんな不法侵入だよ!!! 階下の住人だとしても大迷惑だわ!!!」
「冗談はさておき」
黄泉國さんは女性が持ってきた小瓶を取り上げると、やはり「人との関わり方が異常」な距離感で、小瓶の水を真顔で見つめた。
「あなた。妹さんが亡くなった『本当の理由』を、まだ受け入れていませんね?」
「え……?」
女性が息を呑む。
「彼女の部屋の水槽。あなたが毎朝『綺麗に手入れをしている』と言いましたが……その水は、本当に現世の水ですか?」
黄泉國さんの光のない瞳が、怪しくきらりと輝いた。その瞬間、小瓶の中の水が、誰も触れていないのに「ぶくぶく……」と激しく泡立ち始めたのだ。
「ひっ……!?」
僕がおののいて後ろに下がる。
「助手くん、上着を持ちなさい。今夜は『こちら側』ではなく、妹さんの残した『水底』へ潜ることになります。……どうやら彼女は、まだ冷たい水の底で、姉が迎えに来るのを待っているようだ」
黄泉國さんは真顔のまま、小瓶の水を床へ一滴垂らした。すると、コンクリートの床がまるで深い沼のように黒く濁り、底なしの深淵が口を開けた。
「、、、お金がないせいで服がねえ」
はあ今回の事件は大変になりそうだ。
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コメント
3件
いい感じじゃん
読んだ読んだ〜!!😳✨ 今回も黄泉國さんのズレた推理で笑ったけど、最後の「冷たい水の底で姉が迎えを待ってる」って台詞がめっちゃエモい…!!💦 水槽の水が泡立つ描写がゾクゾクしたし、助手くんの「お金なくて服がねえ」で現実に戻されるギャップも好きすぎる笑 続きで水底に潜る展開、絶対泣くやつじゃない?!次回楽しみにしてるよ〜!!🌸
蒼羽 俊@元Asou
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