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#タイムスリップ
えれめんたる
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#架空の病気
えれめんたる
15
秋の風に身を委ねながら、俺は目当ての看板を探す。もう何度通ったかわからないほどの、いつもの通り。いつもの景色。いつもの本屋を目指して。
昔から俺は、 物語が好きだった。それも、御伽話や、童話が。高校生にもなって。なんて幾度と言われたし、バカにされた。それ でも…好きな物は好きだ。
あの夢と空想で生まれた空間が、胸踊るオープニングが、淡く儚いエンディングが、その全てが、俺は好きなんだ。
そんなふうに考えていると、いつしか目的地へとついていた。さあ、扉を開けよう。今日は何があるかな。どんな本があるかな。そんなことを考えているとーーそこに、ふといきなり、赤い目の白ウサギが一羽、そばを駆け抜ける。
「…は?…ウサギ?」
にわかに信じ難い。確かにこの街は田舎寄りだ。だがウサギが出るなんて聞いたことない。だが、確かにウサギだった。気のせいだ。幻覚だ。そんなこと、何度も思っている。だが、どうしてか…追いかけないといけない。そんな気がした。
気づけば、無我夢中で走っていた。森に入り、ウサギを追いかけ、見失わないよう、必死に。息を切らしながら走った先には、懐中時計を見ているウサギがいた。
「危ない危ない…遅刻するところじゃった…」
耳を疑った。おかしいとは思っていたが、まさか喋るなんて。そのまま、ウサギは穴の中へ飛び込んでいった。
「っ…はぁ…はぁ…マジかよ…」
足を止めて、穴を覗き込む。奥は見えない。真っ暗。音も、光も、何も見えない。人一人入れるくらいの大きさ。
「……アリスだよな…これ…」
馬鹿馬鹿しいと思いながらも、自分の中の知識が訴えかける。『アリスの不思議な国』ルイス・キャロルが著作とされる、有名な童話の一つ…その冒頭と、今の状況は酷似している。
「…そんなわけ…」
理性ではわかってる。”入るな”と。だけど、自分の中の好奇心が、本能が、”入りたい”と、そう言って仕方がない。
「こんな時…アリスならどうした?」
そうだ。迷わず飛び込んだじゃないか。迷う必要なんかない、やりたいままに飛び出そう。
覚悟を決めて、穴に飛び込む。暗く、土の匂いの染みつく穴の中に。不思議とつっかえることはなく、自分でも驚くほど滑らかに滑っていった。
長い。とにかく長い。無限にも感じる時間を、ひたすらに過ごした。刹那、パッと光が視界を覆う。
「っ眩しっ…」
ドサッと地面に落ちる。一体どうなっているのだろうか。空が赤い。夕暮れよりも濃く、夜よりも暗い。そんな気さえしてくるような、赤い赤い空。
「いってて…」
目を開き、辺りを見渡すと……辺り一面、血の海であった。川は赤黒く染まり、草は焼かれちぎられ、幻想的な世界などなかったかのように、嘲笑うかのように、ただ、恐ろしかった。
「……は」
なんだよここ…どうなってるんだ…!
尻餅をついたまま、思わず後退する。コツン。と何かに当たった。
「なっ…んだ…これ…」
くすんだ白色、灰色混じりの無骨な色。まるで人間の手のひらのような形をして……違う。まるでなんかじゃない。白骨化しきっていない、ほんのりと血肉のついた…人骨。指先、肘と骨があり、その先はなかった。何かに千切られたのか、あるいは。そんな妄想ばかりがよぎる。
「…なんだよここ…俺は…どこに来ちまったんだ…!」
虚しい、悲痛な声は、赤き空へと飲み込まれていった。
その時、ガサガサと、草をかき分ける音が聞こえた。
「っ…」
じわり、じわりと音が近づく。何がくるんだ。どんな奴が来るんだ。空想に特化した俺の脳みそは、どうしても恐ろしい方向へと考えてしまう。想像力は、人間の武器であり、同時に弱点だ。
だが、聞こえてきた声は、女性のものだった。
「あなた……人間よね。どうしてここに」
面を食らった後、恐る恐るその子の顔を見る。…アリスだ。水色のワンピース。ブロンドのロングヘア。リボンやヘアバンド。一般的に語られる、不思議の国のアリスの見た目そのものだった。だが…どうしてか、俺は不思議な威圧感を感じた。まるで、歴戦の猛者のような。あるいは、軍隊の隊員のような。
「現世から落ちてきた…まさか、あの話は本当に…ねえ。どうやってここにきたの」
「え…ウサギを追いかけたら…あ、穴があって…」
「それは、喋るウサギ?服を着ていて、時計を持っているような…そんなウサギ?」
「あ、そうだけど……」
捲し立てるような彼女の口調に、思わず怖気付いてしまう。だが、そんな自分とは裏腹に、彼女の声は、どんどんと上がっていった。
