無事に帰ることができたお祝いをするために、次の日の仕事終わりに、走り屋のリーダーをしている友人が経営している焼き鳥屋へ、橋本と飲みに行った。
残念ながら翌日も仕事がある宮本は、安定のソフトドリンクで乾杯。橋本はわざわざ有給をとったとのことで、中ジョッキの生ビールで乾杯した。
よく食べよく飲みよく喋り――互いの無事を確かめ合うように、楽しいひとときを過ごした。あまりに楽しかったのか、橋本の飲みっぷりがいつも以上だったこともあり、べろんべろんに酔っぱらっていた。
泥酔状態で歩けなくなった橋本を、仕方なく(いや、むしろ喜んで)宮本が背負って自宅に連れ帰ったのだった。
「陽さん大丈夫ですか? 気分は悪くないですか?」
前にも似たようなことがあったのを思い出しながら、ベッドに横たえさせて話しかけると、目が覚めたらしい橋本はニッコリ微笑む。
「らいじょうぶら。ましゃきが優しくしてくれたかりゃ、全然平気」
呂律が回らない橋本の様子に、嫌な予感のクラクションが宮本の脳内で鳴った。良い予感は大抵外れるのに、悪い予感というものは不思議と当たる確率が高い。
「陽さんってば相当酔ってるみたいですから、お水を飲んだほうがいいかもしれませんね……」
それを踏まえて、橋本に注意を促してみた。冷たい水を飲んで、少しでもいいから酔いを覚ましてほしかったのに――。
「飲むなら、おまえの(自主規制)が飲みたい」
「そっ、それは俺の躰の準備というか、この場の状況がそんな雰囲気じゃないのでごめんなさい!」
(ひーっ! 酔っ払った陽さんのエロモードが全開すぎて、対処に困っちゃうよ)
「なんで無理なんら。俺のことが嫌いなのか?」
「嫌いじゃないです。むしろ大好きですよ」
「俺もましゃきが好き、愛してりゅ」
ベッドの上に横たわる橋本が、自分の中に溢れ出る愛情を示すような笑みを浮かべて、嬉しそうに告げた。目尻に浮かぶ笑い皺が、橋本の持つ愛らしさを一層引き立てているように見えるせいで、胸が無償にドキドキする。
そこはかとなく淫靡な雰囲気になりつつあるのを、交わし合った告白でひしひしと感じ、どうにも身の置き場がなくて、宮本は視線を右往左往させるしかなかった。
「雅輝、なぁまだ?」
「はい?」
落ち着きのない宮本になされた疑問に、彷徨わせていた視線を橋本に注いだ。
「俺の股間は、準備OKなんだぞ」
「やっ、ええっ!? 触ってないのに?」
「おまえが大好きって言った瞬間に、ぎゅんときた」
(胸が痛いくらいに、ぎゅんとくる感じはわかるけど、股間にぎゅんときたことがないので、その感覚がわからなすぎる)
「へ、へぇ。それはそれですごいかも……」
「それだけじゃにゃい。後ろのピーも(自主規制)していて、ましゃきを欲しがってる」
「う、うわぁ。陽さんの躰の中は、すっごく大変なことになってるんですね……」
「だから早くましゃきの口でピーをピーしたり、(自主規制)の部分を満たしてほしいのら」
(ピー音と自主規制の連続で、何がナニやら表現の自由が不自由になってる!)
「まったく。陽さんってばただヤりたいだけで、俺を誘ってるでしょ?」
「バーカ、大好きなましゃきに愛されたいからに決まってるらろ」
橋本は横目で意味深な視線を投げかけつつ、自身の下半身に右手を伸ばす。
「んふっ、あぁっ」
橋本の手が猥らな感じで撫でさするうちに、スラックスがはち切れんばかりに膨らんでいった。反対の手は胸元辺りを弄るように触れているからか、ワイシャツの上からでも乳首が勃っているのが、明らかにわかってしまった。
恋人が乱れる姿を宮本は目の当たりにして、ごくんと喉を鳴らす。欲しくないと言えば嘘になる。むしろ、そのまま襲ってしまいたい衝動に駆られたが――。
「駄目ですよ、陽さん。酔いに任せてそんなコトをしちゃ。あのときみたいに、あとで絶対に後悔するくせに」
キョウスケが好きだというのに、酔った勢いにまかせて自分を押し倒し、襲おうとしたときのことを、セリフに混ぜて伝えてやる。そうすることにより、互いにブレーキがかかると考えた。
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