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ニキしろ
ニキ×しろせんせー
解釈違い有
一番
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ニキに彼女ができた。
Discordで編集作業に入れ浸っていると、突然ニキがサーバーに入ってきた。勢いよく話し始めた様子から、相当興奮しているのが伝わってくる。どうやら俺にいち早く伝えたかったらしい。
俺はキーボードに置いた指を止めた。言葉が出てこない。
もちろん過程は知っていた。ニキの相談に乗っているうちに、彼女の顔もタイプも、それとなく聞き出していたから。
「おー、良かったな……笑」
「ボビーが相談に乗ってくれたおかげでもあるし! 今度飯行こうよ。その時彼女も紹介しようか?」
「……いや、遠慮しとくわ。笑。付き合ってすぐは二人で楽しみたい時期やろ」
断った本当の理由は、そんな綺麗なものじゃなかった。
彼女と並んで歩くニキを見たくなかった。 最強無敵連合の中で、ニキの相棒として一番近くにいるべきは俺だと思っていた。周りからも、本人からも、そう思われているはずだったのに。その隣が、急に彼女で埋め尽くされるなんて……想像しただけで胸がざわつく。
一つ、言えなかった我儘がある。 『ご飯は二人だけで行きたい』。
でもそんな身勝手なこと、口が裂けても言えるはずがない。気まずさに耐えきれず、俺はサーバーを抜けた。編集作業をする気力も完全に失せ、ベッドにダイブした。 行先のない感情を枕にぶつける。素直におめでとうと祝ってあげれない自分やニキの言動に一喜一憂する自分が嫌になる。 重い瞼を閉じて、その日は何も考えないことにした。
次の日、予定はなかった。 こういう日に限って何もない。忙しければ少しは気を紛らわせられたのに、と頭を抱える。
するとニキからLINEが来た。 どうせ明日の撮影の業務連絡だろうと思い、後回しにしようとUber Eatsを開いたが、結局何も食欲が湧かない。 そこへりぃちょから「ご飯行かない?」と通知が来た。 少し時間を置けばお腹も空くだろうと思い、素直に承諾した。
出かける準備をしようとベッドから起き上がり、服を選ぶ。 洗面台の鏡を見ると、寝不足のせいか目の下に薄いくまができていた。 目立つほどではないので、コンシーラーで軽く隠す。髪を整え、タクシーを手配した。 時計を確認すると予定の30分前。なかなかの好タイムだ。
店に着いてタクシーを降りると、りぃちょが意外にも早く来ていて手を振っていた。
「りぃちょ、珍しく遅れてないやん……」
「うわ、何それ酷い笑」
「遅刻魔やと思ってたわ〜」
「俺も約束くらいは守れるからね?」
雑談をしながら店に入り、メニューを見ていると、真昼間からアルコールを飲もうとするガキを横目に、ニキからの連絡をまだ返していないことに気づいた。 一応長押しして内容を確認をしてみる。
『明日の撮影、都合悪くて無理かも』
ドタキャンか。 事前に連絡をくれるのはありがたいが、「都合悪くて」とはなんだ。もっと具体的に説明してほしい。
スマホをじっと見つめていると、りぃちょが正面から横に回り込んで画面を覗き込んできた。
「わ、ドタキャンじゃん」
「そうやな……明日早起きせんで済むわ、笑」
「てか都合悪くてって何?」
「ニキニキに聞いてみようよ」
「いやええわ、そんなめんどくさい彼女みたいな」
「もう皆、重々承知だよ、そんなの」
「そんなのって……何やねん」
頭の中で整理しようとしたが、ろくな結論が出てこない。早稲田の頭から 出てくるのは馬鹿みたいな考えばかりだったから、スルーすることにした。
ぼーっとしている隙に、りぃちょが勝手に俺のスマホを奪って文字を打ち始めた。
「何勝手に送ってんねん!」
「せんせーも気になるでしょ? ニキニキの都合とやら」
「まぁ……そうやけど!」
「なら既読待つのみだねー」
反論できずに言いくるめられていると、すぐにバイブが鳴った。 開いてみると、ニキからの返信。
『なにボビちゃん、そんな俺のこと気になる? 笑』
期待を裏切るような、はぐらかした返事だった。 りぃちょも「つまんない」と言わんばかりに顔をしかめ、届いていたドリンクを飲み始める。
俺は仕方なく返信を打った。
『彼女できたからって浮かれてんちゃうぞ』
できるだけテンションを合わせて、明るく装って。 少し置いて、やはり気になって追いLINEを送る。
『で、明日何があるん?』
返事はすぐに来た。
『まぁ端的に言うと彼女が』
そこまで打ったら察しろ、という感じの文章。 俺は不満を押し殺してスタンプだけ返し、会話を終わらせた。
スマホをしまうと、さっきまで抑えていた感情が一気に溢れ出した。
「撮影より彼女優先するとか、有り得んやろ!!」
「今までのニキニキじゃありえないよね〜」
「そういうめんどくさい奴嫌いとか言っとったやん!!」
「まぁ付き合って数週間って、そういうもんじゃない?」
「そういうもんって何やねん!こっちは数週間前から予定してた撮影をドタキャンされとんやで!?」
「たしかにそれはニキニキが悪いね〜」
「対して、ニキのこともろくに知らんような奴がノコノコ予定に割り込んできて図々しいねん!!」
腹が立って仕方ない。 どこかで聞いたことあるネットミームの真似をするりぃちょに突っ込む余裕すらない。
「……なんで俺が一番やないん」
ボソッと呟いてしまう。すると一瞬りぃちょが驚いた顔で俺を見た。 聞こえないほどの小声にしたつもりだったのに。
「めっちゃニキニキのこと好きじゃん笑」
「そりゃあ、友達が彼女優先されたら嫌やろ」
「いや、ベクトルが違くて。LIKEじゃなくて、せんせーはニキニキに対してLOVE寄りの好きだと思うよ?」
「は……?」
俺は一瞬、頭が真っ白になった。
こいつは何を言っているんだ? 俺とニキは相棒だ。それ以上の関係を望んでいるわけじゃない。 それ以前に、俺たちは男同士だ。最近は多様性だとか言われるが、俺には無縁の話だ。 恋愛対象は当然女で、男なんて眼中にないし。
自分より年下に恋心を指摘されるほど、俺は無知じゃない。
「どこをどう受け取ったらそうなんねん」
「勘もあるけど、もう溢れ出てる感じなんだよね」
りぃちょのあやふやとした言葉に、俺は思わず眉をひそめた。
「溢れてるって……何がや。意味わからんわ」
俺はフォークを乱暴に置き、残っていたドリンクを一気に飲み干した。 喉が熱い。 でもそれ以上に、胸の奥がざわついて仕方なかった。
コメント
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今回もいい作品で読んでて楽しかったです! 続きが気になります!!