「お茶会のメンバーが見つけたのね…!ついに…現世への脱出口を!あなた、それはどこにあったの!」
「えっ…と……わ、わからなくて…」
「あーそうよね、ごめんなさい!まだ慣れてないものね。人間はすぐ壊れるのだから、大切にしないといけないわね!」
ついていけない。この子にも、言い方にも、世界にも。そう思っていると、不意に声が響いた。いや、声とは言えない、何かを引き摺るような、ぐちゃ…ぐちゃ…とした音が、響いた。
「…あなた、走れる。立って」
「は…?いや、まず何が…」
ぐちゃ…ぐちゃ…そう聞こえる先を見ると、思わず嗚咽が漏れた。肉塊の集まり、いや、よく見れば何か生き物が、無理やり接合されたかのような、歪な体をしている。頭が複数あり、豚の体や人間の頭が、男女関わらず結びついている。
「ひっ…な、なんだよあれ…!!」
「いいから立って!今は前衛がいないの!逃げるよ!」
彼女の声を仕切に、体を起こそうとする。ああ、ダメだ。腰が抜けた。なんで今、こんな時に限って。最悪だ。そんなことを考えていると、その化け物が、複数の口を開いた。
『ぉまえは豚だよ』
『わあしはお料理番ね』
『おレは豚や牛をぐちゃぐちゃのミンチにする人』
「っ…早く立って!あなたの情報が必要なの!お願い!時間を稼ぐから!…お茶会メンバー!」
彼女がそう口にすると同時に、どこかから、白ウサギ、トランプの兵士、ネズミなどが現れた。
「ねず…っはぁ!?どこから…というか、あの化け物はなんだよ!」
彼女は苛立ちを隠せない様子で、こう言い放った。
「私の能力!友達!あの異形は、物語の怪物!私たちはそう呼んでいる!何かの物語がベースになっていることはわかっているけど……それ以外は何もわからない!」
なんだよそれ。なんだよ。見れば、ウサギやトランプたちは勇敢に…無謀に立ち向かっている。
『小刀で咽喉を切りひら、切り、きりひら、きひゃひゃ』
怪物は、容易くウサギたちを切り伏せる。奮闘ですらない、一方的な惨殺だ。屠殺するかのように。
「立って!逃げるの!」
…無理だ。まだこの世界に来て一時間も経っていないのに、そんな急に…俺には無理だ。そんな、もう動けない。
『俺は豚や牛を、う、牛豚、潰す潰す潰す潰す』
…なんだ。この違和感。いや、違う、違和感なんかじゃない。………既視感?
「っ…白ウサギが…もう…!」
ずぷり。ぐちゃり。ビリリ。次々と倒れていくウサギたち。
「…牛や豚を潰す人……豚…小刀…屠殺…屠殺…?」
さっき、彼女は、物語がベースになった怪物といった。もし、それが本当だとすれば。
「子供たちが屠殺ごっこをした話!!」
「な…なんのこと!それは何!逃げてって言ってるでしょう!」
「こいつは、多分、その話がベースになっている!」
「なんでそんなこと…あなたにわかるの!」
「いいから信じて!こいつらに死の概念は!」
「あ、あるけど…!」
ある。あるのなら…さっき、あの怪物は役割を決めた。だとすれば、対策ができる。
『りん、りんごor銀貨。ぎん、かかかかか』
「役割を決める!お前は豚だ!」
そう怪物に叫ぶ。すると、怪物の動きはピタリと止まった。
『わたしは料理番』
『おレが豚』
『潰さなきゃ』
次の瞬間、怪物は自らの体を、小刀で切り裂いていった。
『潰さなきゃ。潰さなきゃ。潰さなきゃ。』
血が飛び、肉が裂け、悲鳴が聞こえる。
『イタイイタイイタイ』
それでも、怪物の動きは止まらなかった。
「…嘘」
彼女がそう呟く。俺と彼女は、見ることしかできなかった。自らの肉体を裂く怪物のことを。…そして怪物は、二度と動かなくなった。
コメント
6件
想像より遥かにグロテスクだった〜 アリスの話も、子供たちが〇♡♡♡た話も知らないけど、2つの話しが混合?してて、そこにオリジナルの主人公君がプラスされた感じ、、、ですかね? 童話があるなら、元ネタから読んでみよっかなって思います! ちなみに、〇殺の、〇の字が読めないんですけど、、、なんて読みますかっ、、
ありがとうございます。ちょっと重めの話なので、慎重に書いていこうかと思います。
ああ~~~もう待って待って、この世界観やばすぎる!!😭💕 最初はほのぼの童話の世界かと思いきや、いきなり血の海に人骨、そしてあのグロテスクな怪物…ギャップに心臓持ってかれたよ!!でもそこで主人公が「子供たちが屠殺ごっこをした話」って見抜くシーン、めっちゃ鳥肌立った…!物語オタクの知識がまさかの伏線になるなんてね⋆♡ それにこの世界のアリス、かわいい見た目なのに歴戦の戦士みたいな雰囲気で、めっちゃ推せる!「あなたの情報が必要なの!」って必死なとことか、もう続きが気になって仕方ないよ〜〜😭✨ 次回、どうなるんだろう…主人公の知識でこのダークな世界を生き抜く感じになるのかな?えれめんたるさん、続き楽しみにしてるよ!!🌸